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『二十歳の美酒に酔いしれて』(けいおんSS)

けいおんのSSを公開します。
『二十歳の美酒に酔いしれて』というお題です。

視点でな内容です。は大学三年、は二年になってます。
ここの「けいおんSS」シリーズは、2007年(原作の連載開始)に
唯達が高校入学という前提で書かれてまして、
そのため今年では二十歳を迎えてるわけです。
私も歳を取るわけだわ~。(関係ないw)

今回は7KBと短いので、あらすじとかは特に書きません。
いつものようにがイチャラブしてるだけのはずです、多分。

それでは、お楽しみくださいませっ!



 『二十歳の美酒に酔いしれて』



 酒と女と歌を愛さぬものは、生涯愚者である。

    ◇  ◆  ◇

「全員へのありがとうメッセ、返信終了ーっと」
「お疲れさま。人気者は大変だな」
「やだなあ、そんなことないですよー。普通ですよ、普通」

 苦笑いにならないように苦労しながら、私はにねぎらいの言葉をかけた。彼女の部屋の時計はもう午前一時近くを指している。普段ならとっくに眠っているか、さもなければ……まあその、アレだな、うん。

「ナニ赤くなってるんですか、先輩」
「そ、そんなことないぞ。きっとローソクのせいだ、ローソクの」
「そうですかね……まあいいか」

 一瞬不審そうな表情を浮かべたものの、すぐに気を取り直したらしい。とびきりの笑顔でが答えた。

 今年の11月11日は日曜ということで、前日から大学寮の寮監さんに外泊許可をもらい、こうしての実家にお邪魔している。もちろん去年みたいなバカ騒ぎに巻き込まれないためだ。私の家ならまだしも、さすがにの家にまで押しかけるほど律はアホな娘じゃない。普段はおちゃらけてるけど、ああ見えて実は意外なほど世間的常識というものをわきまえている。

 もっとも私が相手の時はその一線も危うくなることがあるけど、他の人の前ではそんなことはめったにない。その辺が唯と決定的に違うところだ。というか、唯みたいな天然に常識を要求する方が間違ってる。それに比べたら、ムギは無茶なことはしない方だけど、あの娘の常識はたまに一般人とかけ離れていることがあるしな。

 そんな3人に対して桜高軽音部の良心とまで言われた、目の前にちょこんと座っている可愛らしい後輩は、さしずめ常識が服を着て歩いているようなものだった。その点は今でも変わらない。大学の、良くも悪くも個性的な連中にさえ、しばしば雷を落としている。とはいえ高校時代に比べたら、ずいぶんと性格的には丸くなったものだけど。

 だが久しぶりに訪れた、お世辞にも女の子らしいとは言えない彼女の部屋には、まだ当時の残り香がわずかに残っていた。懐かしさを覚えながらも、ちょっとだけおかしくなる。そりゃそうだ。彼女が軽音部の新戦力として「放課後ティータイム」に加わったのは、かれこれ5年近くも前の事なんだから。

「あの……そんなに見つめられると、ちょっと恥ずかしいです」
「……え、ああ。ごめん。ちょっと見惚れてた」

 照れ隠しにお世辞めいた事をいうと、ボンという音が聞こえそうな勢いでの顔が紅く染まる。当然のことながらそれは、私達の間に置かれてるバースデーケーキのローソクのせいじゃない。高校で出会ってから5年。さらに親密な関係になってから3年にもなるのだ。さすがにそのあたりは心得てる。

「やめてくださいよぉ。ますます恥ずかしいじゃないですか……」

 そのまま縮こまるように恐縮している。そういう小動物チックな所がみんなに愛されるのだろう。でなければ、ただの口うるさい女として、回りから煙たがられていたはずだ。

「さて、もう零時をすぎたことだし、もこれを飲んでみないか」
「もしかしてそれ、ワイン……ですか?」
「大丈夫、そんなに高いものじゃないから安心しろ」

 一転して青ざめ、わずかに腰を浮かせながら警戒感を露わにする梓に、私は笑顔で答えた。

「それにパッチテストでも特に問題なかったんだろ」
「それはまあ……そうですけど」
「今まで梓はこういうの飲んだことないのか」
「ありませんよ、もちろん。未成年の飲酒は違法です」

 気色ばんで梓が力説する。少々耳が痛い……じゃなくて。

「でも梓も今日で二十歳だしな。他の連中に無理やり飲まされる前に、今のうちに慣れておいた方がいいぞ」
「そりゃまあ、そういう考え方もありますけど……」

 まだ懐疑的な態度を崩そうとしない。いかにも梓らしい抵抗だった。まるで見知らぬ人間と出くわした仔猫みたいだ、などと内心で苦笑する。

「それにお酒だって、節度を守れば楽しいぞ。なんせ人類の文化だしな」
「文化は文化でも、どちらかといえば退廃的なジャンルという気もします」
「それを言ったらロックだって一般人から見ればそういうジャンルじゃないか」
「確かにそういう一面も、あるかもです」

