スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

『最後の遡上』(魔法少女まどか☆マギカSS)

魔法少女まどか☆マギカのSSを公開します。
『最後の遡上(そじょう)』というお題です。
ほむら視点でほむまどな内容です。

今回のSSの内容は、一言でいえばまどマギのラスト…です、多分。

現時点でまどマギ本放送は10話まで公開されてますが、11話以降の目処は立っていない状態です。4月の終わりまでには…という噂ですが、公式にはまだ未発表。ひょっとしたらBD/DVDまでお預けになるかもしれません。

ところで私は、他人さまの作品の先や結末を予想するというのが、実はあまり好きじゃありません。これからどうなるんだろう、というワクワクに水を差しそうな先入観を持ち込みたくないから、というのが主な理由です。ただ今回だけは、さすがにちょっと待ちきれなくなってしまったらしく、先日とうとう最終回を視聴してる夢まで見てしまいました……orz

今回のSSは、そのときみた夢の内容をもとにしてます。決して最終回はこうなる、とかいう類の予想でありません。あくまで、こんな感じだったらいいかなあ……という程度の妄想なので、ご注意ください。

それでは、お楽しみくださいませっ!





 『最後の遡上』



 私の願いと、彼女の願いは、似て非なるものだった。

    ◇  ◆  ◇

 こんな……まさかこんな、簡単な方法があったなんて。

 これまで幾多の魔法少女たちの挑戦を退け、誰一人勝てる者などいないと信じられていた。仮にも魔法少女の使命を帯びたものであれば、よほどの新米でもない限り知らぬ者のないであろう、最大最強にして最悪の魔女。それがあの『ワルプルギスの夜』。そのはずだった。

「ほむらちゃん、私たち、やったよ。勝ったんだよっ!」

 感極まったまどかが、私の首に両手でしがみついてくる。だが私はそれに対して答える術を持たなかった。あれほどまでに、文字通り自らの魂まで投げ打って願ったことなのに。未だに私はその事実を受け入れることができず、ただ呆然と立ちすくんでいる。

 曇り空から音も立てずに弱い雨が降りはじめた。風もほとんどない。深夜の街並みはまるで墓場のような静寂に包まれていた。

 念のためにもう一度、自身のソウルジェムを取り出し穴が開くほど見つめ直す。あれほどまでに惜しげもなく魔力を使い続けたというのに、それは未だに穢れどころか、シミひとつなく紅い光を放ち続けていた。

 希望をもたらす魔法少女は、やがて穢れを溜めこみ魔女と化す。誰にもそれは止められない。いやむしろ、魔女化する時に生成される膨大なエネルギーを収集することこそが、キュゥべえの目的だった。宇宙を滅亡から救うために必要なのだと。誰もがそう思い込んでいた。もちろん私も含めて。

 だが、鹿目まどかの願った『それ』は、それらの前提条件を根底からひっくり返してしまった。その結果、『それ』と引き換えにまどかは魔法少女へと変身し、圧倒的な力であの『ワルプルギスの夜』さえ退けてしまった。

 これで全ては終わった。

 まどか。あなたと出会って、あこがれて、友だちになって、あなたを守れる私になりたいと願って魔法少女になって……気がついたら過去へとさかのぼる力を手に入れてしまっていた。

 何度も何度も失敗を繰り返し、ようやくたどり着くことができた正解。どちらかといえば私というより、まどかの功績と言うべきかも知れないが、そんなささいなことはどうでもいい。彼女が魔女化する可能性はもうゼロなのだから。それさえ叶えられれば、もう十分だ。そう思い込もうとしていた。まどかを守り抜いた、その一点だけにしがみ付こうとしていた。

 だけどまどかは……この心優しき少女は、そうじゃなかったらしい。

「ねえ、ほむらちゃん。過去に戻れるって言ってたよね。歴史を変えられるって言ってたよね」
「確かに……そうは言ったけれど?」

 意図が読めなかった。なぜこのタイミングで、彼女はそんな話を持ち出すのだろう。

「こうして『ワルプルギスの夜』さえ倒すことができた。私たちも魔女化する可能性はない。今さら私が過去に戻る必然はどこにもないわ。全ては、終わったのよ」
「そうじゃない……そうじゃないんだよ」

