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『リリー・クリスマス』(オリジナル百合SS)

ハッピークリスマス……いや、リリークリスマスー♪

(クリックで拡大します)
lily_xmas_blog.jpg


というわけで(何、今朝方見た夢を急きょ『『リリー・クリスマス』』(オリジナル百合SS)として公開します。

 あらすじは……まあアレです。同じ会社の先輩後輩で。事後です、多分ww。

それでは、お楽しみくださいませっ!


 『リリー・クリスマス』



 かすかな機械音が耳についた。毎朝、タイマー運転で暖房が動き出す時の音だな。そんなことに気づくのにもかなり時間がかかった。寝ぼけまなこどころじゃない。ちっとも寝た気がしないよ。身体も鉛のように重たいし……いや待てよ。なんだろ、このいい匂いは。

「おはようございます、仲川先輩」

 遥か彼方から声をかけられた。聞きなれない女子の声。それもかなり若い。自分の部屋に赤の他人を上げた事なんて一度もないのに。

 目をこすりながら辺りを見回す。机の上にはワインのビンや半壊したホールケーキ、あるいはかつてチキンだったはずの残骸などが、見るも無残な姿を晒していた。祭りの後という形容がふさわしいようにも思える。そう言えば昨夜はクリスマスイブだったな。

「勝手に冷蔵庫あさって、朝ごはん見繕ってみたんですけど。食べます?」

 さっきより近くで声がした。濁り切った眼で声の主に焦点を移す。

 ……出来損ないのサンタガールがそこにいた。というか、サンタクロースの上着を羽織っただけという、なんとも残念な姿である。すらりと伸びた生足と胸元の膨らみ具合から見ても、ほぼ間違いなく他には何も身につけていない。大抵の男どもにとっては一度や二度は妄想するような光景かも知れないが。それにしても誰だよこの不審人物。

 いや、ちょっと待てよ。髪を降ろしてるのとスッピンのせいもあって、とっさに思い出せなかったけど、この顔には見覚えがある。確か庶務課の……そう、岡崎とかいったっけ。美人というより可愛い系? 若いわりにかなりキチンとしてるっぽい……みたいな印象しかない。

「そこで何やってんの、岡崎さん」
「やだなあ今さら他人行儀な。昨夜はちゃんと『めぐみ』って呼んでくれたのにぃ」

 苦笑いを浮かべながら岡崎さん……めぐみがそんな危ない発言をする。

 昨日の夜。何があったっけ。ずきずきと痛む頭で懸命に記憶を手繰る。何も思い出せない、なんてことはなかった。むしろ思い出したくもない昨夜の一件が脳裏に次々と甦る。

 そうだよ。そろそろ寝ようかという時にサンタコスのめぐみが押しかけてきたんだっけ。すでに足元も危うい状態だったからしかたなく家に上げ、持って来た食料はもとより、あろうことか彼女自身まで頂いてしまったわけ……だよ、うん。まあ半分はお酒の勢いもあったのは確かだけどさ。

 ──上司に叱られて泣いてた時に慰めてくれてとっても嬉しかったんですー
 ──イロイロ理由つけてお姉さまのセクションまで出かけてたんですよー
 ──背筋を伸ばしてディスプレイに向かう姿にシビれちゃいましたー
 ──もう寝ても覚めても頭からお姉さまの事が離れないんですよー

 なんて、いかに自分が私の事を慕っているかを力説して。そして最後には「もうひとりぼっちは寂しんですよー慰めてくださいよー」と半泣きになっていた彼女をとても愛おしいと感じた瞬間、きっと何かが外れてしまったんだ。でもって、後はなし崩しにアレへ……。

 思わず頭を抱えたくなる気分に襲われる。マズったな。かなり激しく自己嫌悪。会社の子には手を出さない主義だったのに。

「それで、朝ごはんなんですけど、どうします?」

 しばらく私の様子を楽しそうに眺めていためぐみが再び質問する。やむなく半ば諦めの境地で、小さく溜息をつきながら返事した。

「そうねえ。とりあえず紅茶淹れてくれる? オレンジペコ、シンクの上の棚、左から二番目にティーバックの箱があるから」
「はいっ、お任せください。美咲お姉さまっ」

 本来なら朝一番はブラックのコーヒーなんだけど、勝手のわからない彼女にバリスタマシンをいじらせたくなかった。万が一壊されでもしたら大損害は必至だ。まさか弁償させるわけにもいかないし。

 それにしても『美咲お姉さま』かよ。久しく忘れてたな、そんな呼び名。なんかむしろ初々しいというか。あ、いやいや。

    ◇  ◆  ◇

「お待たせしました。こう見えても、お茶の淹れ方にはちょっと自信あるんですよー」
「それは楽しみね。頂きます」

 半身を起こし、トレイに載せられたカップを受け取り、一口含む。なるほど自信ある、などと言うだけのことはある。香りを引き立て、それでいて苦味もほとんどない。適切な温度と時間管理をしなければ、なかなかこの風味を引き出すのは難しいもの。

