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『残念な女神と天使に幸いあれ』(オリジナル百合SS)

久しぶりにオリジナルの百合SSを公開します。
『残念な女神と天使に幸いあれ』というお題です。先週、ツイッターで公開したものに、さらに加筆修正したものです。

例によってすばらしいインスピを与えてくれる絵師様のイラストから書き起こしてみました。学生x社会人という私の無茶リクエストに見事答えてくださった絵師様に百万の感謝を。

ところで今回のSSは社会人ちゃんと学生ちゃんの交互視点という、ちょっと変わった構成にしてみました。長さは9KBほどですが、視点が頻繁にかわるので、1~2KB程の超短編の連作モノととらえると、そう長くはない…かも。(三人称で書けばいいのにというツッコミは、できればお許しを(汗))

あらすじは、

毎日電車で顔をあわせる社会人ちゃんと学生ちゃんは、お互いが気になっていることにも気づいていなかった。ところがある日、学生ちゃんがエスカレーターで携帯電話を落としてしまい……

という感じです。

ちなみに今回のSSでは、登場人物達に名前を設定してません。もし自分の境遇に近いなあと思われたら、自由に自分の名前で読みかえていただいても全然おっけーですよ?w


それでは、お楽しみくださいませっ!





 『残念な女神と天使に幸いあれ』



 その子の存在は以前から知っていた。

 今や絶滅危惧種とまで言われるセーラー服に身を包んだとても初々しい少女だった。次第に背が伸び、おそらく校則に許されるギリギリの範囲のアクセを身に付け、少しずつスカートの丈が短くなっていったけど、それさえもがむしろ微笑ましいと感じられる。直視できないほどの眩いオーラを放ち、元気いっぱいに女性専用車に乗り込む姿を横目で眺めることが、いつしか日課になっていた。

 同じ駅から同じ時間に女性専用車に乗り、都心の同じ駅で降りる。少女は学校へと続く階段を、私はオフィス街へと続くエスカレーターを登っていく。ただそれだけの毎日だった。来る日も来る日も、飽きることなく。気がついたらもう何年も同じことを繰り返してた。

 だけど異変は唐突にやってくるものらしい。

 帰りの電車を降り、いつものようにホームへの登りエスカレーターに乗って改札口を目指していた私の足元に、何か固いものがぶつかる感触を覚えた。何だろう。いぶかりながら視線を落とす。

 ──携帯電話……?

 どうやら前の人が落としたものが、どういう具合かそのまま滑り落ちて来たらしい。それを拾い上げてからエスカレーターの進行方向を見上げると、あの少女の困ったような顔が目に入った。行きで出会うのは日常だったが、帰りで出会った記憶はない。

 エスカレーターの出口で待っていた少女に対し、私は携帯電話を手渡しながら残念な事実を伝える。

「本体は無事みたいだけど、裏側に大きなヒビがはいってるわ」

 少女の目が一瞬だけ大きく見開かれ、すぐに伏せられる。小さな両肩が小刻みに震えだす。

「どうしよう、お母さんに……申し訳ない」

 がっくりと肩を落とし、沈み込んでいる少女の姿が、あまりにも痛々しげだったのもある。だがそれ以上に私の心を揺さぶったのは、彼女の「お母さんに申し訳ない」という言葉だった。自分の失敗を責められることより、おそらくは少なからず苦労して手に入れたであろうと思われる人を気遣っている。そのシンプルな事実が私のためらいを瞬時に吹き飛ばした。

「貴女、今から少しだけ、時間取れるかしら」

 今にして思えば、これが始まりだったのだろう──。

    ◇  ◆  ◇

 その人の存在は以前から知っていた。

 いつも黒のスーツとセミロングの髪というスタイルで、やや大きめの黒縁メガネをかけて、大きくてパンパンに膨らんだビジネストートをぶら下げてる。ひと言でいうと美人というより真面目系の社会人って感じかな。ただ時々、難しそうな顔でタブレット端末を眺めてるのが、ちょっとイイなあ、なーんて思ったりして。

 同じ駅から同じ時間に女性専用車に乗り、都心の同じ駅で降りる。彼女はオフィス街へと続くエスカレーターを、私は学校へと続く階段を登っていく。ただそれだけの毎日だった。来る日も来る日も、飽きることなく。気がついたらもう何年も同じことを繰り返してた。

