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『似たもの同士と言われたくて』(けいおんSS)

けいおんのSSを公開します。

『似たもの同士と言われたくて』というお題です。
視点でな内容です。

あらすじ的にはですね。

 予備校の帰り道。季節外れの大雨のため、は通りすがりの喫茶店に逃げ込んだ。そこで……。

って感じですか。

時期的には先日のお茶会の少し後、5月~6月くらいです。
拙著『お茶会のあと、そして』というSSの後になりますが、
それほど内容は引きずってないつもりです。

いちおう今回の話だけでもOKなように書いたつもりではあるんですけどねー。

なお、が予備校に通ってるのは独自設定です。
ふたりが予備校通いをはじめた訳も、
頭の中にはあるんですが、
まだお話として固まってないんです。
これもそのうち書きたいですねー。

それと自分でも、だんだんSSの時系列がわかんなくなってきちゃったので、
そろそろ一度整理したほうがいいかなー。

まあ、書きやすい順にSSを書き散らしてきたのが悪いんですが(笑)

それでは、お楽しみくださいませっ!


『お茶会のあと、そして』から)



 『似たもの同士と言われたくて』



 ──「しっかしメガネ取ってると、あんた達ふたり、見分けつかないわねー」
 ── 目を細め眉をよせながら、山中先生は呆れ果てたようにつぶやいた。
                    (「けいおん!」#10「また合宿!」より)

    ◇  ◆  ◇

 漆黒の闇から、まるで滝みたく雨が降り注そぎ、生暖かい風が私の頬をなでて行く。季節外れの雨──っていうより、これはもう嵐と呼んでいいレベル。

「まだ梅雨も始まったばかりなのに。これじゃ夏が思いやられる」
「噂のゲリラ豪雨とか言うヤツでしょうか」
「今朝の天気予報は『一日晴れるでしょう』だったのにな」
「おかげで折りたたみのカサも持ってませんよ」

 いかにも困ったなあ、という声音を混ぜておく。いや実際、半分事実だし。でも残り半分はウソ。だってこうして先輩とふたりきりで肩を寄せ合うように雨やどりできるんだから、不満なんかあるはずない。

「なあ。ここ、喫茶店みたいだな」
「そうみたいですね」
「しばらく止みそうにないし、せっかくだからここで少しお茶しないか」
「賛成です」

 よし、計画通りっ。そしてごめんなさい、先輩。

 突然の雨はともかく、このテラスで雨やどりしようって言ったのは、その場の思い付きじゃない。この喫茶店は避難場所としての条件にもってこいだったから。そしていつか、先輩とふたりだけで来たいなって思ってたから。

 ほんと、予備校からの帰り道を入念にチェックしておいてよかった。それと店の情報を教えてくれた純にも、あとで何かお礼しとかなきゃね。

    ◇  ◆  ◇

 幸いなことに、店内には小さな女の子を連れた母親らしい客が一組いるだけだった。この大雨では、新たに客がやって来ることもなさそう。そういうわけで、私たちは外がよく見える窓際の四人がけの席を確保することにした。そこなら雨が降っているかどうかも、街頭の明かりで見えそうだった。

「予備校は大変?」

 ウエイトレスさんが運んできたアイスティーにガムシロップを入れようとしていたら、先輩がそんなことを聞いてきた。

「わりとキツいですね。でも自分ひとりで勉強するのよりは、効率いいかもです」
「弱点もわかるし、周りにやる気のある人間がいると、それだけでも違うしな」
「はい。先輩に紹介してもらって、ほんとよかったです」
「そう言ってもらえると、私も嬉しいよ」

 アイスティーのストローをくわえた先輩が、目を細めて上機嫌そうに笑った。誘いに乗ったのは、こうして予備校の帰りにふたりきりの時間をすごせるようになれるかも、という甘い期待があったから。それは否定しない。だけど。

「私たちみたいな普通の人間が上を目指そうとしたら、毎日コツコツ努力するしかないんだ」
「そう思います、私も」

 そういう先輩のところに。
 ひたむきに努力をするところに。
 私は惹かれてしまったんだ、きっと。

 先輩と私には、わりと似てるところがある。

 髪の長さだとか、顔立ちとか、価値観だとか。
 もちろん違うところもあるけどね。たとえば、ほら、胸の……大きさとか。

 でもそんなのは小さなことだよ。

 尊敬する先輩で、一番大切な人だから。

 そんな人に似てるって言われただけで。
 少しだけ近づけたような気がする。

「……ずさ、
「え、は、はいっ」

 意識を戻すと、私の目の前で先輩が心配そうに私のことを見つめていた。

「ほら、ブルーベリーパフェ来たよ。先に食べていいから」
「えっ。いいんですか?」
「だって食べたかったんだろ、これ」

 先輩と、ですよ。

「でもなんか悪いです。半分お金出してもらった上に、後輩の私から先に手をつけるなんて」
「そんなこと気にしなくてもいいから」

 ごめんなさい先輩。それも半分ウソ。ひとり一個パフェを食べようって誘ったら、きっと先輩は太るのが心配で、断るに違いないって思ったから。

「ほらほら」

 柔らかな笑顔を見ると、ますます心の中の罪悪感が膨らんでいく。

 お金が足りないってことにして、はんぶんこしようってことにすれば、必ず先輩は乗ってくれるって思った。だって先輩にもここのパフェ、味わってもらいたかったから。

 全て計画通りに進んでいるはずなのに、私の気分はいまひとつ晴れない。

「ほら、早く食べないと溶けるぞ」

 その一言で、ようやく迷いが消えた。

「それじゃあ、失礼して……」

 細長いパフェ専用のスプーンを手に取り、一口ぱくりとやってみた。

 たちまち口の中にひんやりとした甘みが広がっていく。

「んーーっ」

 これはおいしい。やみつきになりそう。さすがは純のイチオシ。いろいろヘンなところもあるけど、食べ物の感覚だけは確かだからな、あの子は。

「それにしてもほんと、大丈夫なのか? さっきは本気で心配したぞ」
「すいません、なんかぼーっとしてて」
「疲れてるんじゃないか。頑張りすぎてもよくないし。たまには息抜きも、な」
「今みたく、ですか」
「そうそう。もしに何かあったら私が泣くぞ」

