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『百合ティアの虐殺』(オリジナル百合SS)

ずいぶんと更新をさぼってたので、たまには何か公開をということでオリジナルのSSなんかを。『百合ティアの虐殺』というお題です。といいつつも、ほとんど百合要素ないんですが。そもそもは、とあるお方のツイッターでの呟きが元ネタです。

『武装した女性軍人が守るゆりゆり女性限定イベントの入り口に何度撃たれても何度倒れても血反吐を撒き散らしながら決してあきらめることなく次から次へと百合男子が目を輝かせて殺到している画像ください』

このリクエストをイベント運営側の視点からSS化してみました。長さは8KB程度で、平日にツイッターで公開したものに対し、大幅に加筆したものです。少し解説が長く感じられるかもしれません。

それでは、お楽しみくださいませっ!




 『百合ティアの虐殺』



 女性限定百合イベント、百合ティア。会場内のひどく華やいだ雰囲気は、今や世界最大とも言われるこのイベントにふさわしい。中には明らかにカップルと思わしき二人連れまでそこかしこを闊歩していたりする。それは普段部下たちに「夜叉」と恐れられている会場警備部隊の指揮官、草薙ユリア少佐の口元でさえ、わずかに緩ませるほどの麗しい光景だった。

 しかしそれとは裏腹に会場周辺は、まだ5月だというのに季節外れの異様な熱気に包まれている。ひっきりなしに羽田や成田と屋上を往復するVTOL機と、その周囲を取り囲み、今にもフェンスを乗り越えかねないほど膨れ上がった、おびただしい人、人、人の群れ。もちろんVTOL機の乗客はイベントに参加する一般の女性客であり、外の群衆は入場を拒否された男達──いわゆる百合男子──である。

「よくもまあこれだけ集まったものですね、草薙少佐。男子禁制のイベントだというのは最初から告知済みだというのに」
「仕方がないわね。百合オンリーのイベントなんてめったに開催されないし。それにちょっと前まで、この平和な国でこれほどの騒ぎが起きるなんて想像もできなかったもの」

 東展示場第1ホールの片隅に設置された警備本部。その真正面のモニタに据えたまま、ユリアは傍らに控えている第1小隊長、芹沢藍中尉に乾いた声で返事する。外の光景を映し出すモニタを一瞥しただけでも、展示場の周囲が見渡す限り人間で覆い尽くされているのは明らかだった。おそらく世界最強と歌われる米海軍特殊部隊であっても、この重包囲を徒歩で突破する事は不可能だろう。

「それにしても女性の百合ファンのためだけのささやかなイベントのはずだったのに、どうしてこんなことになってしまったんでしょうか」
「ここでしか売られない限定本やグッズも多いようだし。おそらく百合男子たちにとっては命をかけても手に入れたいのでしょうね」

 あまりにも素朴な藍の疑問に、小さく溜息を吐きながらユリアが応ずる。

 年々大規模化する百合ティアに強引に侵入しようとする百合男子たちの行動は次第に過激化し、昨年はついに民間警備会社の警備員に重軽傷者が出るほどの混乱となった。このため今年は、有志による警備部隊が会場警備を担当することになったのだ。

 もっともこの簡素な警備本部に詰めているユリアと藍は、表向きこそ有志ということになっているが、実は陸上自衛軍の中央即応集団に属するバリバリの現役だった。それだけでなく士官・下士官にも現役や元現役の軍人が数多く配置されている。だから多少の男性が暴れた程度なら、苦もなく鎮圧できるだろうと思われていた。

 しかしその見込みはあまりにも甘すぎた。事前の告知に加え、先ほどから「このイベントは女性限定となっております。男性の入場は一切できません」との再三の場外放送にもかかわらず、会場周辺の人々は一向に減る気配を見せていない。なかでも特に大量の人間が集結している西展示場の臨時フェンス付近では、外からの圧力に耐え切れず波打つようにうねり続けており、いつ破壊されても不思議はないという有様だった。

「外の連中、ざっと見ても10万人は下らないでしょうね」
「そうね。こうなってしまっては誰にも状況を管制できない。10万人は10万人の原理だけで動く。誰の命令も効果はないわ」

 警備部隊編成の噂をいち早く聞きつけた彼らは、その防御を数を頼んで突破しようと考えたのである。現状の警備部隊の実態は一個大隊にも満たず、しかも半分以上が事実上の寄せ集めにすぎない。さらに現在配置についているのは西展示場の第2小隊、東展示場の第3小隊のあわせても、たった200名ほどである。おまけに彼女たちに与えられている装備といえば、非致死性兵器のゴム弾と電磁警棒だけなのだ。

「いちおう屋上にも10名ほど狙撃チームを配置してありますが」
「指揮官のいない烏合の衆が相手では、あまり効果は期待できないわね、残念ながら」

 もし外の百合男子どもが一斉に乱入してきたら、当然ひとたまりもないだろう。少なくとも連中はそう考えているはず。おそらく一番防御の弱い西展示場から一斉に突入してくるだろう。いや、あえてユリアはそう仕向けた。そもそもフェンスに何一つ対策を施していないのも、その一環である。

