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『独立第13女子寮・その2(Part3)』(オリジナル百合SS)

オリジナルのSSを公開します。『独立第13女子寮』というお題です。
とある企業の女子寮が舞台の百合ハーレムって感じで。

なお完全オリジナルなので、キャラ紹介など……。

佐島雪乃:IT事業部のテクニカルライター。本作の主人公。
九里原怜:IT事業部課長代理。雪乃の上司。
藤末鈴 :秘書室員。強気美女。
但馬五月:営業部員。元自衛隊員。
朝霧美羽:女子高生。雪乃に可愛がられている。
いのり :第13女子寮の機械警備システム。

(クリックで拡大します)
百合ハー企画キャラ紹介第2版

今回は五月x雪乃あーんど鈴x雪乃がメインですかねーw

ただし第1話よりさらに長くなってしまったので、
お話を3つに分けて三週連続公開とさせていただきます。
今回は第2話Part2からの続きということで。
申し訳ないありません。

それと拍手コメにもなかなかお返事できず、こちらも申し訳ないです。
公開・非公開どちらも全て目は通しておりますので。

それでは、お楽しみくださいませっ!


(『独立第13女子寮・その2(Part2)』からの続きです)


 『独立第13女子寮・その2(Part3)』



    ◇  ◆  ◇

 お互いノーガードの殴り合い状態だった。有名どころのギャルゲーから始まって、コアなユーザーでもほとんど知られていないタイトルに至るまで。それはもうゲーマーとしての矜持をかけた戦いである。絶対に負けるわけにはいかない。

「貴女、なかなかできるわね」
「そっちこそ。ずいぶんとやるじゃない」

 ぜいぜいと肩で息をしながら、つかの間お互いの健闘をたたえ合う。なんなんだ、このできの悪い少年マンガみたいな展開。でも確かにこの人、ゲームの分野でも並みのスペックじゃない。それどころかちょっとばかりシンパシーまで感じちゃったりして。悔しいような嬉しいような、どうにも複雑な気分だ。

 だがしばしの沈黙ののち、改めて彼女は私の目を真正面から見据えると、こんな質問を放ってきた。

「これはあくまで好奇心で聞くんだけど、貴女の人生で最高って思うゲームはなあに?」

 うわ、こっち方面から攻めてきたか。知識量で決着がつかないから、今度は思い入れを図ろうってわけだ。

 しばし考えて、正直に申告した。あの世界で通称「鍵」と呼ばれるゲームブランドの第一作。ドイツの作曲家ヨハン・パッヘルベルが世に送り出した最も有名な曲をモチーフにした、あのゲームの名を。

 だが、深い深い海の底みたいな彼女の瞳には、何の変化も起こらなかった。もしかして知らないのかな、この名作を。でもまあ10年以上前の作品だから無理もない。そう思いかけたときだった。

「そう。知ってるのね、貴女も」

 ぽつりと彼女が呟いた。何の感慨も見せない、砂漠のように乾ききった声。つい先ほどまであれほど熱くなっていた彼女を見ていたためか、むしろ不気味さすら感じさせる態度だった。

「知ってるも何も──」

 恐れを振り払うかのように、私は思いのたけをぶちまけた。今度ばかりは彼女も聞き役に回る。

「中でもお気に入りのシナリオは、正体不明の家出少女の──」

 そのセリフを口にした瞬間、私の時間は数年前に飛んでいた。初めてあのシナリオをプレイした、孤独な高校時代に。

 主人公に会いたい一心で、全てを捨てて人の姿になってやってきた彼女。しかしそれはあまりにも無謀な試みだった。主人公と楽しいひと時を過ごしたのもつかの間。変身したことで力のほとんどを使い果たした彼女は、しだいに壊れ始めた。

 記憶を失い、感情を忘れ、言葉さえ発することもできず、ただ甘え声しか上げられなくなっていく過程を見せつけられるに至って、ようやく主人公は彼女の正体を思い知った。そして最初に出会った雪原でふたりだけの結婚式をあげ、主人公に見守られながら、彼女は……。

