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『罪と償い』(けいおんSS)

けいおん!のSSを公開します。
『罪と償い』というお題です。視点でな内容…といっても、実質的に登場するのはのふたり。

1月15日は我らがアイドル、秋山しゃんのお誕生日ということで書いたこのSSですが、果たして誕生祝いにふさわしい内容かと言われると、かなり自信ないです。

あらすじはですねー、誕生パーティーもしだいに乱戦模様となってきた最中、の側に寄ってきたとの内緒話……ですね。長さは9KBほどなので、さらりと読めると思われます。

それでは、お楽しみくださいませっ!
そしてちゃん、お誕生日おめでとうっ!


 『罪と償い』



 人は生まれながらに罪を背負っているのだという。

    ◇  ◆  ◇

 いつもの軽音部のみんなとさわ子先生に加え、さらに唯の妹のちゃんと2年からのクラスメイトの真鍋を加えたメンバーが一同に顔をそろえていた。改めて見回すとかなり華やかな眺めかもしれない。

 それにしても私なんかの誕生日を祝ってくれるために、これだけの人たちがわざわざ足を運んできてくれるなんて、なんだか嬉し恥ずかしだし、そもそも申し訳ない気持ちでいっぱいだ。今年は大学受験が間近だからと一度は断ったんだけど、まあ一日くらいはこんな日があってもいいか、などと甘い事と考え始めている。

 とはいえ、なごやかな雰囲気も最初のうち。まずいつものように唯と律がをいじり始め、さわ子先生はに絡み、ムギは高そうなビデオカメラですっかり撮影に没頭している。そしてこの場の唯一の良心であるちゃんは、食器を下げにいくといったまま、一向に台所から戻ってこないし…。

 とにかく律が、を相手にあまりはめをはずし過ぎないように、と横目で監視していると、ふと誰かが反対側に座り込んできた気配を感じた。振り向くとそこにはシャンメリーとグラスを抱えながら、ニコニコと人懐っこい笑顔を浮かべるちゃんが、上機嫌で座り込んでいた。

「改めまして、18歳のお誕生日おめでとうございます、さん」
「うん、ありがとう。ちゃんもわざわざ出席してくれて、うれしいよ」
「そりゃもう、お姉ちゃんの大切なお友だちですし」

 いつものように笑顔を浮かべながら、そんなことをちゃんが言ってくれる。初対面の時以来の、よく出来た子というイメージは相変わらず微塵も揺らぎがない。

「ところで主役のさんはあまり楽しそうに見えないのですが?」
「そういうわけじゃないけど……。だいたい、唯や律やさわ子先生がいるんだから、大騒ぎになるのは覚悟の上だしね」
「それは……まあ、そうかも……」

 ほんの少しだけ笑顔に困惑の色が混じる。唯には出来過ぎの妹との声も高い彼女だが、さすがにこの状況をフォオーする気の利いた言葉は思い浮かばなかったらしい。

「ところでさん」

 相変わらずの笑顔のようにも見えたが、しかし彼女の目にはそれまでとは明らかに違う色が浮かんでいた。ある種の決意のような何かが。人当たりのいい彼女にしてはとてもめずらしいことだ。私は姿勢を正し、次の言葉を待つ。

ちゃんの事が心配ですか。桜高にたった一人残していくことが」
「べ、別に心配なんかしてないけど。なんで、そんな風に思うの、ちゃんは」

 痛い所を突かれ、それでもなんとか平静を装ったつもりだった。ところが憂ちゃんは、喉の奥でくくっと笑う。

「だって顔に書いてありますから。そんなんでちゃんのこと見つめてたら、誰でもわかりますよ」
「……そんなにわかりやすいかな、私って」
「それはもう、とっても」

 いたずらっぽい笑顔がとても愛くるしい。だがその下に隠れている彼女の心までは、まだうかがい知ることはできなかった。ひょっとすると彼女は私との事、何か気づいているのだろうか。もしそうなら、いったいどこまで。

