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『すとぱん!(後編)』(けいおん百合妄想)

遅くなりました、『すとぱん!』後編です。

あらすじはですねー。

 敵機に後ろを取られ、窮地に陥る
 それを救うため、あえては敵に対して捨て身の高機動格闘戦を挑む…。

という感じで。

前編未読の方は、お手数ですがこちらからどうぞ。



  『すとぱん!(後編)』



『エニワ01、先輩、どうしたんですかっ』
『エニワ02、チトセ。エニワ01は交戦中の模様』

 先輩の代わりに返ってきた返事は空中管制機からの冷たい声。まさか先輩の身に何かあったのか。だけどその一瞬の衝撃は、すぐさま論理的な思考で上書きされる。戦闘機乗りが持ち合わせる熱く冷徹な思考で。

 ──そっか、さっきの撃墜不確実機がまだ生きていて、先輩を攻撃してるんだ。

 気づいた瞬間、私は全魔力を飛行脚に叩き込む。魔導エンジンが吠える。そのまま一気にパワーダイブ。続いてレーダーレンジをスーパーサーチモードに切り替え集中走査。さらにECCM(対電子妨害システム)も作動。自動的に対抗手段を探る。管制機からでも見えない敵を科学の力で探す。私にとって科学も魔法も大した違いはない。ただの便利な道具。役に立ってさえくれれば、原理や仕組みはどうでもいい。

 やがてHMD上の先輩のシンボル、そのすぐ脇にもうひとつのシンボルが出現する。所属不明。味方ではない。すなわち敵。憎むべき私たちの敵。邪魔すんな。先輩のデートの相手はこの私だ。

 猛烈な加速に全身が軋む。ほんの10秒ほどで視界に先輩を捉える。予想通り敵小型機に背後を取られ、懸命に振り切ろうと激しい機動を繰り返している。こちらに残されているのはGUNと短距離戦闘用のAAM-Ⅴだけど、この状況では同士討ちの可能性がある。とても危なくて使えない。扶桑刀に至っては論外だ。

「チトセ、エニワ02。目視で確認。エニワ01は不明機と交戦中」
『エニワ02、チトセ。1分ほどで支援が到着する。そのまま待機せよ』

 1分。空中戦の1分。そんなの……永遠に等しいじゃないっ。

 奥歯をギリッと噛みしめる。バカ言ってんじゃないわよ。そんなの待ってらんない。

、逃げろ。お前は高機動できないんだぞっ』

 苦しそうな澪先輩の声。だけど聞こえなかったことにする。ただちにドグファイトスイッチをオン。横転するようにダイブヨーイング。たちまち距離が詰まる。最大迎え角。ガンサイト・オープン。まだ有効射程外。それでもいい。これは威嚇だから。ここにも敵がいるぞと相手に教えるための。

 ろくに照準もせずGUNのトリガーを絞る。敵がブレイク。あっという間に残弾が減る。命中しない。当たらなくてもかわまない。1分、いや30秒でもかせげれば。まもなく援軍がやってくるのだから。

 そうすれば、少なくとも澪先輩は助かる。正直、扶桑帝国とか、人類の運命とかどうでもいい。私には澪先輩が全て。先輩さえ無事でいてくれれば、他は何もいらない。

 だがひょっとしてどこかに被弾したのだろうか。澪先輩の機動がいつもより鈍い。このままでは再攻撃を受けるかもしれない。幸い敵と澪先輩の距離がほんの少しだけ開いた。機首を翻し、今度は私の方へと向かってくる。むしろ望むところ。これなら私からも撃てる。CCS(セントラルコンピュータシステム)に攻撃支援を指示。防御魔方陣を展開しながらHMDに表示される最適攻撃位置へ戦闘機動。内臓が潰れそうな感覚。およそ8G、いや9Gか。

 初めての格闘戦。たちまち敵機が迫る。ぞっとする寒気。むき出しの敵意。やみくもなビーム攻撃。防御魔方陣で懸命に阻止。距離は目測でおよそ900フィート。ミサイルは近すぎる。GUNを選択。しかしHMDにFCS(射撃管制システム)から赤いエラー表示。相対速度が速すぎ、照準が間に合わないらしい。

 代わりにミサイル発射用のレリーズを絞る。だが発射されない。FCSが目標が近すぎ危険と判断しているのだ。攻撃の意思を伝えるため、構わずレリーズを絞り続ける。このためCCSが緊急事態と判断。FCSに介入する。AAM-Ⅴ、発射。

