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『独立第13女子寮・その2(Part1)』(オリジナル百合SS)

オリジナルのSSを公開します。『独立第13女子寮』というお題です。
第1話からもう半年近く、ようやく第2話公開です。
とある企業の女子寮が舞台の百合ハーレムって感じで。

なお完全オリジナルなので、キャラ紹介など……。

佐島雪乃:IT事業部のテクニカルライター。本作の主人公。
九里原怜:IT事業部課長代理。雪乃の上司。
藤末鈴 :秘書室員。強気美女。
但馬五月:営業部員。元自衛隊員。
朝霧美羽:女子高生。雪乃に可愛がられている。
いのり :第13女子寮の機械警備システム。

(クリックで拡大します)
百合ハー企画キャラ紹介第2版

今回は五月x雪乃あーんど鈴x雪乃がメインですかねーw

ただし第1話よりさらに長くなってしまったので、
今回はお話を3つに分けて三週連続公開とさせていただきます。
申し訳ないありません。

それでは、お楽しみくださいませっ!



 『独立第13女子寮・その2(Part1)』




 夢見るほどに憧れる、出会いがある──。

    ◇  ◆  ◇

 日本語の文章に上手い下手があるように、プログラムのコードにも上手い下手があるってことに、最近になって気づいた。

「そういうもんなんスかねぇ」

 たまたま我がITソリューション事業部開発2課へ別件でやってきた、営業の但馬五月ちゃんにこんな事を言ったら、なんとも微妙な表情をされた。そりゃそうだよね。入社したばかりの私が聞いたとしても、きっと似たような反応をするだろう。

「でもどうして雪乃さんがコードなんて読むんスか? テクニカルライターなのに」
「マニュアルを書いていると、仕様書だけではどうしても微妙な点がわからない、ってことがあるのよ」
「実際に作った人に聞けばいいんじゃないんですか、ソレ」
「まあそれが正論なんだけど……」

 開発にたずさわった技術者達はすでに次のお仕事に追いまくられてて、とても根掘り葉掘り聞ける状態じゃない。そこで私達テクニカルライターが直接コードを追いかける事態に陥る。それもかなりの割合で。まるっきり門外漢の私がコードを読む羽目になったのは、そうしたやむにやまれぬ事情によるものだった。

「もっともそれ以前に、なんでソリューション事業部でわざわざマニュアルを? そんなの普通はアウトソーシングしますよね」
「ここは製品以前というか、アイディアを売るのがメインの商売でしょ。だから、あまり発表前にあちこち触れて回るわけにはいかない、ってことらしいよ」

 アウトソーシングとはこの場合、マニュアル専門の会社にお願いして代わりに書いてもらうということだ。大抵はその方が安く早くあがるから、一般的なマニュアル類はそういう所に発注することが多い。しかし裏を返せば、たとえわずかとはいえ社外に情報が漏れることになる。

 それにいくら厳重な守秘義務契約を結んだとしても、たとえばコンピュータウィルスなんかに情報を抜かれることを防いでくれるわけじゃない。そもそもこの部署から発注があったという事実だけで、何か新しいことを始める予兆と捉える同業他社は、それこそ国内国外を問わず掃いて捨てるほどある。

「それってもしかして秘密兵器とか……ですか?」
「いやそれアニメの見過ぎだからね。どこにそんな予算があるのよ」
「ですよねー。それでなくてもウチの会社、あんまし景気よくないし」

 思わずふたりで微妙な笑いをかみ殺す。仮にも職場だ。上層部批判と取られかねない発言はなるべく避けなければ。どこに耳があるか知れたもんじゃない。

「それにしても、こんな画面一日眺めて過ごせるなんて、やっぱ雪乃さんって凄いッスねえ」
「こらこら、あまり他部のパソコンの画面なんてむやみにのぞいちゃダメよ。新人研修で習ったでしょ?」
「あはは、そういやそうでしたっけ」

 まるで邪気の感じられない笑顔で五月ちゃんがうなずく。もしこんなカワイイ産業スパイが実在したら、確かに洗いざらい極秘事項を話してしまいかねない。もちろんこの娘に限って、そんなことはありえないけど。

 それでも念のために「いのりシステム」のコードが表示されている画面だけは閉じておく。これは部外秘レベル3にあたる機密扱いの資料だ。残念ながら同じ会社の人間といえども、ここでは五月ちゃんも部外者である。もし目にした事が公になれば、見た方も見せた方も懲罰は免れない。

