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『はるか彼方を目指して』(アイマス百合妄想SS)

THE IDOLM@STER(アイドルマスター)のSSを公開します。
『はるか彼方を目指して』というお題です。

千早視点ではるちさ(春香x千早)な内容です。
6KB程度の超短編ですので、さらっと読めると思います。

本当はこの連休に何か公開する予定はなかったのですが、
とある場所で「はるPみきのアイマス漫画」を見ちゃったら、
なんかこうムラムラしちゃいまして、半ば発作的に書いちゃいました。
というわけで、「秋月律子の挑戦」の方はもう少しお待ちいただければと。
申し訳ありません。

さて今回は超短編なので、あらすじってほどでもないのですが、

 アニメ第13話の1stライブの翌日。
 自室で目覚めた千早の胸中に宿る、奇妙なモヤモヤの正体とは……。

という感じで。ライブの内容自体には触れてませんので、
「私、第12話以降、まだ見てないのー♪」
という方にも安心な仕様となっておりますw

それと第11話で、千早の家に春香が一泊させてもらうエピソードも、
できれば思い出していただけますと、より楽しめるかと思われます。



それでは、お楽しみくださいませっ!



 『はるか彼方を目指して』



 ──あなたを忘れない
 ──でもきのうにはかえれない

 (『蒼い鳥 M@STER VERSION』より)

    ◇  ◆  ◇

 目が覚めるとわずかに喉が痛むことに気づいた。鉛のように重たい身体を引きずるようにベッドを抜け出し、台所でコップ一杯の水をくみ、一口含む。ヒンヤリとした感触が全身に伝わり、しだいに寝ぼけまなこが開いていく。

 まだ昨夜のファーストライブの大歓声が耳に残っていた。あんなにも大勢の人たちの前で歌うことができたなんて。ずっとそれを目標に頑張ってきたはずなのに、もしかすると夢の中の出来事だったのかも、と疑いたくなってしまう。

 大半は竜宮小町を目当てにやって来たのかも知れないけど、それでもあれだけの喝采を浴びることができたのだ。これまで散々こなしてきた単なる前座とは明らかに違う。自分もあのライブの一翼を担っていたのだという、確かな手ごたえがあった。

 なのに今一つ気分は晴れない。まただ。妙にモヤモヤする。なんだろう。何か大切なものを忘れているような。もう少しで思い出せそうなのにできないような。わずかに不安の交じる焦燥感を覚える。

 この数日間ずっと感じ続けていた。レッスン中はすっかり忘れているのに、どういうわけか家に戻ってくると、胸のあたりにモヤモヤしたものが頭をもたげてくる。取り立てて室内に変化があるわけでもないのに、何かがおかしい。何かが足りない。とても大切な何かが。

 そもそもこの部屋には何もないに等しい。目立つ家具といえばベッドとCDラジカセ、それにたまにコンビニ弁当を温める時に使う電子レンジくらいのものだ。他の私物の大半は段ボールに放り込んだまま放置してるし。あとはお気に入りのCDと……弟と私が写っている写真。それは遠い昔、まだ私の家族がバラバラになってしまう前の、幸せの記憶の最後の欠片だった。

 昨日までは、きっとライブのプレッシャーなのだろうと勝手に思い込んでいた。でも今日になってもやはり晴れずに引っかかったまま。となるといったい何が原因なのか。まるで心当たりがない。もしかすると病気か何かの前兆なのかも。

 いけない。悪い予感ばかりが独り歩きを始めそうだ。幸いなことに今日は丸一日完全オフだ。いっそどこか病院にでも行って、きちんと検査してもらおうか──。

 ──ぴろろろろーん。

 間抜けなメロディが携帯メールの着信を告げたのは、そんな取りとめのないことを考えていた時のことだった。コップを置き、携帯電話を開いて差出人を見る。相手は同じ事務所の天海春香だった。

 ──憧れだったからっ。

 脳裏に春香の笑顔がよみがえる。確か数日前のことだった。帰りの電車を逃した彼女を部屋に泊めた夜、ほんの軽い気持ちで「どうしてアイドルになろうと思ったの?」と聞いたのが発端だった。彼女が目をキラキラときらめかせながら動機を語る姿を眺めながら、ひどく羨ましいような、それでいて後ろめたい気分に陥ったことを覚えている。

