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『寮長失格』(リトバスSS)

今年最後に「リトルバスターズ!」のSSを公開します。
『寮長失格』というお題です。リトバスの学校の女子寮の寮長さんことあーちゃん先輩視点で、お相手はクドこと能美・クドリャフカたん。アニメ第8話でクドがルームメイト募集をするエピソードを、今回はあーちゃん先輩視点でお送りいたします。長さは8KB程度ですので、さらっと読めるのではないかと。

おっとその前に、いちおうリトバスをご存じのない方のために、特別ににキャラ紹介!
まずは今回のSSの主人公、寮長さんことあーちゃん先輩。
(クリックで拡大)
05_achan01.png

続いて能美・クドリャフカたん。通称クドちゃん。
(クリックで拡大)
05_noumi_kudo01.png

そこのリトバスファンの方々!こんな素敵なイラストを無償公開されてるスーパークリエイターmさまのサイト「Traffic Jam」はもう訪問されましたか?もしまだなら今すぐ飛んでいくのですっ!(あ、いちおうここのSSを読んだ後にしていただけると嬉しい、かもw)

ただ私はリトバスのゲームをプレイしたことがないので、イロイロ間違ってるかもしれません。特にクドの口調は独特なので……。どうか広い心でお読みいただければと痛切に願います(ペコペコ

それでは、お楽しみくださいませっ!
そして良いお年を~っ!




 『寮長失格』



 私には寮長の資格がない。

    ◇  ◆  ◇

 能美さんからルームメイトを探していると相談された時は、単なる寮長のお仕事の一環だと軽く考えていた。

「とりあえず能美さんのルームメイト募集の件、掲示板に張っておくわ」
「は、はいっ! ……なんだかドキドキします」

 ため息を抑えるのがやっとだった。かりにも寮長の立場にある者が、うかつに寮生に不安を与えるような態度を見せちゃいけない。両方の人差し指を自分のほっぺに突き立てる能美さんの嬉しそうな姿を、私は複雑な思いで眺めていた。

 彼女はこの春に転入してきたばかり。高校生にしてはかなり低めの身長に、長いプラチナブロンドと碧い目がとても印象的で、それはもう思わず抱きしめたくなるほど可愛らしい。もし寮長という立場でなく、ただの一生徒として彼女と接していたら、実際その場で抱きしめ頭を撫でちゃうだろう。とにかく怖ろしいほどの庇護欲をかき立てられるのだ、この子は。

 それからというもの。

「おはようございます、寮長さん」
「こんにちはです、寮長さん」
「こんばんはです、寮長さんっ!」

 こんな感じで能美さんは、期待に目を輝かせながら私を教室や寮長室へ訪ねてくるようになった。だがそれに対して、私の返事は判で押したように決まっていた。

「ごめんね。まだ申し出てくれる子、いないみたいで」
「そうですか……」

 ずきりと胸が痛む。しゅーんと萎んでとぼとぼ歩き去っていく彼女の後ろ姿を見つめることが、これほどまでに苦痛だとは思いもよらなかった。

「ホントに、ごめん」

 独り言が虚空へと吸い込まれていく。こんな所で呟いても肝心の相手に届くわけもない。いやむしろ、届いてしまってはもっと困るのだけれど。

 そもそも最初の申し出の時にきっぱり断ってしまった方がよかったのだろうか。大体この時期になると、わざわざ部屋替えを申し出る子などめったにいない。何か問題があるとか、相性が合わないとか、そういうのは1学期のうちにほとんど出尽くしている。かといって一人で住んでいる人たちだって、じゃあどうぞ、なんて可能性も低い。一人でいる方が気が楽だとか、そんな理由であえて選んでいるはずだから。

 それらを承知のはずなのに、つい請け合ってしまった自分の甘さが、こうして刃となって跳ね返ってきているのだ。これじゃ寮長失格じゃないか。どこかの誰かに叱責されてるような気分にさえなってくる。

 寮長、か。

 女子寮では誰もが私を寮長と呼ぶ。たまに「あーちゃん先輩」と呼ばれることもあるが、はたしてそれが親愛の表現なのか、それとも単にからかわれてるだけなのかはよくわからない。ともかくこの寮にいる限り、何らかの理由で辞職か免職でもならない限り、私は寮長だ。少なくとも先生方や寮生達にとっては。

 それに苛立ちを覚えるのであれば。
 当たり前なのだと割り切れないのであれば。

 私には寮長の資格がない。

    ◇  ◆  ◇

「わふー♪ おいしいお菓子ですねーこれは。こんなの初めていただきましたっ」
「そんなに喜んでもらえると、こっちもうれしいわ」

 何日か立った頃、ささやかな詫びのつもりで勧めた安物のお煎餅が、能美さんはとても気に入ったらしい。それから彼女は、ルームメイト探しの結果を聞いたあと、何やら物欲しそうな表情を浮かべて見つめるようになった。その姿がまるでお預けをくらってる犬みたいで、またもや私の心はかき乱されてしまう。

 だがそんな能美さんの顔に、ふと影が差したのを私は見逃さなかった。

「どうしたの? 今日のはお口に合わなかったかな」
「いえ、そういうわけではないのです」

 ぶんぶんと両手を広げて降り回し、慌てて否定する。その仕草がまた愛らしい。だが再び彼女の表情が曇る。

「……こういうの憧れてました。私、友達とかあんまりいないもので」
「ウソでしょ。能美さん、とっても可愛らしいのに。多分みんな気後れしてるだけで、友達になりたいって子は多いんじゃないかな」
「小さい頃から転校ばかりしてきたので、どうやってお友達を作ればいいのか、よくわからないのです」