「というわけで、今もそれ用のマニュアルを書くためにコードを追いかけまわしてたのよね」

 最初は目的の箇所がどこにあるかを探し当てるだけでひと苦労。ようやく見つけても、それがどう意味なのかいくら眺めてもさっぱりわからず、先輩ライターに泣きついてばかりだった。あからさまに『こんなこともわからないの』というオーラを感じ、なんで自分がこんな目にと凹んでしまったのも一度や二度じゃない。

「それでも人間って、大抵の事には慣れちゃうんだよねえ」
「あ、わかります。自分も最初の頃は野原でトイレするの恥ずかしかったッスけど、すぐ慣れたッスよ」
「さすが元自の鍛え方はハンパじゃないわね」
「そりゃまあ、これでもイロイロと苦労してますから」
「いや別に誉めてるわけじゃないんだけど」

 うら若い乙女が野原でトイレとか気軽に口にしないでほしい。ご不浄とまでは言わないが、せめて花摘みとかさ。こんな話を、たとえば同じ寮に住んでる藤末鈴ちゃんあたりが聞きつけたら、それこそ思いっきり噛みつかれるに違いない。

 もっとも五月ちゃんは自衛隊という異常な環境で厳しい教育を受けたためか、この辺りの感覚がかなり普通の女子とは違ってる。本人にまるっきり悪意がないだけ余計にタチが悪い。何度か注意したけど全然治る気配はなく、最近では周りもこういうものだと諦めてる。もっとも男子方面では下ネタもいける気さくな娘とおおむね好評らしい。これはもっぱら女子ネットワークでの噂だが。

 それはさておき。

 そういう作業を来る日も来る日も続けているうちに、同じコードでも読みやすいモノと読みにくいモノがあることが、おぼろげながら見えてきた。死ぬほど読みにくいコードに当たるとそれだけで人生オワタという感じだけど、反対に読みやすいコードをみつけるとちょっぴり嬉しかったりして。

「もっとも、ただ読みやすいだけじゃ、プログラムとしてはまだまだなんだけどね」
「ダメなんスか。どういうところが?」
「いくら読みやすくても処理スピードがやたら遅かったり、メモリをバカ食いするようじゃ、結果的にレスポンスが悪くなってしまうから」

 たちまち五月ちゃんの頭上にはてなマークが1ダースほど出現してフォークダンスを踊り始めた。うん、これは私の説明の仕方が悪い。

「ほら、ケータイなんかでもあるでしょ? なんかやたら動きがもっさりしてる奴とか」
「あーはいはい、ありますね、それ。ボタンの押し込み足りなかったかなーとか、画面のタッチがヘンだったかなーとか」

 ケータイの場合はハードウェアの性能が足りない場合もあるんだけど、ヘッタクソなプログラマの書いたコードが原因ってコトも少なからずあるらしい。もっともあっちの部署は世界を相手に激烈な競争を繰り広げてるわけで、当然なことに人も時間も全然足りない。かといって高速なハードを使うと、今度は値段が高くなってしまって、誰も買ってくれなくなってしまう。

 一気にまくし立ててから、手元の醒めかけたコーヒーを一気に飲み切る。それにしてもなんでこのコーヒー、こんなに不味いんだろ。フロアの片隅に設置されているコーヒーメーカーに『琴吹食品』って刻印が燦然と輝いていたことを思い出し、ちょっとばかり不愉快になる。わかってる。どうせウチの会社とおんなじ系列ってだけで採用されたんでしょ。まったくお気楽でいいわよね、競争相手のいないトコは。

「要するに、あちらを立てればこちらが立たない、ってことッスかね」
「そういうことね。少しでも安く高性能で、一刻も早く売り出さないと競争に勝ち抜けないわけだし」

 いかにも五月ちゃんらしい、ひどく大ざっぱなまとめに苦笑いしながら、私は大きくうなずいてみせた。

「かくしてケータイの開発部署は24時間、灯かりの消える時はないというわけ」
「自分も噂を聞いたコトがあるッス。仕事中に身体を壊しちゃう人も少なくないとかなんとか……」
「しーっ。それあんまし喋っちゃダメよ」

