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『ペンタグラムな彼女・後編』(オリジナル百合SS)

オリジナルな百合SSを公開します。

先日公開した『ペンタグラムな彼女・前編』の続きになります。
まあ、通学電車で見かけるあの子が気になる……みたいな話です。
(実もフタもない)

快速電車の車窓から流れゆく風景を物憂げに眺める”ペンタグラム”。
はたして彼女は何を思うのか。
芽衣はそれが知りたかった。

という感じで。

主人公がなぜ彼女を”ペンタグラム”と呼ぶのか。
そのあたりがわりとポイントだったりします。

前編では彼女がバッグにペンタグラムをつけているから、
という理由が挙げられていましたが、
他にもいろいろあります。

そしてもしも、ふたりのルールを破ったとき、おそろしい罰が下される。

……詳しくは本編で(笑)
なおホラー要素はありませんのでご安心ください。



今回これを書き終えて、もう少しだけ、このふたりの先を見てみたくなりました。
もしかすると近いうちに再会できそうな予感(笑)

なにより彼女の友人たちや、今回声だけで登場の女性車掌さんが
「うちらももっと活躍させろー!」ってうるさくって(笑)。

ただ、私の力量その他が追いつくかどうか……(滝汗)



それでは

 『ペンタグラムな彼女・後編』(オリジナル百合SS)

それでは、お楽しみくださいませっ!


なお「前編読んでないんだけど、興味あるよ?」という方のためにリンクを用意しました。
お手数ですがこちらをクリックしてくださいませ↓
ペンタグラムな彼女・前編

あ、もちろんフィクションです。力の限りフィクションです。
もし貴女がこれと似たような話を見聞きしたことがあったとしても、
それとこれはまったくの無関係です。

そこのところ、よろしくお願いいたします。







 『ペンタグラムな彼女・後半』



 ──壁とか、記録とか、ルールとか。
 ──そんな何の関係もなさそうな事柄にある、たったひとつの共通項。

 ──答えを聞かされるまで、私にもわからなかった。

    ◇  ◆  ◇

 なんでこっちの快速は時間通りにやってくるんだろう。向こうの電車が遅れてるんだから、こっちだって少しくらい遅れてもいいのに。それでいて私たちが乗り込んでも、なかなかドアが閉まろうとしない。きっとさっきの階段のあたりで人が多すぎて乗り切れないのかも。

 『入口に立ち止まらず、中ほどまでお進みください』という車掌らしいアナウンスが頭上から降りそそいでくる。機械の声じゃない、生の声。生きている人間の声だ。しかも女性の。少しめずらしい。車内の何人かがうつむいていた頭を上げる。彼女も、そしてほんの五センチほど後ろに立つ私も。

 微妙に緊張感のただよう電車の中では誰もが無表情だ。お互いどんな理由でここにいるのか。どこから来てどこに行こうとしているのかもわからない。もっとも”ペンタグラム”のことなら知っている。ほんの少しだけ。

 たとえば制服だ。それは私が通う都立高の近くにある、かなり有名なミッション系の女子高のもの。授業料も偏差値もかなり高いので、進学するときの選択肢には最初から存在しなかった高校だった。

 そこはなんでもイマドキありえないくらい指導が厳しいらしい。ここの生徒はそろいもそろって校章入りの白のハイソックスだし、スカートだってかなり長めな子が多い。そういえば毎年何人も退学者がいるという噂も聞かされた。でも校則で親族以外の男性と会話することさえ禁止されているという話は、さすがに都市伝説だよ……ね?

 毎朝、彼女はそこに通うために、必ずこの前から五両目の車両に乗ってくる。そしてドアのすぐ前に立って軽く右手で寄りかかり、流れていく車窓の風景を物憂げにながめている。

 それは息をすることも忘れるくらいの、凛とした美しさ。

 おそらくは同い年か、せいぜいひとつ上くらいの歳のはずなのに、どうしてこうも私と違うんだろうか。もう、ため息も尽き果ててしまった。

 距離はほんの五センチ。
 手を伸ばせば届く五センチ。
 でもそれは月よりも遠い五センチ。

 こうして去年の春から一年間。彼女のすぐ後ろ、左四十五度の角度で、この距離を保ちながら”ペンタグラム”の背中を見つめ続けてきた。

 それにしても毎朝、自分の背後に立っている私のことって、彼女からどんな風に思われているのだろうか。どんな風に映っているのだろうか。いや、そもそも気づいてすらいないのかも知れない。私の存在なんて。