 最初にこのエンディングを迎えた時は、ティッシュをひと箱使い果たすほど号泣したものだ。ヒドイよ。こんなの。あんまりだよ。

 彼女の顔が、周囲の視界が、ぼんやりと歪み始める。鼻の奥がツーンとする。あ、これヤバい。たちまち堤防が決壊する。あわててハンカチを取り出そうとした時。

「ちょっとこっち来なさい」

 もの凄い力で手を引っ張られた。身構えるヒマもない。

「え……え、ちょ……」

 訳が分からない。でも心が弱り果てていた私に抵抗する術などあるはずもなかった。そのまま力任せに会議室を出て、近場のトイレへと連れ込まれてしまう。大理石とおぼしき石材がふんだんに使われていて、下手をするとどこぞの高級レストランに迷い込んだかと錯覚しそうな佇まい。まさかここを最後の決戦場にするつもりなんだろうか。

「な……何、何なの。私、何か気に障るようなこと言った? だったら謝るけど……」

 動揺のあまり涙が半分以上引っ込んでしまっていた。いったい彼女は何をそんなに怒っているのかさっぱり見当がつかない。しかし私に背中を向けたまま、彼女はぶすりと呟いた。

「鏡で自分の顔を見なさいよ。酷い顔してるから」

 言われるままに鏡をのぞき込む。すでにメイクが涙でぐずぐずになっていた。確かに我ながら酷い顔。まるでお化けみたいだ。

「これをみんなに気づかせないために、わざわざ連れて来てくれたの?」
「違うわよっ。なんで、よりによってあのシナリオなのよっ!」

 まるで悲鳴のような声、いや叫びを上げながら、彼女が振り返る。

 ぽろぽろぽろ。まるで堰を切ったように、彼女の美しく大きなふたつの瞳から、とめどもなく涙が溢れ出していた。霞のかかったような視界だったけど、絶対に見間違いなんかじゃない。

「わけわかんないわよ。なんで彼女があんな可哀想な目に会わなくっちゃいけないのよ。なんで恋しただけで命まで落とさなきゃいけないのよ。理不尽なんてもんじゃない。あんなシナリオ書いたヤツ、マジで引っぱたいてやりたいくらいだわっ!」

 怒りと哀しみに全身を震わせるその姿は、普段のクールビューティなイメージとはあまりにもかけ離れている。まるで思春期真っ只中の少女がむせび泣いているようだった。まるで初めてあのシナリオをクリアした時の私みたいに。

「そんな話持ち出されて、その上泣き顔まで見せられちゃったら……もう私だって我慢できないじゃないっ!」

 気がつくと彼女のことを思い切り抱きしめている自分がいた。同じだ、まるっきり同じだったんだ。まさか、まさか、こんな自分には一番縁遠い存在だとばかり思ってた、彼女が。

「ごめん。ごめんね。辛いこと思い出させちゃって」
「謝らなくたっていいよ。あんただって、辛かったんでしょ?」
「うん……うんっ」

 かろうじて頷くのが精いっぱいだった。そのまま互いを抱きしめ合いながら、私達はわあわあと大声を上げ、それこそ涙が枯れ果てるまで泣き続けたのだった──。



 講義開始直前にようやく会議室に戻った。新入社員の面倒を見ている人事担当の人が早く席について、と私達を急かす。最前列の自分達の席に滑り込むのと、ガチャリと背後からドアの開く音が響いたのと、はたしてどちらが先だったか。

「起立っ」

 人事担当の人の号令に合わせて立ち上がる。担当の人がいつになく緊張しているのがわかった。いつも柔らかな物腰の人なのに、ここまでガチガチになっているのを見たのは、ひょっとしたら研修初日の役員挨拶の時くらいじゃないだろうか。

 軽やかな音が響く。まったく乱れを感じさせないテンポ。デキる人に共通する足音。

 すぐ脇を通り過ぎる。さすがに横顔を盗み見る余裕はなかった。後ろ姿から、思ったより背の低い人だなと思う。黒いスーツに身を固め、小脇にノートPCと資料を抱えた姿は、むしろカワイイと表現してもいいかもしれない。わずかに遅れて、ほんのりと上品な香りが漂ってきた。エタニティ、かな。