 さっきのよりもさらに明るい笑顔を浮かべながら、先輩はうなずいてくれた。

 ──とくん。

 胸が高鳴ったのをごまかすために、あわててパフェを二口三口と放り込んだ。たちまち頭の後ろがキーンとなり、思わず顔をしかめてしまう。

「おいおい、子どもじゃないんだから」
「す、すいません」

 おちつけ私。こんなことくらいでドキドキしてどうする。ええと。

「あの、これ、ホントおいしいですよ。特にこのシャーベット風味のブルーベリーなんか」
「へえ、どれどれ」

 興味津々という感じで、先輩が身を乗り出してくる。

「じゃあこれ、どうぞ」

 パフェの中から藍色のつぶをひとつ選び、スプーンにのせて澪先輩に手渡す。

 ぱくっ。

 ふるっと先輩の身体が震えて。

「……あ、おいしい」
「ですよねー。よかった。もっと食べます?」
「うん。でも、これじゃちょっと遠いな。隣に座っていいか?」

 ──とっくん。

 え……。
 ええええーーーっ!

 頭の中が。
 もう真っ白。

 ──とくとくとくとくとくとく。

 心臓が暴れまわってる。
 そのまま口から飛び出しそう。

「あ、やっぱ、だめかな」
「そんなことないです。ど、どうぞ」

 ど、どどど、どうしよう。こんなことまで計画立ててないよ。

 いやいや、待ってよ私。いつも部室では澪先輩のそばに座ってるのに。なんで今さらこんなに動揺してんのよ。わけわかんないよ。

 私がパニック寸前なのに気づいてないのか、澪先輩は嬉々として私の隣の席に座ってきた。今まで気づかなかった甘い香りが微かに漂ってくる。先輩の、香りが。

 このパフェにはいろいろなベリーが入っているらしい。たとえばブルーベリーとか。酸味の強いラズベリーとか。とろけそうに甘いストロベリーとか。ホイップクリームとアイスクリームのセッションもすんごいらしい。

 でももう私には、せっかくのパフェを味わう余裕なんかカケラもない。必死に平静を装いながら、機械みたくスプーンを往復させるのが精一杯だった。

    ◇  ◆  ◇

 そんな嬉し恥ずかし拷問タイムがえんえんと続き、ようやくパフェの入れ物の底が見えそうになってきた頃だった。

 何かが床をころがってきて、私の足にこつんとあたった。それを追いかけるように、小さな女の子がてとてと、と歩いてくるのが見えた。

「これを探してるのかな」

 先輩がそれに気づき、拾い上げて手渡す。

「はい、どうぞ」
「ありがとー」

 にっこりと笑う。まるで天使のように可愛らしい。

 それからその子はお母さんらしい人のところに戻ろうとして、ふと何か思い出したように、私たちの方に振り返る。

「おねえちゃんたち、なかよしさんだねっ」

 そう言い残すと、再びてとてと、と歩き去っていった。

 それは百パーセント純粋な好意だったはず。だけど今の私たちにとっては、とんでもない爆弾発言だった。

 耳元で、かあああっ、という音が聞こえたような気がする。見ると澪先輩の顔が青森リンゴみたくなっていた。

「あ、。何、紅くなってるんだよ」
「先輩……だって」
「やっぱ、他人からは、そう……見えるのかな」
「た、ぶん」

 今の私たちはふたり仲良く並んで頬を紅くしてうつむいてる状態。そして私のボキャブラリーの仲にに、そんなふたりを表現する言葉は、たった一つしかない。

 『ら・ぶ・ら・ぶ』。

 やばっ、ますます顔が熱くなってしまう。それどころか、なんかクラクラしてきたし。あわてて半ば氷の溶けてしまった水を、ぐーっと一息で飲み干してみたけど、とてもそのくらいじゃおさまりそうにない。

 すっごく恥ずかしかった。
 すっごく嬉しかった。

 そして少しだけ、泣きそうになった。

    ◇  ◆  ◇

 幸せなの。
 見つめあうだけで。

 うれしいの。
 声を聞くだけで。

 舞い上がるの。
 ほめられちゃうと。

 大気圏外まで飛べそうなの。
 似てるって言ってもらえると。

 だってその人は。

 いちばん努力してる人だから。
 いちばん大切な人だから。

(つづく)
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おもに百合(GL・ガールズラブ)な小説と周辺情報を公開しています。最近はコミPo!でオリジナル百合4コマも。現在は「けいおん!」、「魔法少女まどか☆マギカ」とオリジナル。カプ傾向は澪梓、憂梓、恵和あたり。あと、ほむほむは百合。
このブログはリンクフリーですが、相互リンクはお受けしておりません。ご了承くださいませ。
注:管理人の名称は「あっとあとみっく」が正式ですが、ごくまれに「藍」と名乗ることもあります。

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