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『あなたを忘れないと決めたから』(オリジナル百合SS)

久しぶりにオリジナルの百合SSを公開します。
『あなたを忘れないと決めたから』というお題です。
これだけで独立した短編です。今までここで公開してたどのSSとも関連ありません。
4KBほどですので、さらっと読めると思います。

あらすじとしてはですねー

 春休みの日曜、かなめは友人の美保に強引に連れ出される。
 その先で彼女が見た思いもかけぬ光景とは…

という感じで。

それと今回は挿絵つきでーす(ぇ

それでは、お楽しみくださいませっ!

20110327-01.png



 『あなたを忘れないと決めたから』



 悼み。

    ◇  ◆  ◇

 こんなすぐ近くに、こんな不可思議な光景が広がってるなんて、まったく思いもよらなかった。

 せっかくの春休みの日曜の朝だもん。ちょっとくらい寝坊したっていいじゃないか。そう思って自分のベッドでぬくぬくとしてたのに。高校で仲良くなった友人からの携帯コールで、つかの間の平和はあっさりとぶち壊されてしまった。

「かなめちゃん、やっぱ……まだ怒ってる?」
「ついさっきまでは爆発寸前だったけどね」

 おそるおそるという感じで私の顔色をうかがっている友人──私は美保と呼んでる──に、わざとそっけなく返事をする。ショートカットと笑顔がよく似合うカワイイ娘。ちょっと空気が読めないところがあるけど、ノラ猫みたいなもんだと思えば別に腹も立たない。それに私だってよく思いつきで行動しちゃうこともあるから、その点だけはあまり偉そうなことは言えないし。

 それはともかく、悪いけど今はそれどころじゃないんだ。

「なんかこの風景を見てたら、どうでもよくなっちゃったよ」

 すっかり心奪われてしまった私は、上下左右をきょろきょろと見回しながら付け足した。だってここ、せいぜい私の家から歩いて10分くらいだよね。そんな身近な所にこれほど見事な竹林があるなんて、まるで予想もしてなかったから。

 自分の家と駅のある商店街まで間なら、おススメのお店からノラ猫どものナワバリに至るまで、もれなく把握してる自信がある。だけど駅と反対側の方向に足を向けたことは、あまりなかったかもしれない。これはもう一生の不覚と言うべきだろう。

 ひんやりとした空気が優しく私の身体を包み込み。かすかな春風に揺すられるざわめきがひどく心地いい。ほんのりと辺りにただよう土の香りに懐かしい記憶を呼び覚まされそうな気がする。

20110327-02.png

 それにしても美保は、人がひとりがようやく通れる程度しかない細道を、少しも歩みを緩めることなく竹林の奥へ奥へと進んでいく。いったい彼女はどこに私を連れて行こうというのだろう。その疑問を口にしかけた時だった。

「あ、咲いてるっ!」

 急に走り出す美保の後をあわてて追う。その先には少しだけ異質な空間が広がっていて、周りの竹とは明らかに違う、背の低い草花が生い茂っていた。もっとも大半はまだつぼみをつけたままで、実際に花を咲かせてるのは数えるほどだったけど。

「これを見てもらいたかったんだ。キレイでしょ?」
「へえ……」

 喜色満面の美保をよそに、思わず感嘆のため息が私の口から洩れる。それはもう見事な紫色の花だった。形から見て、おそらくランの一種だろうか。幾重にも折り重なった花びらに加え、濡れた朝つゆが薄明りに照らされキラキラと輝いている。しゃがみこんで顔を寄せると、ほのかに甘い香りが漂ってきた。まるで別の世界に紛れ込んだのかと錯覚しそう。昔のアニメか何かみたく。

 陽ざしもろくに届いていない、こんな薄暗い竹林のさらに奥深くに、こんな花がひっそりと咲き誇っているなんて。いったい誰が想像できるだろう。ふと手を伸ばそうとして、ようやく思いとどまった。もしかすると不用意に触ることすら罪ではないか。そんなためらいを感じてしまったから。

「これ、なんていう花?」
「シラン」
「なんだ、知らないのかよ」
「そうじゃなくて『シラン』っていう名前なの。紫の蘭って書いてシランっ!」
「そう怒るなよ。軽いジョークだって」

 気色ばむ美保をなだめながらも、花から目を離すことができない。できれば一生眺めて暮らしたいと、半ば本気でそんなことまで考えて始めていた。

 そんな私の姿をしばらく脇で眺めていた美保が、ぽつりとつぶやいた。

「これはね、かなめちゃんにだけは、どうしても見てもらいたかったの」

 そのセリフに明かな陰りが含まれているのに気づき、私はようやく美保の顔に視線を移す。そこに浮かんでいたものは、いつもの明るい彼女からは想像もできないほどの、深い哀しみの色だった。

「紫蘭の花言葉はね『あなたを忘れない』なんだって」
「誰か忘れられない人が、いるの?」

 私の問いかけに、美保は迷うように目を閉じ、唇だけを動かして答えた。

「ちょっと今は……まだ無理かな。いつか話すよ、必ず」
「おっけ。その気になるまで待つよ。いつまでも」

20110327-03.png

 そっと美保の左手に触れると、彼女は痛くなるほど私の手を握り返してきた。

 紫蘭。おそらく彼女にとっての大切な誰か。忘れられない人のためのトクベツな花。

 だけど私だってそう。今日からこの花はトクベツだ。

 美保。私はあなたを忘れない。

 震える唇。揺れ動く瞳。涙の匂い。握られている手の痛み。たとえ話してもらえなくても、そのくらいわかる。途方もない悼みを抱えてるってことくらい、バカな私にだって。

 だから、今日ここで見たこと、聞いたこと、感じたこと、その全てをひっくるめて。



 あなたを忘れない。
 絶対に忘れない。



 たった今、そう決めた。

 (『あなたに永遠の誓約を』に続く)

20110327-04.png

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おもに百合(GL・ガールズラブ)な小説と周辺情報を公開しています。最近はコミPo!でオリジナル百合4コマも。現在は「けいおん!」、「魔法少女まどか☆マギカ」とオリジナル。カプ傾向は澪梓、憂梓、恵和あたり。あと、ほむほむは百合。
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注:管理人の名称は「あっとあとみっく」が正式ですが、ごくまれに「藍」と名乗ることもあります。

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