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『メモ帳』(オリジナル百合SS)

オリジナルの百合SSを公開します。『メモ帳』というお題です。

とっても短いです。ほんの6KB程度。図書委員の主人公が、放課後の図書準備室で図書委員長に突き付けられたメモ帳から始まる、ちょっと奇妙な物語、みたいな内容です。

ちなみにこのSSも先日の『デイ・アフター・トゥモロー』と同じく、ただいま絶賛公開中の創作百合合同企画『百合物語』に寄稿したものに対し、いくつかのケアレスミスを修正したものです。ただこちらの方が若干ファンタジック&ホラーチックなので、元の百物語テイストに近いかも。


それでは、お楽しみくださいませっ!


 『メモ帳』



「これは貴女のものよね」

 そう言いながら憧れの委員長が私の眼前に突きつけたのは、小さな黒いメモ帳だった。とっさにスカートのポケットに手をやってしまう。しかしそれ自体が「自分のものです」と白状しているも同然の愚行だ。

 図書委員会の活動が終わり、帰り際に委員長から私だけに残るように命じられた。まるで誘われるように、準備室の一角に置かれていた椅子に座らされた時に感じていた当惑や淡い期待は、その強烈な一撃でどこかへ吹き飛んでしまっている。身体中の血液が音を立てて引いていく。自分の心臓の鼓動が早鐘のように聞こえる。

 ──中を、見られた。

 貴女のものよね、と委員長は言い切った。あの柔らかな笑みこそ絶やさないが、その双眸には絶対の確信が宿っている。図書委員会に入って半年。とても同じ人間とは思えない美しいお姿をお見かけして以来、すっかり魅了されてしまったあの柔和で聡明な委員長。よもやその笑顔が、これほどまでに恐ろしく感じられる日がこようとは。

「これは貴女のものよね」

 委員長が念を押すように再び同じ台詞を繰り返す。もう頭を上げることもできない。ぐわんぐわんという耳鳴りがする。おしまいだ。何もかもおしまいだ。あれを読まれてしまっては、もうどんな言い訳も通用しない。私が委員長をどう想っているか、どこでお姿を見かけたのか、どんな言葉を話されたか、どんな仕草が素敵だったか、そして……どんな風にされたいのか、その全てを書き記してあるのだから。

「そんなに緊張しないで。ね?」

 おとがいにひんやりとしたモノがあてられ、そっと持ち上げられる。あれほどまでに求めた委員長の指の感触によって、こんな状況だというのに全身に電気が流れ、別の意味で動悸が激しくなる。逆らうこともできず上げた顔のすぐ間近で、彼女が一段と柔らかい笑みを浮かべていた。まるで息がかかるほどの距離に。

 ちょ……え、ええっ、何この状況。

 戸惑う暇も与えられなかった。そのまま委員長が私に覆いかぶさってくる。まるで私の妄想の1シーンさながら。

「……んんっ……ふぅ……」

 あまりのショックでしばらく意識が真っ白になっていた。そりゃまったく想像もしてなかったと言えば嘘だけど。むしろ目いっぱい妄想してたけど。だけど……だけど、まさか現実に、しかも憧れの委員長に、こんなシチュでファーストキスを奪われるなんて。

 でもこれは決して夢や妄想なんかじゃない。あまりにも生々しい委員長の感触が唇に残っている。クラクラする。息が苦しい。胸がはち切れそうだ。

 次から次へと襲い掛かる衝撃に耐えきれず、椅子から転げ落ちそうになったところを、委員長に抱きとめられる。私より一回りも二回りも大きく、柔らかい、その身体で。

「嬉しいわ。そんなに悦んでもらえるなんて」

 ──そんな恥ずかしい事、耳元でささやかないでください。
 ──本気で気を失いそうです、委員長。

 身体中が熱い。力が入らず、自分でも情けないくらいぐにゃぐにゃだ。せめて気の利いた台詞ひとつ返すこともできず、私がただ口をパクパクさせていると、委員長はさらに斜め上の行動を起こした。