「でもねさん、どうぞ安心してください。学校の中では私がちゃんの事、ちゃんと守りますから」

 だが私の疑心暗鬼をばっさりと切り捨てるように、憂ちゃんは真顔でそう言い切った。

「それに純ちゃんも必ず力になってくれると思うし」

 純ちゃんという名前にはあまり聞き覚えがなくて、とっさに顔が出てこなかった。でもそういえば……ああ、あの子か。梓と同じクラスの鈴木純、だったか。

「ええと……純ちゃんって確か、ジャズ研の子だっけ。あの、なんというか、個性的な髪型の」
「そうです。でもできれば本人に直接言ってあげてください。彼女も喜びますよ。自分の事を気にかけてくれてたって知ったら」
「そ、そうなのか?」
「ああ見えて、彼女はジャズ研でベースを担当してるので、さんの事を秘かに尊敬してるんですよ? 凄いベーシストだって」
「それはちっとも知らなかったよ。そんな子もいてくれるんだな、ちゃんと」

 『私のファンクラブ』というものが学内に存在しているのは知っている。だが残念ながら、そのほとんどは私の見かけが可愛いからとか、そういう理由で応援しているだけ。それ自体はありがたいことなのだろう。しかし仮にも同じベーシストとして、なお尊敬して貰える人間が実際にいるというのは、とても嬉しい事だった。日頃の努力の成果をちゃんと理解してくれる人が、梓以外にもちゃんといてくれるという事実に。

「でもそうですね、できれば髪型の事には、触れない方がいいかも……」
「そうだな。もし話をする機会があったら、気をつけるよ」

 そうして一瞬だけ戻った笑顔が、再び真顔に、いやさらに固いものへと変わる。

「話を戻しますが、もし万が一さんが、梓ちゃんを泣かせるようなことがあったら……」

 普段の憂ちゃんからは考えられないような、思わず耳を疑いたくなるような硬質な声が響いた。すでに彼女の顔には、どんな表情も残されていない。

「澪さんの場所は、私が貰っちゃいますよ?」
「え……それって?」

 一瞬、彼女の言いたいことを理解するのに時間がかかった。ひょっとしてこれは忠告、いや宣戦布告なのだろうか。私の場所を自分が貰っちゃう、いうことは。

 つまりあれだ。もし私と梓が仲たがいするようなことがあったら、単なる親友ポジションから恋人候補に名乗りを上げる。そういう決意表明に違いない。

「なーんて。冗談ですよ冗談」

 私が冷や汗をかいている間に、いつのまにか憂ちゃんの顔に笑顔が復活していた。

「でも本当に梓ちゃんの事、よろしくお願いしますね。私がいつまでもいつまでも、梓ちゃんのお友達でいられるように」

 でもそんな感じで、さらに念を押すことだけは忘れない。

 そう、だったのか。ちっとも気づかなかった。憂ちゃんが梓の事、そんな風に見つめていたなんて。

「……ごめん」

 自分でも知らず知らずのうちに、謝罪の言葉が口から飛び出していた。そんな秘めた想いも気づけないなんて。私と梓が仲良くしている姿を、これまで憂ちゃんはどんな心情で眺めていたのだろう。もし自分がそんな立場に置かれたらとしたら、とうてい耐えられそうにない。

 人は生まれながらに罪を背負っているのだという。

 今の私にこそ、その言葉がふさわしいと思った。知らなかったとはいえ、憂ちゃんの心をずたずたに傷つける様な真似をやらかして。

 しかし当の憂ちゃんには、どうやらそれを責める気持ちは微塵もないようだった。

「別に澪さんの謝ることじゃないですよ。これは梓ちゃんの選んだコトなんですから、私や澪さんにも、どうにもできないですし」

 とても大切な告白をしたばかりだというのに、彼女の表情には一片の曇りもない。もはやよく出来た子なんてレベルを遥かに超えている。いったいどこまで強いんだ、君は。

「でも実を言うと、一時期は私だけが異常なのかなって、結構深刻に悩んでたんですよ?」

 ふとそれまでの表情に影が差す。そりゃそうだろうな。女の子同士の恋愛なんて、誰もが理解できるとは思えない。少なくとも普通の女子なら、当然のことながら男子だけが恋愛対象になるはずだから。