 だけど異変は唐突にやってくるものらしい。

 帰りの電車を降り、いつものようにホームへの登りエスカレーターに乗って改札口を目指しながら、機種変したばかりのスマホを取り出そうとした。ところが次の瞬間、スマホは私の指をするりとかわして、足元へとダイブする。

「あっ!」

 とっさに手を伸ばしたけど、もちろん間に合うわけがない。ガシャッと嫌な音を立てると、なんの冗談なのか、まるで滑るように下へ下へと落ちていく。その光景を私はただ呆然と見つめる事しかできなかった。

 やがてスマホは女性の足元で止まった。彼女が拾い上ると、一瞬遅れて顔を上げ、目が合った。行きで出会うのは日常だったが、帰りで出会った記憶はない。

 エスカレーターの出口で待ってると、彼女は携帯電話を手渡しながら残念な事実を告げた。

「本体は無事みたいだけど、裏側に大きなヒビがはいってるわ」

 目の前が暗くなる。看護師をしてるお母さんが夜勤を増やして、ようやく買ってくれた大切なスマホなのに、とんでもないコトになってしまった。しかも私の不注意で。

「どうしよう、お母さんに……申し訳ない」

 頭の中でいろんな光景がぐるぐると渦巻く。ロクに考えることもできない。情けなくて涙が出る。ごめんなさい、お母さん。ごめんなさい。

 その時だった。目の前の彼女が思いもかけない言葉を口にしたのは。

「貴女、今から少しだけ、時間取れるかしら」

 今にして思えば、これが始まりだったのだろう──。

    ◇  ◆  ◇

 アパートの自室のドアを開けると、闇を切り裂くような眩い光に一瞬視界を奪われる。でも耳と鼻は敏感に気配を感じ取った。ご機嫌そうな彼女の鼻歌と、食欲をそそる香ばしい香りに。

「ただいまー」

 よっとと。バッグを玄関に置き、ふらつきながらパンプスを脱ぎ捨てようとしてると、キッチンから返事があった。

「あ、おかえりー。早かったじゃん」

 換気扇の轟音が響いていても、彼女の声はとてもよく通る。なんでも昔バスケだかバレーだかをやってたとかで、大声を出すのは慣れてるのだとか。帰宅部出身の私にとっては想像するのも難しい世界で、彼女は生きているのだなと改めて思う。社会人と学生、普通の人間と優秀な人間、年齢も属してる世界もまるで違う私達を結びつけるきっかけとなったのが、あの夜の事件だった。

 すでに近所の携帯ショップは閉まっていたので、なんとか自力で修理できないものかとあれこれ考えた。とはいえ自分はあくまで平凡な人間に過ぎない。幸いだったのは、頼りになるネットの友人達が力を貸してくれたこと。アドバイスにしたがい駅前の百円ショップで接着剤を買い込み、それでヒビをくっつけ、同時に入手した携帯電話のソフトケースにはめ込む。おかげで見た目はともかく、使う分には支障がない状態にまで仕上げる事ができたのだった。

「何、また来たの」
「うん。そろそろ掃除しないと」

 ただアレだけはつくづく失敗だったと思う。ここの管理人さんに出くわした時、とっさに「姪っ子です」と紹介してしまったのをいいことに、彼女はちょくちょく私が帰る前にこうして部屋に上がり込むようになってしまった。人のいい管理人さんは「また遊びに来ちゃいましたー」なんて彼女に何一つ疑う事もなく、「あらあら」と笑いながら鍵を貸してしまうのである。かといって今さら「あの子は赤の他人なんでやめてください」なんて言えるはずもなく。

 本当に困る。もし私が男だったら、青少年なんとか法だか条例だかの違反で、たちまち警察に通報されてもおかしくない状況だ。

「そうね。ありがとうね」

 もっともその一方で、助かってるのもまた事実だった。だからありがとうという言葉自体にウソはない。会社で朝から晩まで働いて、その後さらに自宅で完璧に家事をこなす一人暮らしの女性なんてそうそういるわけないだろう。もし実在すると言うなら、それはよほどのスーパーレイディか、さもなきゃ都市伝説の類に違いない。