 飛行コース上で立て続けに閃光。とっさに左にスライド。危険半径から離脱する。間一髪で回避成功。激しい機動で目の前が暗くなる。気力でブラックアウトをはねのける。この状況で気絶してる余裕はない。回復した視界の端で敵機が爆発の中心に突入し、火を噴きながら空中分解するのが見えた。

 発射直後は母機を巻き込む危険があるためミサイルには安全装置が働いている。しかしおそらくそれとは独立に近接信管が作動。超至近距離で立て続けにAAM-Ⅴが炸裂したのだった。

「チトセ、エニワ02。脅威排除。これよりエニワ01の支援に向かう」
『チトセ了解。まもなくエリモ01、02が到着する。指示を受けろ』
「エニワ02了解」

 と、右足にガクンと衝撃を感じ、急に速度が落ちる。振り返って状況を確認するが、ざっと見た感じでは被弾した様子はない。しかしジェット噴射が停止してる。おそらくさっきの機動で右の魔導エンジンがストールしたのだ。半ば推力を失った私は石のように落下する。

、大丈夫か、っ!』
「大丈夫です、右のエンジンがストールしただけです」

 悲鳴のような澪先輩の声につとめて冷静に応答する。身体をくの字に曲げ、ストライカーユニットの根元に手をかけてメンテナンス用ハッチをパージ。手探りでJMS(ジェットマジックスターター)を見つけて起動スイッチをひねる。1回。2回。3回目でようやく魔導エンジンが息を吹き返す。

 慎重にエンジンの回転数を上げながら澪先輩を探す。まもなくこちらに向かってさまようように飛んでくる先輩の姿が目に入った。

「先輩、大丈夫ですか!?」

 急いで近寄って状況を観察する。控え目に言っても酷いモノだった。左の飛行脚は被弾で半壊し、右側も傷だらけ。飛行服もあちこちズタズタで、どうしてこれで飛んでいられるのか不思議なくらい。だが澪先輩の目は、まだ死んでいなかった。

「中野少尉、歯を食いしばれっ」

 ──パンッ

 乾いた音が響き、一瞬遅れて右頬に鋭い痛みが走った。それでようやく平手打ちを喰らったという事実を認識する。たまに律先輩が悪ふざけがすぎてげんこつで殴られるのを見ることはある。だけどこの私が澪先輩から、それも平手打ちを喰らったのは初めてのことだった。

「私は逃げろ、と命令したはずだ。なぜそれを無視した」
「……すいません」
「私が聞きたいのは詫びの言葉じゃない。理由を聞いているんだ。答えろ、中野少尉」

 呆然と先輩を見つめ直す。まるで鬼のような形相で私を睨みつけていた。なにより私のことを名前でなく名字で、しかも階級付きで呼ぶことが、メチャクチャ怒ってる証拠だった。

「でもあのままじゃ、秋山中尉が……」
「お前を守るのが私の任務だ。その逆じゃない。まさか忘れたわけじゃないだろうな」
「それは……そうです」

 正論を吐かれては反論のしようがない。私にはうなだれることしかできなかった。

「たまたま敵を落とせたからよかったようなものの、もし戦闘中にストールしたらひとたまりもないんだぞ」

 やや声のトーンを落とし、諭すような口調で澪先輩が続ける。

「それに、もしもお前に万一のことがあったら……私はどうすれば、いいんだ……」
「……先輩?」

 顔を上げた私の目に映ったもの。それは身体中をぶるぶると震わせ、両目に涙を浮かべて私のコトを見つめる澪先輩の姿だった。

「お願いだから、二度と無茶しないでくれ。頼むよ。お前だけは失いたくないんだ」
「私だってそうですっ。先輩のいない世界で、私だけがおめおめと生きていたくなんかありませんっ!」
……」

 思いがけない私の反撃に澪先輩が呆然となっていた。一瞬遅れで私も自分の発言の意味に気づいて愕然とする。勢い余ってとんでもないことを口走ってしまった。これじゃまるで、先輩に向かって告白してるみたいじゃない。

 いや待てよ。告、白……?