 人事担当の人に軽く目礼し、小声で一言二言会話を交わす。担当の人がすっかり恐縮しきっているのが分かった。大の男が肩の高さほどしかない女性にヘコヘコする光景は、どこかユーモラスでもあった。だけどそれは今日の講師の先生が、見かけ通りのカワイイだけの人じゃないってコトなのかも。漠然とそんな思いが胸中をよぎる。

 壇上に上がった先生の姿を見て、予感が的中していることを悟った。強烈な意志を感じさせる視線にただひたすらに圧倒される。何もかも小さな作りの人なのに、ピンと背筋を伸ばして胸を張るその姿を見ているうちに、こちらの背中まで伸びてくるのが不思議だった。

「礼、直れ」

 まるで小学生に戻ったかのような一糸乱れぬ挨拶だった。気づかぬ間に、先生のきびきびとした態度が、新入社員の全員にも感染してしまったのだろうか

 当の先生はわずかに目を細め、首を左右に動かしながら会場の様子を確認しているようだった。細いフレームの眼鏡の奥から私たちを見つめる瞳が、まるで実験動物か何かを眺めているような冷たい光を湛えている。しばしの沈黙ののち、彼女はおもむろに真紅のルージュを引いた唇を開いた。

「おはようございます。どうぞご着席ください」

 凛とした声音だった。続いてうっすらと笑顔を浮かべる。

「ITソリューション事業部開発2課の九里原です。本日は一日講師を担当させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。それと──」

 不意に彼女が私に目を向けた。思わず全身が硬直する。ヘビに睨まれたカエルって、きっとこんな状態なんだろうな。

「佐島さん、もうお昼休み終わってるわよ?」

 ……え?

「いい加減起きないと、給料からさっぴくわよ。それから査定もBからBマイナスに──」
「え、ええ、えええええー!?」

 あまりの言い分に反論すべく立ち上がろうとしたら、ガツンと太ももを机にぶつけてしまう。痛てててて。いやいや、この程度で怯んでる場合じゃない。

「いきなり新人研修で減俸にマイナス査定なんてあんまりですっ!」
「何わけのわからんこと言ってるの、貴女は。ひょっとしてまだ目が覚めてないのかな?」

 あちこちからクスクスと笑い声が響いてくる。混乱した頭のまま辺りを見回すと、もちろんそこは新人研修の会場なんかではなく、もう配属されて1年以上立つ、ITソリューション事業部開発2課のフロアだった。

 ぼんやりした頭を懸命に働かせる。……そっか。私、昼休みにお昼寝してて、そのまま寝過ごしたのか……。そういやさっきの怜さん、外勤用の黒スーツだったもんなあ。本来なら特に理由がない限り勤務中は社服着用が原則なのに。そういう矛盾をまるっきり疑問に感じないのが夢の不思議な所だ。

「とりあえず1分で目覚めのコーヒー呑んできなさい。ちょっと確認したいことがあるから」
「は、はいっ!」

 1分なんてあっという間だ。あわててコーヒーメーカーに飛びつき、舌が焼けるような熱さと苦さだけが取り柄のコーヒーを懸命に飲み下す。さすがに『琴吹食品氏ね』などと文句を言ってる場合じゃない。

 そんな切羽詰まった状況なのに、先ほどの夢の光景が脳裏によみがえる。

 後で打ち明けられた話によると、彼女──藤末鈴ちゃん──は、私がゲーム機をピコピコやってるのに気づき、かねてから話をする機会をうかがっていたらしい。あの日は人が少なかったので、チャンスだと思ったのだとか。

 もちろん今ではかけがえのない親友である。本当に、こんな出会いもあるんだなって思う。

 そんなだから、彼女に第13女子寮を紹介することは何のためらいもなかった。さらに五月ちゃんも加えた寮は、もう私達全員にとってかけがいのない場所であることは疑いの余地がない。この決して眠ることのない巨大都市の片隅に、それは奇跡のように存在する、私達だけの緑のオアシスなのだ。

