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『エウロパのザリガニを塩茹で』(オリジナル百合SS)

オリジナルのSSを公開します。
『エウロパのザリガニを塩茹で』というお題です。とあるお方がツイッターでこういう意味のことを呟いてたのを元に百合SS化してみました。(天文クラスタな方なので、お名前は伏せさせていただきます)

あらすじは例によってあんまりないです。ひょんなことから、木星の衛星エウロパの海でザリガニを狩って暮らすことになった、二人の女子高生のお話。もともと天文ネタなので、聞き慣れないカタカナ言葉や数字がありますが、そこは深く考えずに。

あと、ちょいエロいかもw

それでは、お楽しみくださいませっ!


 『エウロパのザリガニを塩茹で』



 なにしろ今日の相手はちょっとばかしデカすぎだった。

    ◇  ◆  ◇

 いつものように可視光的には暗黒のエウロパの海を、私はたったひとりで泳いでいた。とはいえ、赤外線スコープと超音波センサーは順調に稼働してたから、まるで辺りの様子がわからないわけじゃない。それについては、出発前に数日間訓練したトレーニングセンターのプールと似たようなものだ。

 少し違いのは、海底のあちこちから熱水が噴出してる事と、その回りにさまざまな生き物が住み着いてるということだ。さすがに人工のプールでは、そこまで再現することは無理な注文なんだろうけど。いやそれ以前にただの女子高生にすぎないこの私が、ロクなバックアップもなしにエウロパの海を泳いでいると大人たちが知ったら、それこそ腰を抜かすかもしれない。

「レイ、デカブツ1匹。こちらに気づいたみたい」
『了解した。いつもの要領で頼む。でも危険を感じたらすぐに逃げるんだ。いいね、サヤカ』

 ヘルメット一杯にレイのキンキン声が響き渡る。こういう時の彼女は緊張感がダダ漏れだ。もういい加減慣れてもよさそうなもんだが、などと思う。

「おーけーおーけー」

 ここのザリガニは確かにヤバい。正確な学名は思い出せなくて結局そう呼んでる。エビによく似てて、カニみたいなハサミを二つ持ってるから。といっても地球のロブスターレベルのを想像しちゃだめだ。なんせこいつは小さい奴でも優に体調10メートルを超える。それどころか下手をすると15メートル超、ハサミを伸ばすと軽く20メートルに達するヤツまでいるのだから。

 さすがに子どもの頃はもっと小さいんだろうけど、残念ながら遭遇したことはない。おそらく小さいうちは他の生き物の餌食にならないよう、私達にはとても潜れないような深海で息を潜めているのだろう。要するにこんな浅瀬にいるデカブツは、それらのし烈な生存競争を生き延びた歴戦の猛者というわけだ。

 と、HUD(ヘッドアップディスプレイ)にアラート。急速接近する光点が1つ表示される。

「来た来た来たーっ!」
『サヤカ、早くっ。もういいからっ』
「まだまだ遠い、もう少し」

 どういうわけかレイの危機感が募れば募るほど、反対に私は冷静になれるらしい。まるで彼女が私の緊張感や恐怖感を吸い取ってくれてるか。ひょっとして彼女の反応が楽しみなのかもしれない。もしかしてアレか。私ってとんだドS女なのかも。

 それにしても、脅威度A。これは……デカい。しかも予想以上に速い。みるみるうちに私に向かって突進してくる。きっと私の肉体の味でも想像して舌なめずりしてるに違いない。そんな知能があるかどうか知らないが。

「そろそろいいか」

 距離50メートルほどまで迫ったのを見計らい、今までアイドルにしてたウォータードライブのスロットルを全開へ。一気に海面に向かって急浮上する。おそらく可視光では黒い壁にしか見えないはずだが、HUDには直径2メートルほどの小さな穴がくっきりと表示されている。まるで魔法みたいだと場違いな感想が浮かぶ。ある意味それは正しい。もし科学の力がなければ、こんな海では人間ごとき、たった一瞬でも生き延びることなどできないのだから。

「行くよ、レイ。準備はいい?」
『こっちは任せて。だから早くしてってば』

 それにしても、なんてデカさだ。HUDの光点の脇に表示される各種データに軽い戦慄を覚える。体長は30メートル近く、速度も今まで出会ったどんな奴より速い。ちょっとばかし甘く見過ぎたかも。ドライスーツで保温されているはずの背中に寒気を覚える。もしあの巨大なハサミがほんの少しでもかすめたら最期。私などあっという間にエウロパの海の藻屑だ。

 それでもかなり際どいタイミングで、私はウォータードライブごと氷の穴に突っ込んだ。エウロパの重力は地球の5分の1以下。勢い余ってまるでイルカのように海面から漆黒の空へと舞い上がる。地面に、いや正確には氷原に叩きつけられる直前にバーニアを噴射。無事軟着陸に成功した。