「そ、それに……」

 食卓に皿を並べ始めた彼女が、ふと口ごもる。

「何だか逢いたくなって……」

 そっぽを向いていても、頬が上気してるのがモロわかりだ。やれやれ、まったく反則だよね、この可愛さは。毎日ただ横目で眺めてた頃には想像もしなかった甘えっ子だと知ってしまっても、思わず頭撫でたくなる天使ちゃんですよ。

 この駄目なおねーさんとしては、ね──。

    ◇  ◆  ◇

「そ、そうね……」

 やだもー、赤くなっちゃって。たまんないわこの反応。大人のクセに超カワイイんですけど。こうなったらもっと困らせちゃうんだから。着替えようと背中を向けた彼女にぎゅーっと抱きついてしまう。

「泊まってっていー?」
「……明日も仕事あるから変なことしないでね?」
「んー。わかんない」

 心の中で舌を出す。うふふ、困ってる困ってる。普通ならこの時点で叩き出されてもおかしくないのに、それができないのが弱いっていうか、優しいっていうか。もちろん、何かの拍子で逆鱗に触れたら、こっちも必死で泣いて謝るけどね。

「首だけはよしてよ?」
「わかったー」

 そういや寝てる間にキスマークつけちゃって怒られたこともあったっけ。でもまあ、渋々だけど、事実上の了承を取り付けた。これで今夜も彼女と一緒。つーか独り占め、みたいな。えへ。

 もしあの時、スマホを落とさなかったら。それが彼女の足元を通り過ぎてたら。いったいどうなっていたかなんて、もう想像もしたくない。あのスマホが今も無事に使えている理由はもちろんひとつだけ。彼女が救いの手を差し伸べてくれたからだ。

 あーゆー性格だから「お友達のおかげだよ」なんて言うけど、絶対そんなことない。全部彼女のおかげ。仮にお友達が手助けしてくれたとしても、そのきっかけになったのは間違いなく彼女のひと言。でもって、そういうお友達が彼女の身の回りにたくさんいる理由も、こうして過ごすようになってからよくわかるし。

 すごく優しくて気が利いて、それでいて肝心な所はビシッと締める。もっとも政治とか経済とか、そういうのは正直よくわからないけど、熱っぽい表情で語る彼女の姿を見ているだけで、どーゆーわけかこっちまで元気が出てくるの。なんかとっても不思議なんだよね。

 こういうのを『カリスマ』っていうのかな。いや、どっちかってゆーと女神さまか、私にとっては。

 だからこそ、できるだけ時間をさいて、少しでも恩返ししたいって思ってる。実は家事というもの全般が壊滅的という、とても意外な一面を持つ女神さまに代わって、料理に掃除、洗濯全般を引き受けてるのもそのひとつだけど。

 それにしても電車で見かけてた頃は、マジメでカンペキで、もーなんでもできそうって思ってたのになー。見かけだけで判断しちゃダメって典型だよね。正直ちょーっとゲンメツしたこともあったけど、でもよく考えてみると、これってむしろ恩返しのチャンスじゃん、みたいな。

「ちょっとー。着替えられないわ」
「いーじゃーん」

 それにしてもホント落ち着くわ、この抱き心地。なんでだろう。よくわかんない。お母さんというには歳が近いし、姉にしては歳が離れてる。友達っていうのともちょっと違うし。……もしかして恋人……はさすがにないか。まあちょっと残念だけど私の大切な女神さま。それで充分だよ、うん。

 だから、今はもう少しだけ……甘えさせて、ね──。

 (おしまい)
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おもに百合(GL・ガールズラブ)な小説と周辺情報を公開しています。最近はコミPo!でオリジナル百合4コマも。現在は「けいおん!」、「魔法少女まどか☆マギカ」とオリジナル。カプ傾向は澪梓、憂梓、恵和あたり。あと、ほむほむは百合。
このブログはリンクフリーですが、相互リンクはお受けしておりません。ご了承くださいませ。
注:管理人の名称は「あっとあとみっく」が正式ですが、ごくまれに「藍」と名乗ることもあります。

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