 慌てて私は、五月ちゃんの唇に人差し指をあてて黙らせた。なんか彼女の頬がほんのり紅くなってるみたいだけど、気のせいかな。

「なんか死んだ技術者さんの霊が救いを求めて寄ってくるとか……」
「マ、マジっすか!」
「たとえば夜中にひとりでお仕事してたら、ふと人の気配に気づいて振り返ると、昔の制服を着た技術者さんが『納期が、スケジュールがあっ』って叫びながら走り回ってるのを見た事だって──」
「ちょ……やめてくださいよ。そういうの弱いんですって、自分っ!」
「まあウソだけどね」
「……雪乃さぁん、きっとロクな死に方しませんよぉ」

 恨めしそうな表情を浮かべながら五月ちゃんがそんなことを言う。そういえば彼女はオカルト系、真剣に苦手なんだったっけ。悪いことしちゃった。

「今夜寝られなかったら雪乃さんのせいですからね」
「どうしてもひとりが怖いんだったら、お詫びにいっしょに添い寝くらいはしてあげてもいいけど?」
「それなら話は別です。じゃあドンドン怖い話してください。そして責任取ってくださいっ。なんなら添い寝するだけじゃなくて──」
「バーカ、調子乗りすぎっ」

 急にテンションが上がった五月ちゃんのオデコを、笑いながらツンと軽くつつく。と、まるでそれを合図にしたみたいに、彼女の携帯が鳴った。

「さすがに油の売りすぎッスね。それじゃ、また後で」



 名残惜しそうに退場する五月ちゃんを見送ると、私はもう一度パソコンの画面を開き、先ほどまで行っていたコードの追跡を再開した。

 さすがというべきか、怜さんの書くコードは明らかに他の人を一枚も二枚も上回っていた。だけど世の中は広い。上には上がいるのだ。延々と追いかけていくうちに、思わず『これ、上手いなあ』と唸らされるコードにちょくちょく出くわすようになった。

 短くて、的確で、とても読みやすく、それでいて少ないメモリで高速に動作する。まさにシンプルイズベスト。でもって、そういうコードには決まってコメント欄に同じ署名があるのだ。

 ──『m_asakura』

 もともと現行の生体認証装置、商品名「いのりシステム」は、その元になった「みはるⅡシステム」を徹底的に改造したものだ。それでも当時のコードがことごとく消えてなくなったわけじゃない。よく注意して読んでいくと、そこかしこに残存コードが存在する。要するにそれらはあまりにも上手すぎて、あえて書き換える必要がなかったに違いない。

 そしてそれら残存コードのほとんどに『m_asakura』という署名が残されていた。わざわざ許可を得て、コード履歴データベースから「みはるⅡ」のコードまで引っ張り出して確認したのだから。あくまで推測だけど、おそらく『m_asakura』という人は「みはるⅡ」の主要なコード製作者の中でも飛びきりの人だったに違いない。

 ただ残念なことに、2年ほど前を境に署名付きコードがふっつりと姿を消している。おそらく私と入れ違うように職場を去ったらしい。それとなく先輩達に聞いてみても、まあイロイロあってね、と言葉を濁される。どうやら触れてはならない話題のようだ。そうなると、単なる興味本位でそれ以上追及するわけにもいかない。

 もう1年入社が早ければ、せめて顔くらいは見られたのだろうか。とはいえこの会社だって正社員だけで軽く万のオーダーに達する。もちろん全員の顔なんて覚えられるはずもない。同じ部署に配属でもされない限り、まず出合うことなど叶わぬ夢だろう。いや下手をすると、そんな凄い人が存在すらことさえ気づかなかったはずだ。

 もっともそれらがむしろ、ますます好奇心をかきたてる原動力になってしまうのは、なんとも業の深い話だけど。

 ──どんな人なんだろうなあ。

 今日何度目かの妄想タイムに突入しそうになったところで、昼休みをつげるチャイムがかろうじて私を現実に引き戻してくれたのだった──。

 (Part2につづく)

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おもに百合(GL・ガールズラブ)な小説と周辺情報を公開しています。最近はコミPo!でオリジナル百合4コマも。現在は「けいおん!」、「魔法少女まどか☆マギカ」とオリジナル。カプ傾向は澪梓、憂梓、恵和あたり。あと、ほむほむは百合。
このブログはリンクフリーですが、相互リンクはお受けしておりません。ご了承くださいませ。
注:管理人の名称は「あっとあとみっく」が正式ですが、ごくまれに「藍」と名乗ることもあります。

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