 ほぼ同時に背後で地響きを感じ、さらにHUD全体が輝きで溢れる。私自身がエサとなりギリギリまで引き寄せた巨大ザリガニに対して、レイがワイヤーネットを投射し、さらに電撃を加えたのだろう。それは私達が奇蹟的にここにたどり着いて以来、対ザリガニ戦通算12連勝を上げたことを意味していた。

    ◇  ◆  ◇

「お願いだから、もう二度とあんな無茶はしないで」
「ごめんなさいです、悪かったです、反省してます、心の底から」
「本当にちゃんとわかってるのかしら。貴女の言葉には空気ほどの誠意も感じられないのだけど」

 などというやり取りを散々繰り返し、数え切れないほど頭を下げ続けたおかげか、ようやくレイの機嫌も直ったようだった。とはいえ、あと2、3日は発言に気をつけた方がよさそうな感じ。マジで怒ってる時の彼女って、逆に口調がひどく冷たくなるんだよね。まるで氷の刃みたいに。

 でも確かに今回のはかなりヤバかった。私自身かなり焦ったし、ひたすら待つことしかできないレイもかなり肝を冷やしたに違いない。おまけに貴重な原子力電池に高負荷をかけまくる電撃を、3回も繰り返し行わなければなかったくらいだから。

「それにしても今日のは特大ね。ひょっとして1か月くらいもつかな?」
「それはまあ……そうねえ。冗談抜きで、その程度には食べ物に困らないかも」

 そう言ってレイは愛くるしい笑顔を浮かべる。私達が向い合せに座りながら、狭苦しい救命艇の中で舌つづみを打っているのは、無論先ほど仕留めたザリガニから切り取ったお肉。それを彼女が塩釜で茹でてくれたものだ。ちなみに最初の頃は臭くて食べられたものじゃなかったが、彼女があれこれ工夫して臭みを取ってくれたおかげで、今では貴重な食料としておいしく頂いている。

「なんか不思議だよね、こうしてると」
「まあ高校に入学した時、たまたま席が隣あったのからして、縁があったってことなのかもね」

 機械いじりが好きなレイと、バリバリの体育会系の私。私より少し背が低くて、細くて、でも目線が鋭利なナイフみたい。まるで触るだけで血が出そうな感じがした。対する彼女の私の第一印象は、まるで金属バット片手に辺り一面なぎ倒しそうなパワフルなイメージだったとか。旅の最初の夜、お互いのそれを白状しあって、腹の底から爆笑して先生たちに叱られたたっけ。

 普通に生きてたら、おそらく一生接点がなかったはず。それが何の因果か知らないが、たまたま高校で同じクラスになり、適当に割り振られた席の左脇に当たり前のように、まるで精巧な人形のような彼女が座っていた。そして今も当たり前のように、私の側にいてくれる。地球から余裕で6億キロ以上は離れた、このエウロパの片隅でも。

 高校の修学旅行でやって来た船が木星付近で事故を起こし、半ば無理やり押し込まれた救命艇でエウロパに不時着してから、かれこれ半年ほどになる。救難信号はずっと送信してるはずだけど、未だに応答はない。空気と水は原子力電池がある限り、救命艇の循環システムやエウロパの氷(といっても大半はメタンだけど)から調達できる。しかし食料が底をついたときは万事休すかと諦めかけた。そんなある日。

 ──いっそエウロパの海で釣りでもやりますか

 ふとレイが呟いた冗談が思わぬ突破口になったのだ。もちろん救命艇には釣り道具なんて装備されてない。だから釣りは手持ちの材料でなんとかしなければならなかった。散々頭を捻り何度も失敗を重ね、ようやくたどり着いたのがこの方法。スキューバダイビングの経験のある私が自らエサとなりザリガニを海面までおびきよせ、デブリ防御用のワイヤーネットに高電圧をかけて仕留めるという、あまりにも無謀な命がけの狩りだった。

「救助隊は果たして来てくれるのか。救命艇に致命的な故障が発生しないか。そして万一私が狩りに失敗しないか。そんなこと考えたこともあったけど……」
「けど……?」
「まあでも、こういうのもたまにはいいかなあって」
「はあ?  もしかして、ザリガニのはさみにでも頭殴られたんじゃないの、あんた」
「かもしんない」
「まあねえ。サヤカの能天気ぶりは今に始まったことじゃないけどさ」

 悲観的な材料にはこと欠かない、わりと絶望的な状況に私達は置かれている。いつまでこの状態が続くかはわからない。奇蹟的に救助隊がやって来るか、私達の幸運が尽きるか、そのどちらかまで。

 それでもレイの苦笑いを眺めながら、ザリガニの塩茹をおいしくいただいてると、この状況もそう悪くないなどと思ってしまうのだ。もしこのどちらかが欠けていたら、とうてい私には耐えられなかっただろう。

