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『書店にて』(オリジナル百合SS)

オリジナルの百合SSを公開します。『書店にて』というお題です。

とある書店の店員さんと、そのお客さんとのほの百合っぽいやり取り、という感じで。店員さん視点です。ほんの3KBほどですから、すぐに読めるでしょう。

今回のSSでは登場人物の名前を明らかにしていません。ただ店員さんの方は、ツイッターでお世話になっているユリアさん(@Yuriakatase)をイメージしています。広く深い教養があって物腰も柔らかく、でも叱るべきときは容赦ないという、とってもステキなお方でいらっしゃいます。

というわけで、ユリアさんと仲良くしてる方々は、お客さんを自分自身に脳内変換すると、ちょっぴり幸せになれるかもですよ?w

なお今回のSSはもともと、これもツイッターで仲良くさせていただいているmさまと、「ユリアさんメインでSS書いてみよっ!」と意気投合したのが発端です。mさまの書かれたユリアさんSS「ジャムふうみっ」はこちらで読めまーす。

 「ジャムふうみっ」

こちらもそう長いものではないので、もしお時間のある方はこちらも合わせてお読みになられると、ますますほっこりできるんじゃないでしょうか。

それともし腕に覚えのある方々で、私もいっちょ書いちゃったぜ、という方はぜひご一報を。私が喜びます(何w

それでは、お楽しみくださいませっ!



 『書店にて』



 日曜の昼下がりだというのに、客がほとんどいないという状況は、普通なら憂うべき事態である。もっとも近くに次々と大型書店が開店し、売れ筋の本ならネットで取り寄せできるこのご時世に、わざわざこんな場末の本屋まで足を運ぶ人間はよほどの物好きか、さもなければ何か事情をかかえているに違いない。

「あの……本の取り寄せとか……お願いできます、か?」

 すっかり強ばった表情で、それでいて微妙に目を逸らし、微かに震える声で私に問いかける目の前の女性など、まさにその典型のように私には思えた。瑞々しいまでの若さを溢れさせ、それを小ざっぱりした身なりで包み込んだあたり、いかにも人馴れしていなさそうな雰囲気を醸し出している。おそらくここまでやってくるにも、相当の葛藤があったことだろう。

「かしこまりました。恐れ入りますが本の題名と作者のお名前、それから出版社を教えていただけますか?」
「えっと……ここに……書いてきたんですけど……」

 手渡されたメモを一瞥して、私の予感は確信へと変わる。

 それは、とあるジャンルではかなりの有名作家の本だった。しかし残念ながら現在では絶版になっている。さまざまな事情でその作家と出版社が、どうしても折り合いがつかなかったのだそうだ。現在では中古市場でプレミアム付きで細々と取引されているとか。

 そう告げると、彼女の顔に明らかな落胆の色が浮かんだ。刺すような胸の痛みを努力して営業スマイルの下に押し込める。

「そうでしたか……」
「ご期待に添えず、大変申し訳ありません」
「いえそんな。こちらこそ、いろいろ教えていただいて……ありがとうございました」

 私が頭を下げると、彼女も慌てたようにそれにならう。おそらく親御さんの教育や、彼女に関わった人達の人徳のなせる技に違いない。いやなにより、彼女自身がとてもまっすぐに育ったのだろう。そしてだからこそ、あの本を手に入れるために、これほどまでに苦労しているということも。

 同性愛。現代の日本においても、未だおおっぴらに語られることはめったに無い。ここ数年はいわゆるテレビドラマやバラエティ、そして「百合」と呼ばれるジャンルの立ち上がりなどで、セクシャルマイノリティの存在も認知され始めている。もっともあくまでそれは「世の中にはそういう変わった人もいるらしい」という程度のもので、多くの人々にとってそれはファンタジーにすぎない。それどころか公然と性倒錯の一種と非難する自称良識人と称する馬鹿共までいる。

「あの、お客さま」

 がっくりと肩を落として店を出ていこうとする彼女の後ろ姿に向かって、思わず声をかけてしまったのは、もちろんそういった事情を多少なりとも理解できる立場にいたからだというのは否定しない。しかし何より私は、あの打ちのめされたような彼女の姿に、あまりの痛ましさを感じてしまったのだろう。まるでそれが、かつての自分の姿を見ているようだったから。

 当惑気味に振り返る彼女に慌てて駆け寄り、殴り書きに近いメモを押し付ける。

「もしよければ5時過ぎに、その電話番号にかけてもらえますか。私のものですが」
「どうして……これを?」
「実は先ほどの本、私も持っているんです。お売りすることはできかねますが、お貸しすることくらいなら、あるいは」

 それは事実上、私も同好の士であることをカミングアウトしたも同然の、ある意味とても危険な行為だった。もしこの事実が業務の関係者に知られたら、たとえクビになることはないにしても、有形無形の差別がこの身に降りかかる可能性は決して低くない。

 だけど次の瞬間、あたりが初夏の花園になったかのような喜びが、彼女の全身から溢れ出すのを見てしまったら、もうそんなことはどうでもよくなってしまった。

 多分その時、私はもう恋に落ちていたんだと思う。やれやれ、いい歳して恥ずかしい話よね、まったく。

 (おしまい)
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Author:あっとあとみっく
おもに百合(GL・ガールズラブ)な小説と周辺情報を公開しています。最近はコミPo!でオリジナル百合4コマも。現在は「けいおん!」、「魔法少女まどか☆マギカ」とオリジナル。カプ傾向は澪梓、憂梓、恵和あたり。あと、ほむほむは百合。
このブログはリンクフリーですが、相互リンクはお受けしておりません。ご了承くださいませ。
注:管理人の名称は「あっとあとみっく」が正式ですが、ごくまれに「藍」と名乗ることもあります。

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