 ましてその相手の恋心が別の人に向けられ、日々その現実を見せつけられていたなんて。ひょっとしたらそれは地獄と呼んでもいいんじゃないだろうか。

「だけどある日、さんに教えてもらったんです。とても大切なことを」
「それって、どんなことなのかな?」

 不意に飛び出した、という単語に私は反応する。2年生からクラスメイトである。現在の桜高の生徒会長を務め、国立の法学部でさえ射程圏内に収めるほどの才女で、なにより唯と憂ちゃんの幼なじみという、彼女の名前に。

「人間の中には何パーセントか、生まれながらに同性愛傾向を持っている人がいるんだって。身長や肌の色と同じように、ただの個性なんだって」
「そうなんだ。が、そんなことを……」

 ふと脳裏にその光景が浮かぶ。苦しい胸の内を吐露して涙を流す憂ちゃんと、それを優しく抱きしめるの姿が。もちろん実際に見たわけでもないのに。

「だから、私はもう大丈夫です。ちゃんと梓ちゃんと澪さんの事も受け止められますから」

 まるで雲一つなく澄みきった青空みたいな、晴れ晴れとした笑顔。

 いっそ恨み言のひとつもぶつけてくれた方が、どんなにか救われたことだろう。

 唯、ムギ、和、憂ちゃん、そして律。
 いつの間にか私と梓は、みんなの手で守られていたんだな。

「というわけで改めて、くれぐれも梓ちゃんのこと、大切にしてあげてくださいね」
「……うん。その点だけは信じてほしい。たとえどんなことがあっても、絶対に」
「ありがとうございます」

 私の返事に満足してくれたのか、深々と一礼した憂ちゃんは、そのままきびすを返すと立ち上がって歩き出す。その後ろ姿に、先ほどまでの深刻な気配は欠片も感じられない。改めて恐ろしい子だと思った。あの人当たりのいい笑顔の下に、いったいどれだけの想いを潜ませていたのだろうか。いつから、どのくらい深く。

「ほらお姉ちゃん、それから律さんも。あんまり梓ちゃんを苛めちゃダメですよー?」

 いつ果てるともしれない饗宴の中で、主役であるはずの私だけが、贖罪の念で張り裂けそうになっている。

 ごめん、憂ちゃん。

 いつもすまない、和。

 そしてありがとう、みんな。

 私と梓は、きっと大丈夫だから──。

    ◇  ◆  ◇

 人は生まれながらに罪を背負っているのだという。

 和、唯、律、ムギ。そして憂ちゃん。

 私と梓だけがこんなことになってしまって、本当に済まないと思ってる。

 だけどこうなってしまったからには。
 私たちが幸せになることでしか。
 返す方法が思い浮かばない。

 多分それだけが。
 私達にできる。
 唯一の償い。

 だから。

 (おしまい)


あとがき
今回のSSで憂が語っている、和が憂をなぐさめるというくだりは『バレンタイン・ストーム』~外伝 紅い悪魔~というSSで読めます。もっともSSというには少々長いお話ですが、もしお時間がありましたら、こちらの方もぜひ。
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Author:あっとあとみっく
おもに百合(GL・ガールズラブ)な小説と周辺情報を公開しています。最近はコミPo!でオリジナル百合4コマも。現在は「けいおん!」、「魔法少女まどか☆マギカ」とオリジナル。カプ傾向は澪梓、憂梓、恵和あたり。あと、ほむほむは百合。
このブログはリンクフリーですが、相互リンクはお受けしておりません。ご了承くださいませ。
注:管理人の名称は「あっとあとみっく」が正式ですが、ごくまれに「藍」と名乗ることもあります。

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