 興味半分だけど不安もある、というところか。じゃあさらにもう一押し。

「ものは試しだ。とにかく一口だけでも、な」

 半ば強引にワイングラスを持たせ、ほんの少しだけ注いでやる。そして自分のグラスにも。

「こうやって香りを楽しんでから、一口軽く含むように」

 お手本になれるほど経験を積んでいるわけじゃないけど、そうやってアドバイスする。すると梓も見よう見まねでワイングラスを傾けた。

「わ、美味しい」

 さらに二口、三口。あっという間にグラスは空になる。

「こんな美味しい飲み物は生まれて初めてです」

 ようやく梓の顔がほころんだ。よかった、どうやら気に入ってもらえたらしい。

「それじゃあ、先輩もどうぞ」
「ああ、いただくよ」

 今度は私のグラスに梓がワインを注いでくれる。高校時代には想像もできなかったな。こうしてお前とお酒を酌み交わす時が来るなんて。ちょっと不思議な気分だ。

 まさかそんな気分が伝染したわけでもないだろうが、何かを期待するような色を目に浮かべながら、梓が口を開いた。

「あの先輩……隣に座ってもいいですか」
「かまわないよ。誰が見てるわけでもないし」

 招きよせると「それでは失礼して」などと言いながら隣にやってきて、まるでしだれかかるように座ってくる。さらに上目づかいで私を見つめながら、さらに意外な事を言い出した。

先輩、私のこと好きですか?」

 真剣な表情を浮かべ、潤んだ黒く大きな瞳に見つめられると、たちまち胸が高鳴る。梓が自分からそんな睦言めいた事を言い出すなんて、せいぜい同衾してる時くらいなのに。これもワインの効果なのだろうか。

「もちろんだよ、梓。私だってお前の事が大好きだ」
「だったら……」

 一瞬だけ顔を伏せ、まるで迷いを振り切るかのように再び頭を上げた。いつの間にか両目の端に光るものを湛えながら、さらに梓は言いつのる。

「高校の卒業の時みたく、もう私のこと、置いて行かないでくださいっ」

 冷水を頭から浴びせられたような気がした。

「梓、お前……」
「置いて行かれるのは……もうイヤなんです。ひとりにされるのは、もうイヤなんですっ。だから、だからっ……!」
「もういいっ!」

 反射的に両手で抱き締める。悲痛な声で訴える梓の姿に、私達4人の卒業式の日、あの泣いていた彼女の記憶が嫌でもだぶってしまう。

 ──卒業、しないでください。
 ──もう部室片づけなくても、お茶ばっかり飲んでても叱らないから。
 ──卒業、しないでよ……。

 まだ引きずっていたのか。誰もが好意をいだいてしまうような笑顔の下に、そんなにも深い傷をひた隠しに隠し続けていたのか。この私にさえ気づかれないように。

 なにが3年の仲だ。ひとり勝手に理解した気になってうぬぼれてただけじゃないか。梓の痛みなんて何もわかっちゃいなかった、ただの大馬鹿野郎だよ。

「大丈夫だから。もうひとりになんかしないから。私がずっといるよ。ずっと側にいるんだからっ!」

 ごめん。悲しい事を思い出させてごめん。そんなつもりじゃなかったんだ。私は、私は。そう言いかけた時だった。

「…………………………ぐう」
「へ……っ?」

 思いがけない梓の反応に面食らう。もしやと顔をのぞき込む。

 まさしくそれは天使の寝顔だった。

「……私のこと、ずっと側に……」

 なんて呟きながら。つまりこれって、もしかして、その。

「酔い潰れた、のか?」

 もう梓は何も答えない。すやすやと規則正しい寝息を立てている。いちおう顔色も悪くないみたいだし、今にも折れそうな細い身体もいつも通り暖かい。どうやら急性の中毒というわけではないようだ。とはいえ油断はできない。アルコールに慣れない人間が急に倒れて頭を打ったり、吐いた物を喉に詰まらせたなんて話は、身の回りでも何度か見聞きしてたから。

 すっかり力が抜けてグニャグニャになっている梓を、起こさないようにそっとベッドに運び、静かに横たえる。その傍らに腰を下ろし、とても二十歳の女性とは思えない可愛らしい寝顔を堪能しながら、私は彼女に伝えたかった事を心の中で呟いていた。



 なあ梓。

 そろそろ本格的に就活が始まるんだ。
 漠然と地元に就職して、一人暮らししようと思ってた。

 でもさっきのやり取りで私の心は決まったよ。
 卒業して引っ越したら、お前もいっしょに住まないか?

 ワンルームにお前と二人じゃ狭いかもしれない。
 もっと真面目に考えてくださいって叱られるかしれない。
 冗談もいい加減にってまともに取り合ってもらえないもしれない。

 だけどさ、知ってるか。
 ひとりが嫌なのはお前だけじゃないんだよ。

 中野梓。
 小さく可愛らしい、私の最強の後輩。

 真面目で、強がりで、でも本当は誰よりも寂しがり屋で。
 こんな弱くてダメな先輩だと知ってもなお、想いを寄せてくれるお前。

 あのお茶会の日の夜、告白メールを送った時に、そう決めたんだ。
 お前が望む限り、ずっと側にいるんだって。

 梓は私の全てだから。
 私の全ては梓に委ねるから。
 高校の時みたく離れ離れなんて。
 とてもじゃないけど私だって耐えられない。

 こちらこそ頼むよ。
 それこそ一生のお願いだから。
 ずっとずっと側に寄り添っていてほしい。
 この情けない先輩を支え続けていてほしい。

 梓といっしょなら、きっと歩いて行けるから。
 何度くじけても、きっと立ち直ってみせるから。

 な、梓──。

 (おしまい)
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おもに百合(GL・ガールズラブ)な小説と周辺情報を公開しています。最近はコミPo!でオリジナル百合4コマも。現在は「けいおん!」、「魔法少女まどか☆マギカ」とオリジナル。カプ傾向は澪梓、憂梓、恵和あたり。あと、ほむほむは百合。
このブログはリンクフリーですが、相互リンクはお受けしておりません。ご了承くださいませ。
注:管理人の名称は「あっとあとみっく」が正式ですが、ごくまれに「藍」と名乗ることもあります。

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