 思いもよらないほど強い口調で、まどかは言い放った。

「だってマミさんも、さやかちゃんも、杏子ちゃんも、みんな死んじゃったんだもん」

 嫌な予感がした。またしても彼女は、とんでもないことを言いだそうとしている。せめて彼女の表情を読み取りたくて、私は首に回された両手を振りほどこうとあがく。

「でもね、もし、ほむらちゃんが転校して来てくれた日まで戻れるんなら。三人も救えるの。わかるよね?」
「それは無理だわ。私の願いはあくまでまどかを守ることなのだから。あなたが健在な限り、私は過去に戻ることはできない」
「そっか、そうだ……よね。うん」
「いったい何を考えてるの、まどか」

 みるみるうちに黒い予想が私の胸中に膨れ上がっていく。

 ──お願いだから、それ以上言わないで。

 私は魔法少女になるにあたって、思いがけず時間を操作する能力を手にした。もっともそれは極めて限定的なもので、あまり便利なものじゃない。たとえばこうして誰かに接触している状態で時間を止めると、その人も同時に巻き込み、いっしょに時間の狭間で行動できるようになってしまう。それでは時間を止めた意味がない。

「ひとつだけ、お願いしていいかな。ほむらちゃんにしかできないコト」
「な……何?」
「もう一度過去に戻って、私に『それ』を教えてあげてくれないかな」

 瞬間、私の全身が凍り付いた。

「聞き分けのないこと言わないで。あなたを守り切った以上、私はもう過去に戻ることもできないし、そもそも戻る理由もない」
「それはつまり、こうして私が無事に生きてるから、だよね?」
「まさか……あなた……っ」

 その言葉を耳にして、予感は確信へと変わった。渾身の力を込め、懸命にまどかの両手を振りほどこうと無様に抵抗する。しかし魔法少女としての私は、時間を操作するというコト以外はまるで非力だ。たとえ美樹さやかが相手だったとしても、真正面から力比べをしたらとても敵わないだろう。ましてこうして今、半ば私を拘束してるのは、まごうかたなき地上最強の魔法少女である。どうにもならなかった。

「私はね、さやかちゃんとバカなこと言い合って、マミさんとお茶会して、杏子ちゃんと見たこともないお菓子を分けてもらって……。そんな未来で、ほむらちゃんといっしょに生きたい」
「でも、それはもう終わったことだから。取り返しのつかないことだからっ」
「普通ならそうだよね。でも、ほむらちゃんなら過去に戻って、もう一度やり直すことができるはず。もし私を守れなければ、ね?」
「まどか……止めて。バカなこと考えるのは止めてっ。お願い、まどかっ!!」

 声を振り絞る。理屈なんかじゃない。それは私の、魂からの叫びだった。

「ごめんね、いつもいつも守ってくれて。それなのに私また、ほむらちゃんに辛いことお願いしようとしてる」

 首すじに暖かいしずくがポタポタと流れ落ちてくる。先ほどまで降り注いでいた、冷たく弱い雨とはあきらかに異なる液体だ。さらに小さな嗚咽が彼女の口から洩れてくる。

「でも私とほむらちゃんだけ生き残るのは、きっと……正しくない」

 私の全身から力が抜けていく。まどかさえ守れれば。ずっとそう言い聞かせてきたのに。それを当のまどか自身が否定しようとしているのだ。

 ──鹿目まどか
 ──あなたは自分の人生が尊いと思う?
 ──家族や友達を大切にしてる?

 あれは転校初日のこと、他でもない私自身が、まどかに対して放った問いかけだった。

 長い長い輪廻の中ですっかり忘れさっていた。私のたったひとりの友だち、鹿目まどかとは、こういう娘なのだということを。だったら私にできることはただひとつ。彼女の願いをかなえることじゃないか。

「わかった……約束する。必ずみんなを、あなたも、美樹さやかも、巴マミも、佐倉杏子も、必ず救ってみせる」
「ありがとう」

 ほんの少しだけまどかが身体を離したことで、ようやく私が垣間見ることのできた、彼女の最後の表情。そこに浮かんでいたのは満面の笑みだった。はるか奥底に眠っていた記憶がよみがえる。

