久々に「けいおん!」の百合妄想SSを公開します。
『ふたつの秘密』というお題です。
梓視点で
澪梓な内容です。
例によってツイッターのフォロアーさんの描いた
澪梓イラストを元に書かせていただきました。長さは4KBほどの短さなので、さらりと読めると思います。
あらすじは、メジャーデビューしちゃった
澪梓のある日の1シーン…という完璧妄想。ご注意くださいw
それでは、お楽しみくださいませっ!
『ふたつの秘密』
私と
澪先輩はふたつの秘密を共有してる。
◇ ◆ ◇
久しぶりのオフの朝は快晴と呼んでいいくらいの好天だった。まるで人間の洪水みたいな歩道をかき分けるように、私と
澪先輩は並んで歩いていく。はぐれないように手をしっかりと繋いで。
「……なあ
梓、大丈夫かな。目立ってないかな」
「むしろこういう時は『当然』って態度でいた方がいいんです」
おどおどしてる
澪先輩を小声で励ます。とはいえ自分でもそれは気休めに近いなと思う。濃いめのサングラスをかけてはいるものの、高校時代からほとんど変わってない艶やかなロングヘアと、最近一段とお育ちになった胸元は、いくらゆったりしたシャツを着ても隠しようがない。テレビやネットですっかり有名人になってしまった先輩が、周囲から注目を浴びてしまうのではないかと恐れをいだくのも、いささか無理からぬところではある。
その点、私はいくらか有利だった。普段メディアに露出してる時はポニーテールかツインテールだから、髪を下ろして太めのフレームの眼鏡をかけ、ついでに古着屋で見つけたジャケットとキュロットを身にまとってしまえば、まず正体がバレることはない。たまに女子高生に間違われるのが癪に障るが、似たようなヘアスタイルで一回り背の高い
澪先輩といっしょに歩いていれば、こちらが妹に見えるんだろう、と半ば諦めてる。
「ほら、誰にもバレてないじゃないですか」
「……そうみたい、ダナ……」
ほんの少しだけ握っていた手の力が緩むのを感じる。こういうシャイな性格は相変わらずだ。だからこそ私がついてないと、今やおちおち外出もできない有様である。有名人というのは大なり小なりこういうものだろうと思ってはいたが、いざ自分がその立場に立たされると気苦労は耐えることがない。
私が大学を卒業すると同時に、HTTがメジャーデビューしてから、かれこれ1年になる。CDの売り上げやダウンロード件数は、新曲を発表するたびに記録的な数字を叩き出し、今ではあのAKB唯一のライバルと言われるまでの有名人となってしまった。
唯先輩や律先輩、そして純はああいう性格だから、むしろ今の状況を楽しんでるみたい。ムギ先輩も普段は人当たりが柔らかいし、いざとなれば専属のボディーガードもついてる。憂もああ見えて芯はしっかりしてるからまず心配はない。問題はHTTの歌姫であり、美の女神に愛された声と姿を与えられながら、まるっきりヘタれな
澪先輩の存在だった。
──誰か……誰か助けてぇ~!
うっかりサングラスを忘れて出歩いてしまい、ファンの人達にサインや写真をねだられ、半泣きて助けを求める
澪先輩の姿は今でも忘れられない。全身の血が逆流するほどの怒りにかられ、人垣をかき分け彼女を救い出す私の姿は、ものの30分と立たないうちにネットにアップされてしまった。そのおかげで、しばらくの間は私のファーストネームである
梓と、インドの戦神アシュラを引っかけて「阿修羅降臨」などと揶揄されたものだ。
そちらのインパクトがあまりに強かったおかげで、なぜ私が澪先輩の部屋から出て来たのかという疑問は、ほとんど話題にならなかった。私達が恋人同士だという事実は、HTTのメンバーを除けば事務所でも極一部の人間しか知らない、事実上のトップシークレットである。仮に同居がバレたとしても『高校時代の先輩後輩がルームシェアしてるだけ』で押し通すことになっている。
だってもしこの関係が公けになれば、それこそとんでもない騒ぎになるに違いない。それによってもっとも傷つくのは、ほかならぬ澪先輩その人だ。それだけは絶対に、何があっても避けなければならない最悪の事態だった。
「澪先輩の事は、私が絶対守り通しますから」
「ごめん。無様な先輩で……」
「気にしないでください。もう慣れました」
私と澪先輩はふたつの秘密を共有してる。
私達がHTTのメンバーであること。
私達が同性愛者であり、同棲までしていること。
決して明らかにされてはならない秘密をかかえ、お互いの手と手を取って人混みに紛れて歩くことが、最近ではむしろ楽しみにさえなっている。誰にも言えない事、二人だけの秘密の存在が、むしろ私達の結ぶ付きを強めているようにさえに感じられるから。
いつまで続くかはわからない。
いつかは壊れてしまうかもしれない。
だけどその危うさに心地よさすら感じる私は、多分、きっとそう。
澪先輩の底知れぬ魅力に、間違いなく、心の底から酔いしれてるのだ。
(おしまい)
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