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『戦艦榛名の生涯』(艦これSS)

『艦隊これくしょん~艦これ~』のSSを公開します。
『戦艦榛名の生涯』というお題です。

まず『艦隊これくしょん~艦これ~』って何?という方も多いでしょう。これはオンラインの艦隊育成シミュレーションゲームで、最近ごく一部で熱狂的な支持を集めているゲームです。かくいう私もその一人でして、ここ一週間ほどはこれにかなり入れ込んでました。もうゲームは人生壊すんで手を出すまい、と思っていたのですが…(滝汗。

数ある育成系ゲームの中でも、萌え娘化した戦闘艦艇を育てるというのは、おそらく世界で初めてなんじゃないかと思います。百人以上の武装擬人化美少女・美女キャラがひしめき合ってるわけでして、そこら辺が私の心の琴線に触れたといいますか。しかも無課金でもそれなりに遊べるし…。

とまあ、このままずーっと言い訳しててもしょうがないので、今回はその中でも戦艦「榛名」の初参戦に的を絞ったSSをお送りいたします。6KB程度なのですが、いつもより漢字や専門用語大目なので少し読みにくいかもしれません。ごめんなさい。


それでは、お楽しみくださいませっ!



 『戦艦榛名の生涯』



 ──私はどこから来て、どこへ行くのか。私は何者なのか。

    ◇  ◆  ◇

 汗ばむような夏空が眼に眩しい。12ノットで進む私達の頬を海風が叩く。初夏を思わせる気温と湿度の中、潮の香りが不思議な郷愁を誘う。帰って来たという想いが胸を熱く焦がす。

「大丈夫ですか、榛名さん」

 何か不安を感じ取ったのだろうか。先行していた吹雪さん達が近寄ってきて声を掛けてくれる。私は軽く首を傾げながら苦労して笑みを浮かべ、彼女の心遣いに答えた。

「ええ、何の問題もないわ。久しぶりの海の感触を楽しんでいただけだから」
「そうですか。やっぱりいいですよね、海は」

 そう言って吹雪さんも何一つ屈託のない笑顔を見せる。するともう一人の前衛役を務めていた陽炎さんの深い溜息が聞こえた。

「暢気というか大物というかよくわかりませんが、もうすぐ敵と遭遇するはずです。しっかりしてもらわないと」
「そうよね、ありがとう」

 ほんの少しだけ肩を竦めて言葉を返した。陽炎さんの心配ももっともである。私たちの根拠地である呉鎮守府(くれちんじゅふ)のすぐ沖合いでさえ、しばしば偵察役の敵が出没するのだから。くれぐれも油断は禁物だ。久しぶりの海に浮かれている場合ではない。

「私は当然の事を言ったまでですから。ほら、吹雪もくずぐずしない。さっさと前衛任務に戻るわよ」
「ちょ、ちょっと待ってよ、陽炎ちゃん!」

 ぷいと顔を背けて、陽炎さんは見る見るうちに速度を上げて私の前から離れていく。その後を懸命に吹雪さんが追いすがっていった。最大38ノットの高速を誇る駆逐艦である彼女達には、かつて高速戦艦と呼ばれた私でも到底追いつけない。本来なら戦艦にして先輩でもある私が艦隊の先陣を勤めるべきなのだろうが、こちらの世界では新米同然のひよっ子にすぎないのだ。大人しく後塵を拝することにしよう。

 ふと胸中を灰色の疑問がよぎる。あちらの世界で第一次大戦直後に誕生し、第二次大戦を戦い抜き、呉で空襲を受けて沈んでいったこと。こちらの世界に再び生を受けたこと。今の自分の姿のこと。何よりなぜ再び戦わなければならないのか。本当にわからない事だらけだ。

 ──私はどこから来て、どこへ行くのか。私は何者なのか。

 いや、駄目だ。とりあえずこの戦闘が終わるまでは前向きに考えなければ。

 まずは提督のご好意に感謝しなければなるまい。こちらの世界の事情に疎い私のために、こちらの戦闘経験豊富な吹雪さんと、あちらの世界ではインド洋作戦で顔馴染みだった陽炎さんの二人を、乏しい人員や資材をやり繰りしてわざわざ配置してくれたのだ。様々な疑問は依然として残っていたが、提督を始めとする周りの皆さんが、私に対し出来る限りの事をしてくれているのは確かなのだ。申し訳ないという想いと同時に、くすぐったくなる様な嬉しさを覚える。と、その時だった。