 ──せっかく素敵な名前なんだから、
 ──ほむらちゃんもカッコよくなっちゃえばいいんだよ。

 そういえば私と最初に出会った時も、彼女はこんな笑顔を浮かべながら、そんなことを言っていた。

「それじゃ、またねっ」

 最後の言葉はいつも通り、また明日学校で会おうね、と言わんばかりの軽い口調で。





 そして彼女自らソウルジェムを打ち砕いた瞬間に響き渡ったのは、とても短く可憐で優しげで、だからこそどうしようもなく……残酷な音だった。

    ◇  ◆  ◇

 私はまどかを従え、保健室へ向かう渡り廊下を、ふたりきりで歩いている。これももう、何度繰り返した光景だろう。頃合いを見計らって、辺りに人気のないことを確認してから、先ほどからオロオロしっぱなしの背後の少女へ振り返る。

鹿目まどか。あなたは自分の人生が尊いと思う? 家族や友達を大切にしてる?」
「え、えっと……私は、大切だよ」

 それまで自信なさげだった表情が、しだいに確信に満ちた微笑みへと変わっていく。

「家族も、友だちのみんなも大好きで、とても大事な人たちだよ」
「本当に?」

 ──それでいいのね。

 念を押す。彼女に。私自身に。

「本当だよ。ウソなわけないよっ」
「そう」

 その目には一点の曇りもない。それをみて今度こそ、これで終わりにできると、ようやく信じることができた。心からの安堵を胸の奥深くにそっとしまい込み、その場で私は魔法少女へと変身する。

 突然の事態に腰を抜かし、その場にへたり込んでいるまどかに近寄ると、私は懸命に抑えた口調で彼女に言葉をかけた。

「もしあなたのその気持ちが本物だと言うのなら──」

 学校に来る前に半殺しにしてから捕獲し、ボロ雑巾のようになったキュゥべえを、無造作にまどかの目の前に放り出してみせる。少なくとも口がきけない程度に痛めつけておかないと、今度は何を彼女に吹き込むか知れたもんじゃない。

 それを見たまどかが「ひっ」と小さな悲鳴を上げる。無理もない。目の前の彼女は、まだ何ひとつ知らないのだから。おそらくこの子の目には、私のことが化物か怪物のように写っているはずだ。

 まったく、なんという皮肉だろう。まさか、よりにもよってまどかに向かってこの私自身が、あのおぞましい台詞を唱えることになるなんて。だがその複雑な思いを押し殺し、あえて私は口にする。それが彼女のためなのだからと信じて。



「今すぐこいつと契約して、あなたも魔法少女になってほしいの」



 かつて絶望の淵から私を救いだし、希望さえ与えてくれた、あなたのために。

 必ず私が創ってみせる。



 鹿目まどか
 私のたったひとりの友だち。

 あなたの望んだ、未来を──。

 (おしまい)

関連記事
スポンサーサイト

テーマ : 自作小説(二次創作)
ジャンル : 小説・文学

現在の位置
百合みっくす
 トップページ
  ├ 月別アーカイブ
  |  └ --年--月 --日 (--)
  ├ カテゴリー
  |  └ スポンサー広告
  └ スポンサーサイト
百合みっくす
 トップページ
  ├ 月別アーカイブ
  |  └ 2011年04月 04日 (月)
  ├ カテゴリー
  |  └ まどマギSS
  └ 『最後の遡上』(魔法少女まどか☆マギカSS)
by AlphaWolfy
新公式twitter
カテゴリ
タグcloud
プロフィール

あっとあとみっく

Author:あっとあとみっく
おもに百合(GL・ガールズラブ)な小説と周辺情報を公開しています。最近はコミPo!でオリジナル百合4コマも。現在は「けいおん!」、「魔法少女まどか☆マギカ」とオリジナル。カプ傾向は澪梓、憂梓、恵和あたり。あと、ほむほむは百合。
このブログはリンクフリーですが、相互リンクはお受けしておりません。ご了承くださいませ。
注:管理人の名称は「あっとあとみっく」が正式ですが、ごくまれに「藍」と名乗ることもあります。

最新記事
月別アーカイブ
Google フリー検索

Google

WWW検索 ブログ内検索

リンク
バナー
百合みっくす 明日は明日の風が吹く! ものとーんわーるど TRAFFIC JAM Girls Love Search 駄文同盟.com にほんブログ村 小説ブログ 百合小説へ つい・ゆり ~おかあさんにはナイショだよ~
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。