 そう言って能美さんは寂しそうに微笑んだ。

 じゃあ私が、とは口に出せなかった。だって自分は上級生で、寮長だから。友達になるなんて無理な話だ。だけど能美さんもある意味私と同じだと知ってしまった以上、もう後戻りはできない。

 せめて何かできることはないだろうか。
 ルームメイト探しの他に、何か。

 買い物の途中で「これ、能美さん好きかなあ」なんて物色していたりする。
 真夜中のベッドで、いっそ見つからない方がいいなんて考えてる。
 もし期日が来ても見つからなければ、この私が立候補して。
 そして、そして──。

 ふと我に返る。思いっきり自己嫌悪。信じられない。寮長としてあるまじきことまで考えてた。誰が見ているわけでもないのに、頭から布団をかぶり、おそらくゆでダコのようになっているはずの顔を隠す。

 寝ても覚めても彼女の事ばかり。しかもその内容は妄想と呼ぶレベルにまで達している。どうしてだろう。なぜこんなにも胸が痛いのだろう。なぜこんなにも息が苦しいのだろう。わからない。自分の事なのに、まるで自分の事がわからない。

 いや違う。一つだけわかっている事がある。たったひとりの寮生に心を奪われ、うろたえてる様な情けない人間に、寮長という大役が務まるはずがないという事実だ。

 そしてそこから導かれる結論は、もうわかりきっている。

 私には寮長の資格がない。

    ◇  ◆  ◇

「風紀委員長さんがルームメイトになってくれるそうです!」
「そ、そう。よかったわね、それは」

 喜びにはち切れんばかりの能美さんに対して、秘かに落胆する私だった。よりによって最終日にルームメイトが見つかるなんて。ひょっとしたら、なんて半ば本気で考えかけてた。神様もずいぶんと残酷な仕打ちをするじゃない。ルームメイトどころか、彼女との楽しかったお茶のひと時もこれでお仕舞いだ。馬鹿な私。最低。

「ともかくおめでとう。今すぐ必要な書類を作って手続きを済ませるから……」

 台詞が止まってしまったのは、能美さんの顔にいつもの物欲しそうな表情が浮かんでいたからだ。いやでも、まさか。

「どうしたの。まだ何か言いたいことがあるのかしら」
「それがですね……えーと、そのー」

 もじもじもじもじ。なかなか言い出す勇気がないらしい。しかしこれまでの短い付き合いで、こういう時に下手に能美さんを急かすと、かえって口を閉ざしてしまうことを私は知っていた。だから無言で寮長スマイルを張り付け、彼女の次の言葉を辛抱強く待ち続ける。

 しばらくして能美さんが私に視線を合わせる。そしておずおずと口を開いた。

「あの……もし寮長さんさえよければ、これからも時々お菓子を食べに来ていいでしょうか」

 意外な申し入れに意表を突かれてしまい、とっさにどう返事をしていいものか迷う。だがそれも一瞬だ。気を取り直して答える。

「もちろんよ。私もそうしてくれると嬉しいわ、能美さん」

 よしよし、落ち着いて答えられた。当たり障りのない答え。それこそ脈でも調べられない限り、能美さんにも怪しまれることはないはず。ところが不思議な事に、彼女の顔に明らかに当惑の色が浮かんでいた。

「あのもしかしてですが、ひょっとしてですが、ご迷惑なのでは……?」
「そんなことないわよ。どうして」
「だって寮長さん、泣いていらっしゃるのです」

 え──。

 あわてて自分の頬に両手を当てる。左手に暖かい滴が触れた。やだ、どうしよう。なんてみっともない。自分でも気づかないなんて。

「これはね、違うの、違うのよ。目にちょっとゴミが入っただけで……」

 あわてて後ろを向いてごしごしと目をこする。これは一生モノの不覚だ。これ以上能美さんに醜態を晒すなんて無理よ。今にも崩れ落ちそうになる身体を歯を食いしばって耐える。

 どれほどの時間が立ったのだろう。ふと腰のあたりに不思議な感触を覚えた。続いて背中に何か温かいモノが押し付けられる。驚くほどか細い能美さんの身体と両腕に、私はしっかりと抱きとめられていた。

「え……何。どうしたの、能美さん」
「こうすると、とっても安心できるのです。小さい頃は母によくこうしてもらいました」
「……いや、だから私は」
「何も言わないでください。今は何も」

 懸命に半身を捻って振り返ると、彼女の顔が信じられないほど大人びて見えた。まるで聞き分けのない幼子をあやす母親みたい。

「こういうときは、言葉はいらないのです。日本語も、英語も、どんな言葉も」

 ぽつりとそんな事をいう。

「私には寮長さんがなぜ悲しんでるのか、よくわかりません。理由を聞こうとも思いません」

 一呼吸おいて、さらに彼女が言葉を紡ぎだす。

「だけどたまには泣いてもいいのです。だって寮長さんも人間さんなんですから」

 心がゆっくりと融けていく。
 まるで雪解けのように涙がとめどもなく溢れ始める。



 認めよう。
 私には寮長の資格がない。

 だけどもし彼女に寮長ではなく、一人の人間として見てもらえるのなら。

 そんな資格は、もういらない。

 (おしまい)
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おもに百合(GL・ガールズラブ)な小説と周辺情報を公開しています。最近はコミPo!でオリジナル百合4コマも。現在は「けいおん!」、「魔法少女まどか☆マギカ」とオリジナル。カプ傾向は澪梓、憂梓、恵和あたり。あと、ほむほむは百合。
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注:管理人の名称は「あっとあとみっく」が正式ですが、ごくまれに「藍」と名乗ることもあります。

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