 この娘は純粋にアイドルに恋い焦がれ、自分の目標と定めて全力で頑張っている。だからこそ、どんな辛い練習でも楽しめる。心の底から笑える。私とはまるで違う。

 そもそも最初から覚悟の度合いが段違いなのだ。アイドルの仕事を、本格派の歌手になるための単なる一ステップ程度にしか考えていない、この私とは。あの時感じた羨ましさと後ろめたさは、きっとそういうことなのだろう。

 同じ事務所に所属し、同じライブにまで参加しているというのに、私達はまるで違う生き物のように別々の生き方をしてる。部屋に泊めたのも単なる成り行きに過ぎない。今まで仕事以外で連絡を取り合ったこともなかった。

 なのに、このオフの日に何の用だろう、いったい。訝しみながら本文を読む。

 ──近所まで来てるんだけど、これから千早ちゃんの家に遊びに行ってもいい?

 意味を理解するのにしばらく時間がかかった。もしかすると、まだ寝ぼけてるのかも知れない。

 春香が来るって?
 しかも遊びに?
 ウソでしょ?

 昨日の今日だ。さすがの彼女もヘトヘトに疲れているとばかり思っていた。しかしあの元気娘のエネルギーはどうやら太陽並みに無尽蔵らしい。半ば感心、半ば呆れてしまう。少しだけ考えてみたが、特に断る理由も思いつかなかったので、簡潔に返事を返した。

 ──いいわよ

 さて、春香がやってくるとなると、あまりボンヤリしてるわけにもいかない。せめて顔を洗って歯を磨いて、最小限の身づくろいくらいは──。

 ──ぴんぽーん。

 ……は?

 鳴りひびいた玄関のチャイムの音に、頭を殴りつけられたような衝撃を覚えた。まさかそんなはずない。いくらなんでも早すぎる。返信のメールを送信して、ものの10秒も立ってないのに。

 そうよ。偶然よ。きっと訪問セールスか何か。そうに決まってる。あえてインターホンで応対せず、こっそりと玄関に忍び寄り、ドアスコープから外の様子をうかがい。

 思わず息を呑んだ。

 そこに映し出された人影。それは、まぎれもない天海春香の姿だったから。

「は……春香!?」
「あ、千早ちゃん。びっくりした? 家の前まで来たんだけど、やっぱいきなりはちょーっとマズイかなーって思って。それでメールしてみたんだー」
「ちょ、ちょっと待っててっ。悪いけどっ!」
「え……あ、うん。別にいいよっ。急に来た私も悪かったんだし」

 にへら、と春香が柔らかな笑顔を浮かべた瞬間だった。私の中で何かが弾ける。あっという間に溢れ出す。ウソのようにモヤモヤが消え去っていく。

 ついに耐えられなくなり、たまらずドアに背中を向ける。やっとわかった。なるほどそうか。そういうことか。一人ぼっちが寂しいってことだったのね。春香のおかげで思い出すまでそんなことさえ忘れてたわ。それがあのモヤモヤの正体だったのね。

 渇望してた。春香に会いたかった。我ながらバカバカしいにもほどがある。当の本人の顔を見てようやく気づくなんて。まったく、どうしようもないわね。

 背中越しに彼女の息遣いを感じながら、私はひとしきり心の中で自分自身に責め言葉をあびせた。さらに引き続いて彼女へ赦しを願う。

 でもごめんね。だめなの。こんな顔じゃとても会えない。また春香によけいな心配かけるから。一刻も早く止めなくちゃ。

 両の目から、ともどもなく溢れ続ける、この喜びの涙を──。

    ◇  ◆  ◇

 ──群れを離れた鳥のように
 ──明日の行き先など知らない
 ──だけど傷ついて
 ──血を流したって
 ──いつも心のまま
 ──ただ羽ばたくよ

(『蒼い鳥 M@STER VERSION』より)

 (おしまい)

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おもに百合(GL・ガールズラブ)な小説と周辺情報を公開しています。最近はコミPo!でオリジナル百合4コマも。現在は「けいおん!」、「魔法少女まどか☆マギカ」とオリジナル。カプ傾向は澪梓、憂梓、恵和あたり。あと、ほむほむは百合。
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注:管理人の名称は「あっとあとみっく」が正式ですが、ごくまれに「藍」と名乗ることもあります。

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