 たとえこうして同じ電車に乗って、同じ光景を見ていても、同じことを考えているとは限らない。

 それに視点はほんの五センチくらい”ペンタグラム”の方が高い。高校に通うようになってから、五センチだけ私の背は伸びた。けど彼女もやはり同じくらい成長したみたい。だから一年たっても、彼女の方が五センチだけ背が高い。

 そして次の駅に停車するまでの五分ほど。平日の朝の五分間。それがふたりに許された時間だ。

 一日五分。
 週に五日間。
 五センチの距離。
 ついでに、視点の差も五センチ。

 それがふたりだけのルール。

 数字の五。それは私と”ペンタグラム”を結び付けている魔法の数字だ。それがふたりだけのルール。もしそれを破れば、恐ろしい罰がくだされる。

 そう、罰だ。



 あれは去年の秋ごろだった。たった一度だけ好奇心に負け、一本早い電車に乗ってきて、彼女を駅で待ってみたことがある。

 ところがどういうわけか、その日を境に彼女は姿を消した。その翌日も、さらにその翌日も、そしてさらにその翌日も、彼女はやって来なかった。

 死にそうだった。

 五日目になって久しぶりに行列の中に彼女の姿を見つけたとき、ほんとにうれしかった。うれしくて、ほっとして、涙が出そうになった。

 ……ごめん、それウソ。わりと涙出た。

 ……ごめん、それウソ。学校に着いてからめちゃめちゃマジ泣きした。
 友だちにドン引きされるくらい。

 ──まさかチカンとか?
 ──ほんと、芽衣はカワイイんだから気をつけなくちゃ。

 なんて、まるっきり見当違いの忠告をされた。その日はずっーと、ウサギみたいな目だって言われていた。

 でも私だけは知っている。あれは罰。きっとペンタグラムのルールを破ってしまった罰なのだ。

 もしまた、あんな思いを味わうことになったとしたら。
 間違いなく私は、耐えられない。

 だから二度と試そうとは思わなかった。



 電車が揺れるたびに、彼女のバッグのペンタグラムがきらりと光る。まるで私の心を見透かすように。

 このペンタグラムは、欧米では悪魔の紋章と言われているらしい。だからもしかすると彼女の正体も、人の心の隙間に忍びこむ悪魔なのかも知れない。それは少し怖くて、わりと楽しくて、とても甘い空想だ。

 一日五分。
 週に五日間。
 五センチの距離。
 ついでに、視点の差も五センチ。

 それがふたりだけのルール。

 機械の声が次の駅に近づいたことを日本語と英語で伝えている。もうすぐ、このお楽しみの時間もおしまいだ。ところが。

『本日もご乗車いただきまして、まことにありがとうございました』
 無感情な合成音声とは明らかに違う。先ほどの車掌さんのものらしい。さらに声が続く。
『新年度を迎えていろいろ大変でしょうが、今日も一日がんばってくださいねっ!』

 車内の何人かがうつむいていた頭を上げる。彼女も、そしてほんの五センチほど後ろに立つ私も。

 ほんの少しだけ、ギスギスした車内の空気がなごんだ気がした。

    ◇  ◆  ◇

 ホームから駅舎へと続く階段を”ペンタグラム”がゆっくりと上っていく。もちろん私も後を追う。目の前で彼女の純白のソックスと黒のローファーが、前後に規則正しく往復する。

 階段を上りきって再び歩き始めたところで、彼女の後ろ姿にかすかな違和感を覚えた。

 ──あれ、なんか。
 ──彼女の両肩がいつもより下がっているような。

 まもなく改札。ICカードを取り出して自動改札機にタッチ。すぐにピッと短い返事が返ってくる。何事もなく通過。そして私たちは左右に別れる。私は公立、彼女は私立だから。住んでいる世界が違うから。