 つまり私はひどく不幸で、それでいて割とラッキーで、その上もう少しこんな日々が続いてくれないかな、なんてことまで考えてしまうのだ。能天気? 上等だよ。くよくよしてたらあっという間に神経が参ってしまう。

「なにをニヤニヤ笑ってるのよ、気持ち悪い」

 ふと気づくと、レイが眉をよせて私を軽く睨み付けている。そんな彼女の表情さえも、ひどく愛おしい。

「食べさせてよ」

 ふと口をついた私の台詞にに「はあ?」とレイが愁眉を寄せる。そうやって不愉快そうな表情を装っていることを私は知っているけど、ここはひたすら我慢。

「だからさ、いつもみたくレイに食べさせてほしいの。お・ね・が・い」

 精いっぱい甘えた声を出してみる。語尾にハートマークでもつけてる感じで。猫なで声っていうのかな、こういうの。

「おねだりが日に日に上手になってる気がするんだけど、なんか」
「そりゃまあ、毎日の事ですし」

 ボンと音を立てたように、今度はレイの頬が朱に染まる。たまらん。たちまち挙動不審に陥るこの反応がたまらん。正直そそる。

「そ……そういう恥ずかしい事、言わないでくれる」
「別にいいじゃん。誰が見てるわけじゃないし。邪魔者も来る気配ないし」
「そゆこと言ってんじゃない。私が恥ずかしいって言ってるの」
「あーん」

 抗議の声を無視して、そっと目をつむり、レイに向かって口を開けて催促する。

「ちょっと、人の話を──」
「あーん」
「人の話を聞けと──」
「あーん」

 盛大なため息が艇内に響く。私の顔にもそれが届き、髪がかすかに揺れる。スプーンが食器にあたる音が聞こえ、それから黙々とレイがザリガニの肉をモグモグしてた。その間私はずっとあーんの姿勢で待ち続ける。そのうち彼女が根負けするのを知っているから。

「行くよ、サヤカ」
「ん……」

 互いの唇と舌が触れ絡む。かつてザリガニの肉だったものが、口の中ににぬめりと押し込まれてくる。貴重な塩とレイの唾で味付けされ、まるでトロトロの離乳食みたいな感触をしばし楽しむ。親鳥が咀嚼した食べ物を貪るひな鳥にも似てるかも。

「んふ……んっ」

 もうレイは抵抗しない。それどころか両手で力任せに私の身体を抱きしめてくる。食器やスプーンが落ちる音が響く気配はない。すでにテーブルの上に置かれていたのだろう。私がおねだりを始めた時点で、こうなることはわかってるわけで。

 そのまま彼女にのしかかられるような態勢で、私達は床へとなだれ込む。幸いクッション加工されてることと、地球の5分の1以下の低重力のおかげで、ほとんど痛みを覚えることはない。でもたとえ普通の重力が働いていたとしても、半ばとろけてる私の脳みそでその衝撃を感知できるかどうか、かなり怪しいものだけど。

 もしかするとレイと私はどこかが壊れてしまったんだろうか。食事も終わらないうちからお互いを求めあい、時に何時間も。とりわけ狩りの日の夜はこんな感じになる。口にこそ出さないけど、何かをしていないと恐怖に押しつぶされてしまう。万が一狩りに失敗すれば、私には確実な死が待ち受けていて、さらに彼女はひとりここに取り残される。その、恐怖に。

「可愛いサヤカ。もっと可愛がってあげるね」

 耳元でささやくレイの息がとても熱い。ヤバい。ゾクゾクする。たまんない。これから彼女にいいようにされてしまう事に期待してる自分がいる。おそらく今回の事故がなければ、一生知らずに終わっていたかもしれない、今にも胸が破裂しそうな高揚感に包まれる。

 それにしても普段おとなしいレイがこういう場面では人が変わる。狂ったように私を求めてくる。最初に狩りを成功させて以来、私達の関係は親友の域を超えてしまった。だけど私はそんな彼女もキラいじゃない。むしろ喜びすら覚えてしまう。彼女が私を文字通り求めてくれるという事実に。

 ──でも実はあのザリガニの肉に、人をエロくさせる成分があるとか……?

 そんな思いが一瞬だけ頭をよぎる。だけどレイの舌で胸先を舐め上げられた瞬間、頭が真っ白になって──そのまま何も考えられなく、なって──。

 (おしまい)
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おもに百合(GL・ガールズラブ)な小説と周辺情報を公開しています。最近はコミPo!でオリジナル百合4コマも。現在は「けいおん!」、「魔法少女まどか☆マギカ」とオリジナル。カプ傾向は澪梓、憂梓、恵和あたり。あと、ほむほむは百合。
このブログはリンクフリーですが、相互リンクはお受けしておりません。ご了承くださいませ。
注:管理人の名称は「あっとあとみっく」が正式ですが、ごくまれに「藍」と名乗ることもあります。

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