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『お茶会のあと、翌日』(けいおんSS)

久しぶりにけいおんのSSを公開します。
『お茶会のあと、翌日』というお題です。
視点でな内容です。

もしかしてお題からピーンと来た方もいらっしゃるかも。以前に公開したSS『お茶会のあと、そして』の翌日のお話になります。長さは8KBほどなので、さらっと読めると思います。

あらすじ的にはですねー、ついにお互いの気持ちを確かめ合ったの翌日、学校で二人が話し合う事とは……という感じです。

それと今回もとある絵師さまの素敵なイラストに背中を押され、ようやく書き上げる事ができました。ちょー感謝ですっ。


それでは、お楽しみくださいませっ!



 『お茶会のあと、翌日』



 誰も知らない明日。
 見たこともない未来。

    ◇  ◆  ◇

「ごめん、今日はお昼ご飯、部室で食べるから」
「そうなんだー。部活なの? めずらしいね、軽音部が昼休みから部活なんて」

 小首を傾げながら、憂が疑問を投げかけてくる。背中に冷や汗が流れる気配を感じながら、それでも私は懸命に平静を装う。心の中で、ごめん、と両手を合わせながら。

「たまにはそういうコトもあるんだって」
「おー怖い怖い。今夜の天気予報はなんだっけ。雪とか降らなきゃイイけど」

 両手で頭を押えながら、純が悪戯っぽい笑顔を浮かべる。もちろん彼女にはこれっぽっちの悪意もないんだけどね。

「そこまでめずらしいかっ……いやまあ、そうかもね。とにかく行ってくる」

 そのままお弁当を片手に教室を飛び出した。もたもたしてたら昼休みなんてあっという間に終わってしまう。できるだけ急いで、だけどなるべく目立たないように、そそくさと廊下を通りぬけ、スキップしそうな気分で中央階段を登る。

 ──昼休みに部室に来て。
 ──二人だけで話したい。

 朝のホームルームが始まる直前だった。簡潔な内容のメールが先輩から届いたのは。とっさに「了解です。」と返事してから、改めて実感が湧いてくる。昨日の出来事は夢でも妄想でもないってコト。

 ヤバい。ヤバいヤバいヤバい。何これちょーヤバい。

 にへら、と緩みそうになる頬をあわてて引き締める。こんな顔を他人に見られたら、それこそ可哀想な人じゃないか。もしクラスメイトにでも知られようものなら、またもやあらぬ噂を立てられるかも。なんとかしていつもの表情を維持しようと唇をかみ締める。そもそも午前中の授業は上の空だったし。後で憂にノート借りようかな。

 あーもー、一秒も早く部室に駆けつけたい。先輩の待っているはずの部室へ。だけどもし、他の軽音部の人達に見つかったりしたら、それはもうめんどくさい事になるのは目に見えてる。ムギ先輩はまだしも、何かと首を突っ込みたがる唯先輩や、妙な所で鋭い律先輩とか。だから用心するに越したことはないのだ。こんな所でつまずくわけにはいかない。

 だってこの階段の行き先に待っているのは。

 誰も知らない明日。
 見たこともない未来。

    ◇  ◆  ◇

「今まで通り……ですか?」
「そう。できる限り今まで通りで、だ」

 だけど部室で私を待ち受けていた先輩の口から飛び出したのは、それこそ想像もしない厳しい言葉だった。あまりの事に我を忘れそうになるのを堪えるのに、それこそなけなしの忍耐力を総動員しなければならなかったくらい。

「そのつまり、昨日のコトはなかったことにしたい。そういうことですか?」
「それは誤解だよ。私の気持ちは昨夜のメールの通り。その点は何のウソもごまかしもない」
「でもそれじゃ、せっかくお互いのキモチを確かめ合ったのに、なのに今まで通りって。ワケがわかりません」
「それはだな……」

 物憂げな視線を先輩が投げかける。口にすべきかどうか、迷っているみたいだった。こういう肝心な時に優柔不断なのがこの人の良くない所だよね。

 ──なんせはああいう性格でしょ。
 ──だから貴女が主導権を握らないと、事態を動かすことはできないわ。

 昨日のお茶会での和先輩の言葉が脳裏に甦る。そうだよ、私がしっかりしなくちゃ。でないと、こんな機会は二度とないかも知れないんだ。

「言いたいことがあるんなら、はっきり言ってください。でないと、とてもじゃないけど納得できないですよっ」

 ほんのわずかだけ語気を強める。自分でもイヤな子だなあと思う。先輩を追い詰めてるみたいで。だけど今回ばかりは本気で納得いかないのだ。たとえこの世で一番大切な人の言葉だとしても。

「……後の事が心配なんだ」
「なんですか、それ。後の事って、いったい何のことですか」
は覚えてるはずだ。去年の学祭の後の騒ぎ。あの『いたしちゃった騒動』を」
「え……」

 『いたしちゃった騒動』──。

 冷たい戦慄が身体中を駆け抜けた。それほどまでに二度と聞きたくない言葉だったから。私と澪先輩が相次いで風邪で休んだことから、もしや私達が一線を越えたのではないかと周り中から邪推されてしまった、あの忌まわしい騒動。

 でも違う。あの時は何もなかった。少なくとも気持ちの上では。

「だけどあの時と今では事情が違う。お互いがお互いの事をどう思ってるか、ちゃんとわかっているはずです。誰に後ろ指さされてもかまいません」
「駄目だよ、そんなことを言っちゃ」
「なんでですか。どうしてダメなんですかっ」