「もう入ってきていいわよ、皆さん」
「え……っ?」

 それは私に向かってかけられた言葉ではなかった。ほぼ同時に準備室のドアが開かれ、ぞろぞろと見知った人達が入ってくると、私と委員長を取り囲む。とっくに帰ったとばかり思っていた副委員長を始めとして、3年や2年の先輩たちが何人も、それも委員会の中でも飛びきりの綺麗どころばかりである。その上、全員がニコニコと笑顔を浮かべていた。まるでとびきりのスイーツか何かを目の前にしたような笑みを。

「安心して。これは儀式みたいなものだから。何も心配することは無いわ」
「儀式って……何のですか?」

 混乱の頂点に達していた私がかろうじて質問すると、委員長が満面の笑みを湛えながら答えた。今まで見たこともないくらいの、心の底からの喜びの表情だった。想像もできないほどの濃厚な妖艶さを身にまとった彼女の姿は、むしろ委員長というより女王という呼び名の方がふさわしい気がする。

「そうねえ、入会の儀式みたいなもの、かな。大丈夫。合格よ、貴女は」
「あ……あの……」

 しかしそれ以上、疑問を発することはできなかった。不意に先輩の一人に口を塞がれてしまったから。

「んっ……んあ……んんっ」

 それどころか入れ替わり立ち替わり、先輩たちに私の唇がいいように蹂躙されていく。息をつくことさえままならない。それらはあまりにも甘くて、あまりにも激しくて、あまりにも狂おしくて。

「んああっ……んぐぅ……んくううんっっっーーーーーっ!」

 最後の副委員長に至っては舌まで挿れてきた。最初はビックリしたけど、お互いの舌と舌を絡め合わせる心地よさに、たちまち痺れるような心地よさが全身を駆け抜けていく。

「こら、ちょっとやりすぎよ、副委員長」
「すいません、委員長。あんまり可愛いので、つい調子に乗っちゃいました」

 かすかに残る意識の端で、委員長が副委員長のおでこをコツンと叩くのが見えた。ぺろりと舌を出す副委員長の姿には何一つ邪気は感じられない。まるで悪戯を咎められた幼女みたいだ。可愛い、とさえ思う

「はあ……はあ……んはあ……」

 そのまま何本もの手に抱き上げられ、長机のうえに横たえられてしまう。こんなの……初めて。抵抗どころか、もう全身にまるで力が入らない。指一本動かすのもキツい。それなのに身体の芯が歓喜に震えてる。あまりの熱さに全てとろけてしまいそう。

「まだまだこれからよ。たっぷり愛してあげる。あのメモ帳に書かれてたみたいに。いいえ、それ以上の悦楽を与えてあげる。私に永遠の忠誠を誓えばね」

 私の顔をのぞき込みながら委員長が厳かに宣言する。いつの間にか彼女の口元に牙の様な長い歯が見え隠れしていた。そうか。ようやくわかった。最初からそのつもりだったんだ。委員長は、私の事を、仲間に。

 とても同じ人間とは思えない。あの第一印象はある意味、何よりも正鵠を射るものだった。委員長は、そしてみんなは、そもそも人間じゃない、何か別のモノなのだ。

「はい、委員長。私は、貴女に永遠の忠誠を、誓います。だから──」

 だが私はむしろ望んでその一員になろうとしている。ずっと恋焦がれてた委員長に、あれ以上の快楽があると知らされた今、たとえその先にどんな恐ろしい事が待ち受けていようと、もう拒むことなどできるはずない。悪魔のささやき? 知ったことか。

「もうひとつの図書委員会へようこそ、可愛い子猫ちゃん」

 首筋にチクリと痛みが走った。おそらくこれが、人として味わう最後の感覚なのだろう。

 今の出来事も、あのメモ帳に書き留めて、おこ……う──。

 (おしまい)
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おもに百合(GL・ガールズラブ)な小説と周辺情報を公開しています。最近はコミPo!でオリジナル百合4コマも。現在は「けいおん!」、「魔法少女まどか☆マギカ」とオリジナル。カプ傾向は澪梓、憂梓、恵和あたり。あと、ほむほむは百合。
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注:管理人の名称は「あっとあとみっく」が正式ですが、ごくまれに「藍」と名乗ることもあります。

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