 ああ、そうか。私ってば、先輩のことが……。

『おーい、エニワ01、02。生きてっかー』
『平沢唯中尉と他一名、澪ちゃんとあずにゃん救援のため、ただ今かけつけましたよ~』
『他一名ってなんだよ。ちゃんと田井中律って名前があんだからな』
『あーそういえばそうでした~♪』

 ああ、もう。この能天気な会話を交わしながらやってくる人たちは。

『遅いぞ、律、唯。敵はもうが全部片づけちゃったから』
「なんだとー、敵の本体だけじゃ足りなくて、私たちの獲物まで横取りしたってのかっ!」

 そう言いながら律先輩は、私に向かってヘッドロックをかけてきた。器用にも空中でホバリングしながら。

「ちょ、やめてくださいよっ!」
「すごーい、あずにゃんサイコー!!」

 その上、今度は唯先輩まで抱き着いてくる。正直メチャクチャ重たいんですけど。

「ふたりとも、いい加減にしてください。またエンジンがストールしたらどうするんですかっ」

 っていうか、せっかくいい感じの会話の流れだったのに、全部ぶち壊し。あーあ。

「そっか、今日のは、敵の本体と小型機を撃墜してるんだよな」

 腹立ちまぎれに懸命に二人を引きはがそうとしていたら、いつの間にか涙を拭いていた澪先輩がそんなことを言い出した。

「そういえば、今まで何機落としてたんだっけ、梓は」
「ええと、今回の作戦が4回目ですから……」

 あれ、そうか。ひょっとしたら……。今までAAM-Ⅳで落とした敵が3機。今日さらに1機。それにさっきの1機も加えると合わせて……そう、5機だ。

 そして私たちの世界では、5機以上を撃墜したパイロットには特別な称号が与えられる決まりになっている。

「そういうこと」

 ようやく事の重大さを認識し始める。そうか、そうなんだ。身体中から喜びが湧き上がってくる。

「お前は我が第615統合戦闘航空団で11人目のエースというわけだ。おめでとう、撃墜王」

 そんな私に向かって、澪先輩はこれ以上ないという笑顔で祝福してくれたのだった。

「あ、ありがとうございます」
「でも、頼むから無茶はしないでくれよ。な?」
「はい」

 小さく頷きながら返事をする。頬が熱いのは、さっき引っぱたかれたせいばかりじゃない。恥ずかしくて、照れくさくて、嬉しいから。

 きっと今の私なら、成層圏どころか月までだって飛んで行けるに違いない。

「さーて、敵のデカブツもやっつけたことだし、そろそろ帰ろうぜ」
「そうそう、今日はハロウィンだし。きっと夕飯にはおっきなパンプキンケーキが」
「いやー、それ以前にハロウィンと言えば……?」
「「トリック・オア・トリート !!(お菓子をくれなきゃイタズラするぞー)」」

 何やら妙に盛り上がってしまった唯先輩と律先輩であった。もはや突っ込む気力も残っていない。私たち、ついさっきまで戦争してたはずなのになあ。

「さあ、そろそろ桜ヶ丘基地に戻ろうか。きっとみんな心配してるぞっ」

 そんな弛み切った空気を吹き飛ばすように、澪先輩がきっぱりと叫んだ。

「そうですね」
「賛成!」
「お腹空いた~」

 それぞれがそれぞれの感想を口にしながら、一路基地に向けて進路を取る。

 そうだ、帰ろう。ちょっとだけバカ騒ぎして、そしてシャワーを浴びて、ベッドに潜り込んで、それからさっき先輩に抱いてしまった気持ちのコト、ゆっくり考えよう。それも悪くない。

 なにせ考える時間はたっぷりあるんだ。

 そう、生きてさえいれば──。

    ◇  ◆  ◇

 小さいころ、あの空の向こうにあるって信じてた。
 友だち、夢、名誉、恋、運命。
 その、全てが。

 ようやく私は、その一歩を踏み出せたような気がする。

 大空を自由に飛べるようになって。

 友だちができて。
 先輩たちにも恵まれて。
 エースの称号も手に入れて。

 そして、私自身の運命に出会った。

 澪先輩。
 死んじゃだめですよ。
 絶対に生きて帰ってきてくださいね。

 だって先輩のハートを撃墜するのは、この私なんですから。

 絶対ですよ、先輩。

 ね、先輩──。

 (『すとぱん! ~妖精占い~』へつづく)


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おもに百合(GL・ガールズラブ)な小説と周辺情報を公開しています。最近はコミPo!でオリジナル百合4コマも。現在は「けいおん!」、「魔法少女まどか☆マギカ」とオリジナル。カプ傾向は澪梓、憂梓、恵和あたり。あと、ほむほむは百合。
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注:管理人の名称は「あっとあとみっく」が正式ですが、ごくまれに「藍」と名乗ることもあります。

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