「それではいよいよ、例の計画を実行に移すわけですね」
「まだ今はその時期ではないよ、中尉」

 今にも駆けださんばかりの藍を、口の端をわずかに歪めながらユリアがやんわりとたしなめる。それから視線を移し、忙しそうにしているオペレーターの一人に質問を発した。

「エントランスホールの状況はどうか」
「ええと……LR、ADは、すでに運用準備完了。それからAD……Sは……最終調整中、です」

 まだどこかに幼さを残した、ひときわ小柄なオペレーターが、頬を上気させながら慣れない口調で状況を報告する。

 LRADとは、いわゆる音響兵器の一種だ。書類上は長距離音響装置とまるでスピーカーの一種か何かのように記載されているが、その実態は強烈な音で人間を一時的に麻痺させる、暴徒鎮圧用の装備である。すでに各国の軍・警察での運用実績もあり、その効果は実戦で折り紙つきである。

 一方のADSは、電磁波を用いた指向性の高い非致死性兵器というふれこみだった。サブミリ波を利用しており、浴びせられた人間は皮膚に猛烈な痛みを覚えるという。これを持ち込むにあたっても、かなり際どい詐術が用いられた。来場者の持ち込み検査機器の実証試験という名目で、ようやく当局の許可を取り付けたのである。ただし電波法に抵触するため、屋外での使用は認められていない。

 もっとも仮にADSを屋外で運用できたとしても、屋外を取り囲むように集まった人間相手に、どれほどの威力を発揮できるかはかなり疑問がある。そこで設置場所として選ばれたのが東展示場と西展示場の間にあるエントランスホールだった。予想以上の人間が押しかけてきた時に備え、ユリアが各方面に働きかけて、技術者込みで持ち込ませたのだ。

 持つべきものは信頼という名のコネクション。ただそれだけのために、顔も知らない無数の人たちがユリアの、いや百合ティアのために多くの便宜を図ってくれたのだった。

 それらの全員に対して心の中でユリアは感謝をささげる。それから「ありがとう」と言いながら、ねぎらうようにオペレーターの肩を軽く叩く。すると彼女の頬がますます紅潮していった。

 やれやれ、また少佐のファンがひとり誕生かな、などと場違いな考えが藍の頭をかすめ、思わず顔が緩みそうになる。だが、まるでそれを見とがめるように、ユリアの視線が再び藍にそそがれた。

「というわけだ。虎のあぎとを開くのはそれからよ」
「わかりました」

 能面のような表情を浮かべながら藍は首肯した。しかし目にはまだ疑問が浮かんでいる。わずかにユリアに身体を寄せると、まるで睦言でも囁くように小声を発した。

「正直なところ、どれだけやれるとお思いですか」
「わからないわ」

 首を小さく左右に振りながら、ユリアは正直に答えた。

「これだけの騒ぎになった以上、もう当局は百合ティアの開催を認めないでしょうね」

 まるで自分自身に言い聞かせるように、藍が呟く。おそらく今年、いや今日が百合女子の百合女子による百合女子のためのイベント、その終焉の日となるに違いない。そう彼女は確信していた。

「でもだからこそ、今日だけは1分でも長く持ちこたえなければならない。それだけはわかってる」
「充分ですよ、それで」

 ぼそりと藍は呟いた。第1小隊の指揮官でありながら予備隊として拘置された彼女にとって、東1ホールで外部の状況を黙って眺めていることしかできないというのは、事実上の拷問に等しい。ギリッと奥歯を鳴らし、懸命に体内の滾りを抑え込む。その時だった。悲鳴にも似たオペレーターの声が本部に響いたのは。

「西展示場、屋外展示場フェンスを越え敵が侵入っ。推定3000!」
「少佐、このままでは!」
「わかっている」

 緊張した藍の声を耳にしてもなお、ユリアの精神は揺らがなかった。多少タイミングは早まったが、修正不可能というほどではない。外の人数が1万を超した時点で、もともと人数の少なかった西展示場の出展者達には出来る限り東展示場に移動してもらっている。そして限られた時間内で出来る限りのトラップを仕掛けておいた。完全に封鎖するのは無理でも、侵入を遅らせるには十分なはず。そして──。

 一瞬で思考を整理しながら、オペレータの声に大きく首肯したユリアは、開場以来初めてとなる命令を下した。

「作戦通り西展示場は放棄。第2小隊は参加者の安全を確保しつつエントランスホール前まで撤収、時間をかせげ。5分でいい」

 そしてユリアは改めて藍に顔を向けると、人によっては凄惨とさえ表現するであろう笑顔を浮かべながら、薄紅色の唇を開いた。

「行ってくれるわね、藍」
「待ちわびましたっ。目標エントランスホール。第1小隊全員、私に続けっ!」
「了解っ!」

 黄色い歓声が沸き起こり、藍を先頭に100名近い兵士が我先にと駆け出す。のちに史家達が畏敬の念をこめて「百合ティアの虐殺」と呼ぶ激戦が、今まさに始まろうとしていた──。

(おしまい)
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おもに百合(GL・ガールズラブ)な小説と周辺情報を公開しています。最近はコミPo!でオリジナル百合4コマも。現在は「けいおん!」、「魔法少女まどか☆マギカ」とオリジナル。カプ傾向は澪梓、憂梓、恵和あたり。あと、ほむほむは百合。
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注:管理人の名称は「あっとあとみっく」が正式ですが、ごくまれに「藍」と名乗ることもあります。

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