「うん、確かに美味しかった。ティーバッグであれだけ美味しく淹れられる子はなかなかいないよ」
「嬉しい。ありがとうございます。もう大好きっ、美咲お姉さま!」

 感極まったとばかりにめぐみが抱きついてくる。その感触で、ようやく自分もあられのない格好のままだと気づかされた。よくよく考えてみれば明け方近くまで……だもんな。睡眠不足なのも仕方ない。誰に聞かせるわけでもなく言い訳したりして。今日が日曜でホントよかった。

「それでさ、めぐみ……」
「大丈夫です。わかってます」

 私の言葉を遮りながら、すうっと彼女が身体を離す。ちょっと惜しかった……いやいや、そうじゃなくて。そんな阿呆な思考が抜け切れない私とは裏腹に、彼女は床にちょこんと正座すると、そのまま三つ指をついて深々と頭を下げた。

「本日より不肖この岡崎めぐみ、美咲お姉さまの恋人として一生懸命頑張りますので、どうぞよろしくお願いいたします」
「う……」

 絶対に拒絶すべき、と理性が叫んでいた。社内恋愛なんて後が大変だぞ。ロクな事にならない。今ならまだ一夜の過ちで済む……そんな考えが頭を掠める。

 その一方で身体の奥深くから、同情あるいは羨望とも言うべき疼きを感じているのも確かだった。いろんな意味で、もう私には無理だ。こんな後先考えずに突っ走るなんてマネは。その真っ直ぐさが逆に眩しいよ。ひょっとして遠い昔、学生時代の自分も周囲の人々からはこんな風に見えてたのだろうか。

 そんな事に思いを馳せながら、まるですがりつく様な色の浮かぶ彼女の目に見てしまったら、もう何も言えなくなってしまった。そこで迷ってしまったのが、おそらく私の弱さなのだろう。

 ──もうひとりぼっちは寂しんですよー慰めてくださいよー

 いや多分、私もそう。寂しかったんだよね、お互い。大体あんな熱い夜を過ごした後で、今さらなかったことにしようとか、いいお友達でいようねだなんて、いったいどの口で言えるんだ?

「……う、うん。よろしく」
「それじゃあ、改めて朝ごはんはいかがですか。できれば冷めないうちに」

 頭をあげた彼女の満面の笑顔は、何度か見かけた営業スマイルとはまるで異質な、とても人形のように可愛らしいものだった。こんな子に慕われるというのは、正直悪い気分じゃない。これもアレでいいのか、あの、百合ってヤツで。

「どうかしましたか、お姉さま」
「あ、ごめん。つい、めぐみの可愛さに見とれてた」

 次の瞬間、サンタ服にも負けないくらい、めぐみの顔が朱に染まった。

「あ……ありがとうございます。なんかとっても恥ずかしいですけどぉ」

 うわもうたまりませんわ、この反応。燃え尽きていたはずの体内炉に再び火が灯る。喚き散らす理性はガン無視。そそくさとベッドから起き出す。うつむいてモジモジしているめぐみを手を取り抱き寄せ、そのまま強引に唇を重ねる。

「ん……んんっ」

 拒む様子がない事を確かめてから、ふたりで崩れるようにベッドへ倒れ込んだ。耳たぶを軽く噛みながら私は宣言する。

「朝ごはんは、まずめぐみからいただきます」
「え……ひゃ……うう……んっ」

 一生に一度くらい、こんな夢みたいなクリスマスがあってもいいじゃない。メリークリスマス。ハッピークリスマス。いや違うな。今回みたいなのは……そうだ。やっぱ百合だし。

「リリー・クリスマス、めぐみ」

 思いつきの言葉を耳元で囁いてみる。一瞬ポカンとしていた彼女だったが、やや遅れて理解の色が広がっていく。

「そうですね、リリー・クリスマスです。美咲お姉さま」

 今にも消え入りそうな小声でそう答えると、彼女は覚悟を決めたように、そっと目を閉じたのだった──。

 (おしまい)
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おもに百合(GL・ガールズラブ)な小説と周辺情報を公開しています。最近はコミPo!でオリジナル百合4コマも。現在は「けいおん!」、「魔法少女まどか☆マギカ」とオリジナル。カプ傾向は澪梓、憂梓、恵和あたり。あと、ほむほむは百合。
このブログはリンクフリーですが、相互リンクはお受けしておりません。ご了承くださいませ。
注:管理人の名称は「あっとあとみっく」が正式ですが、ごくまれに「藍」と名乗ることもあります。

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