「敵見ゆ。12時方向。距離2万」
「駆逐艦らしい。単艦。反航」

 吹雪さんと陽炎さんの緊張した声が相次いで届く。さすがは歴戦の勇士達である。息もぴったりで、報告にもまるで無駄がない。要するに私達の真正面、距離2万メートルほどの所に敵の駆逐艦が1隻いて、こちらに向かってくるということだ。

「了解。砲雷撃戦用意。第5戦速」
「砲雷撃戦用意。第5戦速」

 第5戦速とは、私の最大速度である30ノットを意味する。頬を撫でる風の勢いが暴力的だ。私達3隻は、まるでひとつの生き物の様に逆三角形の陣形を作ると、敵に相対しつつ急速に距離を詰めていく。

「あれが、敵か」

 眼を凝らすと、水平線の彼方に、黒い靄のようなものに包まれた艦影がおぼろげに見える。駆逐艦で一番怖いのは魚雷攻撃だが、幸い魚雷の射程距離は数千メートルしかないから、こちらまで届く恐れはない。万一敵が近づいてきても吹雪さんと陽炎さんが守ってくれる。おかげで私は安心して主砲の照準を合わせることが出来るのだ。

「テーッ!」

 主砲発射の号令。轟音、閃光、衝撃。36センチ砲が火を吹いた瞬間だ。一瞬遅れて硝煙の香りをたっぷり含んだ煙が辺りに立ち込め視界が遮られる。しかし海風がたちまち吹き飛ばしてしまう。その間も時計だけは正確に時を刻んでいる。命中までの時間を。

「弾着、今!」

 彼方の海で、水面の輝きとは別種の閃光が煌いた。黒い敵の姿が膨張、破裂する。やがて鋭い形の艦首が水面からありえない高さで持ち上がり、そのままするすると海中に姿を消していく。

「凄い……」
「あれが轟沈。初めて見た」

 吹雪さんと陽炎さんの驚きの感想が通信機を通して切れ切れに聞こえてくる。そうとも、これが戦艦の主砲の威力。どんな敵の水上艦も一撃で大打撃を与えられる、人類の作り出した最大最強の凶器なのだ。

「凄いです、凄いですっ。さすがは榛名さんですっ!」
「ちょ、ちょっと、危ないって、吹雪さん。まだ他にも敵がいるかもしれないじゃないですか」
「その点は心配無用です。私がちゃんと見張ってますから。それに……」

 感極まって首に抱きついてくる吹雪さんに困惑していると、生真面目な表情に浮かべた陽炎さんがこんなことをいう。

「仮にまだ敵がいたとしても、榛名さんさえ健在なら安心です」
「ありがとう、信頼してくれて」
「当然です。あんな強烈な光景を見せ付けられたら、誰だって頼りたくなります」

 ようやく陽炎さんの瞳がかすかに潤んでいるのに私は気づいた。それが果たして感動なのか、あるいは別の感情の発露なのかまでは、残念ながらうかがい知れなかったが。

「それは貴女達のおかげでもあるのよ。私が安心して射撃に専念できたのは、陽炎さんがしっかりと前衛を勤めてくれたからこそなんだし」

 私の言葉がどのような化学変化を起こしたのか。たちまち陽炎さんの顔が耳まで真っ赤に染まる。

「私は……任務を果たしただけですから」

 そのままぷいっと横を向いてしまう。先ほどといい、今回といい、どうやらこの仕草は彼女なりの照れ隠しであるらしい。可愛いものだ。

「これからもよろしくお願いしますね。吹雪さん、陽炎さん」
「はいっ、榛名さん!」
「そこまでおっしゃられるのでしたら……」

 彼女達の思い思いの反応も面白かったが、自分の感情の昂ぶりは決してそれだけが理由ではなかった。やはり私は戦艦、戦うために生まれた存在なのだろう。戦闘自体にこれだけ滾ってしまう。駆逐艦を一撃で轟沈させてしまう打撃力。それらが何よりの証明に他ならない。

 ──私はどこから来て、どこへ行くのか。私は何者なのか。

 何もかもわからないことばかり。だけどただひとつだけ、はっきりと理解に達した。私は戦いに生き、戦いに果てることを定められた存在なのだということを。

 戦艦。人類が生み出した最強最悪の凶器を持つ船。それが私、榛名。

 私の第二の生涯は、こうして始まったのだった──。

 (おしまい)
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