 水と油。太陽と月。織姫と彦星。本来なら決して交わることのないモノたち。この駅で毎朝繰り返される小さな奇跡。ここはそれが出会うことを許される、たった一つの聖なる空間なのだ。

 改札を出たところでは、先に降りた友人たちご一行が、私のことをニヤニヤしながら待ち構えている。いつもこうして冷やかされながら学校へと……。

 くるり。

 そこで私はふり返ってしまった。

 彼女が。
 肩を落とした”ペンタグラム”のことが気になって。

 ──ドクン。

 心臓が音を立ててはね上がる。
 思い切り目が合ってしまった。彼女と。

 背後に同じ制服を着込んだ少女たちを従えた”ペンタグラム”が、自分と同じようにこちらを振り返っている。

 ──まさか、私のことを?

 一瞬、そんな甘い考えが頭をよぎってしまう。

 ──アホか。
 ──自意識過剰にもほどがあるだろ。

 脳内でそんなやりとりをしている間に、ゆっくりと彼女がこちらに歩み寄ってくる。ずいぶんと頬が紅い。冷たく白々しい蛍光灯の光に照らされているはずなのに。

 ──ダメよ。
 ──来ちゃダメ。

 自分の願いが声にならない。背中に冷たいものが走る。もしもルールを破ってしまったら、今度はどんな罰が下されるか知れたモンじゃない。でも逃げられない。足が、いや身体が動かない。まるでコンクリートにでもなったみたいだ。

 やがて腕を伸ばせば届くくらいの所で、彼女が立ち止まる。ほんの少しだけ高い位置から見つめられる。

「……あの、」

 目が泳ぐ。迷いの色が浮かぶ。

 だがそれも一瞬のことだった。意を決したように再び私を見つめなおす。いつもの凛とした雰囲気がよみがえる。

「ありがとう」

 あまりにも思いがけない言葉だった。礼を尽くされる覚えなんてこれっぽっちもない。

「ずっと言わなくちゃいけないって思っていたんです」
「どういうこと? 意味がよくわからないんだけど」
 声がかすれる。語尾がかすかに震えたことに彼女は気づいただろうか。それを確かめる間もなく、”ペンタグラム”は私に向かって深々と頭を下げた。
「いつも毎朝、私の背中を護ってくださって、ありがとうございます」
「え……」

 身体の中から何かがこみ上げてくる。熱いものが胸いっぱいにあふれていく。

 そんな……まさか。
 そんな風に見られていたなんて。
 そんな風に想われていたなんて──!!

 再び彼女が頭を上げ、
「そして……これからも、護ってくれませんか?」
 わずかに見上げるような姿勢で返事を待っている。

 不安げな色。
 見棄てられることを怖れるような表情。
 おそらく、さっきまでの自分と同じ顔。

 もしここで罰を怖れて逃げてしまったら。
 私は自分自身を許せない。

 やってやる。たとえどんな罰を受けてもかまうもんか。

 なけなしの勇気を振りしぼり、カラカラに乾き切った口を開く。
「もちろん。貴女さえよければ、これからもずっと」
 その瞬間、まるで日の出のように”ペンタグラム”の顔がぱあっと輝いた。
「はいっ!」と大きくうなずく。

 それは笑顔。彼女の心からの笑顔。

 生まれて初めて私は思い知った。こんなにも幸せそうに人間は笑うことができるんだって。

 彼女のことを見守っていたセーラー服の少女たちがいっせいに歓声を上げる。私の後ろからも楽しげな笑い声が聞こえてくる。そしてたぶん、私も──。

    ◇  ◆  ◇

 ──壁とか、記録とか、ルールとか。

 ──それらはいずれ必ず、誰かの手によって破られる。

                                (おしまい)


追記:ペンタグラムな彼女・その2始めました。
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おもに百合(GL・ガールズラブ)な小説と周辺情報を公開しています。最近はコミPo!でオリジナル百合4コマも。現在は「けいおん!」、「魔法少女まどか☆マギカ」とオリジナル。カプ傾向は澪梓、憂梓、恵和あたり。あと、ほむほむは百合。
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注:管理人の名称は「あっとあとみっく」が正式ですが、ごくまれに「藍」と名乗ることもあります。

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