 すっかり頭に血が昇ってしまった私に対して、まるで駄々っ子をあやすような表情を浮かべながら、澪先輩は言葉を重ねていく。

「私はいい。どうせあと半年かそこらで卒業だ。陰で何か言われようが、大したことにはならない。だけどお前は立場が違う」
「何を言っているのかわかりません。立場ってなんですか」
「もし今回の件を周りに知られたら、私がいなくなった後も中傷に晒され続けることになるかも知れない。お前も、お前の大切な友達も」
「そ、それは……」

 ……とてつもなく痛い所を突かれてしまった。私だけでなく憂や純にまで迷惑がかかるかも知れない。そんな簡単な事にも思い至らなかったなんて。つくづく自分の浅はかさがイヤになる。

 それにしても、自分が舞い上がってる間に、澪先輩はそんなコトまで考えてくれてたのか。私だけでなく、憂達のことまで。本当にこの人は……なんて優しいんだろう。そう思ったらなんだか鼻の奥がつーんとしてきた。

「……すいません。どうやらすっかり周りの事が見えなくなってたみたいです」
「少なくとも今週いっぱいは今まで通り、何もなかったかのように振る舞うんだ。いいな」
「わかりました……」

 すっかり意気消沈してしまった私は、だから澪先輩の含みに気づくのが一瞬だけ遅れた。

「あの……今週いっぱいって、どういうことなんでしょう」
「今度の土曜か日曜、は時間取れそうか。これから私達がどういう風な関係を築いていくか、じっくり話し合いたいんだけど」
「絶対取ります、時間。たとえ両親が死んでも取りますっ!」
「おいおい、例え話でも両親死なせるなよ……」

 呆れたような澪先輩の苦笑いに、思わず私も釣り込まれるように笑い出す。

「すいません、調子に乗り過ぎました。大丈夫です、土曜も日曜も空いてます」
「だったら今度の日曜日、の家にお邪魔したいんだけど、いいかな」
「ええ、もちろん……って、ええええええええっ!」
「だ……駄目なのか?」

 今度はあっけに取られた澪先輩が私を見つめてる。でも私は半ばパニックに陥っていた。いろんな考えが頭の中をグルグルと駆け巡り、何をどう切り出せばいいのか見当もつかない。

「駄目じゃないですけど、でもそんな……まだ心の準備が……」
「は……?」
「あ、いや……違うんです。そうじゃなくて」

 あわてて両手を振る。かあっと頬が熱くなる。恥ずかしい。もう死にたい。いったい何を口走ってるんだ。落ち着け自分。私の部屋に来るのは話し合いをするためだろ。

「ええと……大丈夫です。ちゃんと日曜日までには片づけておきますから」
「そんな心配しなくてもいいのに。の部屋にお邪魔するのは今回が初めてじゃないだろ」
「そりゃまあ、そうなんですけど。じゃあ澪先輩は、私が今日これから澪先輩の部屋に行きたいってお願いしたら、即答できるんですか」
「……確かにちょっと、恥ずかしい、かも」

 ついっと目を逸らし、わずかに頬を朱色に染める。よかった。ちゃんと意識してくれてるんだ。ただの後輩とかじゃなくて。

「とにかくそういうわけで、日曜までにはピカピカに磨き上げておきます。なんなら夕飯の用意も……」
「おいおい、何もそこまで力を入れなくてもいいって」

 再び澪先輩が笑う。でも今度はもっと朗らかな笑顔だった。どこかほっとしたような色を浮かべながら、私の頭を左手で軽く撫で始める。

 ああ、そうか。そういうことか。不意にすとんと胸のつかえが取れた。

 不安なのは澪先輩もいっしょだったんだ。今の私達は昨日までとは違う。もうただの先輩と後輩じゃない。だからあんなに持って回った言い方しかできなかったんだ。

「えへへへ」
「なんだよ、気持ち悪いぞお前。何ヘンな笑い方してるんだ」
「そりゃもう、先輩と出会えて、ホントよかったなあって思って」
「……バカ」

 今度こそ瞬間湯沸かし器みたいに、澪先輩の頬が真っ赤に染まった。

    ◇  ◆  ◇

 誰も知らない明日。
 見たこともない未来。

 不安がないと言えばウソになる。
 今日から私達は、ただの先輩と後輩じゃなくなった。

 ではこの関係を、いったいなんと呼べばいいのだろう。
 その答えはまだわからない。

 誰も知らない明日。
 見たこともない未来。

 私にも澪先輩にもわからない道。
 でもただひとつだけわかっているコト。
 この道を歩むのは、一人きりじゃないってコト。

 今日からは二人で手を取り合って歩み出す。

 誰も知らない明日。
 見たこともない未来。

 私にも澪先輩にもわからない道。
 そこを二人でおっかなびっくり歩き出すのだ。

 きっとその先に、幸せという名のゴールがあるのだと信じて。

 必ず──。

『似たもの同士と言われたくて』へつづく)
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Author:あっとあとみっく
おもに百合(GL・ガールズラブ)な小説と周辺情報を公開しています。最近はコミPo!でオリジナル百合4コマも。現在は「けいおん!」、「魔法少女まどか☆マギカ」とオリジナル。カプ傾向は澪梓、憂梓、恵和あたり。あと、ほむほむは百合。
このブログはリンクフリーですが、相互リンクはお受けしておりません。ご了承くださいませ。
注:管理人の名称は「あっとあとみっく」が正式ですが、ごくまれに「藍」と名乗ることもあります。

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