 もっともみんながあそこに住むようになった理由はさまざま。私は実家が遠かったから。五月ちゃんは帰りが遅いから。そして鈴ちゃんは時々洩れる愚痴から、どうやら家族と折り合いが悪いのが原因らしい。何度か水を向けてみたけど、現在に至るまで詳しい事情は聞かせてもらってない。おそらく彼女にとっては気安く口にできるような内容じゃないんだろう。

 いつかその理由も、話せる時が来ればいいのになあ。できれば「あの頃は私も青かったわ」なんて笑いながら──。



「も、戻りましたっ」
「ご苦労さま。それで佐島さんのスケジュールなんだけど、こちらのプロジェクトに少し遅れがあって……」

 手にしたタブレットPCに工程表を表示させ、その何か所を指し示す。

「つまり、ここに半日ほど空きができる、と」
「もちろん貴女を遊ばせておくわけにもいかない。だから新しいお仕事を割り振るつもり」
「えーーーーっ!」

 私の魂消る叫びを耳にして、それまで仕事モードだった怜さんが破顔する。

「心配しないで。私のお手伝いで、ファームウェアアップデートの現地作業をしてもらうだけだから」
「そんなのサービス部門のお仕事じゃないですかぁ」
「今回のは正式リリース前のベータ版だから、そういうわけにもいかないのよ。それに──」
「それに……?」

 そこで怜さんは、わずかに声のトーンを落とした。

「ちょうどいい機会なのよね。ぜひ一度、雪乃にも会わせたいと思ってたから」

 見覚えのない名刺を差し出され、反射的にそれを受け取る。『朝倉 まどか』と書かれていた。名前から判断する限り女性らしい。でも高校の物理の先生なんかにどうして私が、と頭をひねる。そんな思いを抱えながら名刺を裏返すと、英語でほぼ同様の内容が書かれていた。大手企業なら当然だが、教育機関としてはかなり珍しいかも知れない。

 あれ、ちょっと待てよ。

 朝倉まどか。
 Madoka Asakura。

 なんだろう、このモヤモヤ感。何かが引っかかる。どこかで見たような、見なかったような……。



 ──『m-asakura』。



 まさか。
 まさか……!
 あの、『m-asakura』が、この人なの?

「今さら説明するまでもないとは思うけど、そもそも『いのり』は、フィンランドのオウル大学で開発された『ケルベロス』というオープンソースの認証システムが元になっている」
「はい、それはもちろん」

 そのくらいならいくら私でも知っている。世界のセキュリティ関係者の間で、開発者である日本人研究者、楠美晴の名前と日本語の『見張る』を引っかけ、そのコードが通称『ミハル』と呼ばれてること。さらにウチの会社が商品化して『みはる』『みはるⅡ』さらに『いのり』というラインナップにしてることも。

「ひょっとしたら貴女も名前くらいは聞いてるんじゃないかしら。かつて『みはるⅡ』の開発プロジェクトで中心的役割を果たした人物のことを」

 ──ドクン

 自分でも呆れるほど胸が高鳴るのがわかる。

「もしかしてそれがあの……私もお会いできるんですか」
「その通りよ。あるでしょ、興味が」
「あ、はい」

 コクリとうなずくと、悪戯っぽい目つきで伶さんが笑う。うっすらと冷汗が吹き出すのを自覚する。まるで自身の子供じみたトキメキを見透かされてるような気がして、ちょっとだけ恥ずかしかった。

 『m-asakura』、朝倉まどかさん。ずっと思っていた。いったいどんな人なのか。憧れていたといってもいい。そんな神様みたいな人に、まさか実際にお会いできる日がやってくるなんて。

 また一つ、夢がかなう。

 夢見るほどに憧れる、出会いがある──。

 (つづく)

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おもに百合(GL・ガールズラブ)な小説と周辺情報を公開しています。最近はコミPo!でオリジナル百合4コマも。現在は「けいおん!」、「魔法少女まどか☆マギカ」とオリジナル。カプ傾向は澪梓、憂梓、恵和あたり。あと、ほむほむは百合。
このブログはリンクフリーですが、相互リンクはお受けしておりません。ご了承くださいませ。
注:管理人の名称は「あっとあとみっく」が正式ですが、ごくまれに「藍」と名乗ることもあります。

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