スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

『戦艦榛名の生涯/12.7センチの願い』(艦これSS)

『艦隊これくしょん~艦これ~』のSSを公開します。
『戦艦榛名の生涯/12.7センチの願い』というお題です。
先日公開したSS『戦艦榛名の生涯』の続編にあたります。今回は戦艦榛名と駆逐艦文月の心の交流、みたいな感じで。長さはほんの4KBほどですので、すぐに読めると思います。

なんかもういい年してゲームにはまるとか恥ずかしいんですが、しばらく艦これのリプレイSSの合間に他のSSを書く、っ感じになりそうです。澪梓とか他のSSを期待されてる方々、ホントすいません。

それでは、お楽しみくださいませっ!




 『戦艦榛名の生涯/12.7センチの願い』



 誓約。

    ◇  ◆  ◇

 呉の鎮守府をぶらぶらしていると、片隅で12.7センチ砲を一心不乱に磨き続けている艦娘(かんむす)の姿が目に入った。

「ずいぶんと熱心なのね、貴女?」
「え……あ、はい、榛名さま」

 不思議そうな顔にすぐさま満面の笑みが宿る。彼女の方はどうやら私の事を見知っているらしい。もっとも鎮守府のすぐ沖合で敵の駆逐艦を一撃で轟沈させて見せたのだ。知らぬ者がない状態に陥るのも無理もないか。

 だが残念ながら私の方は彼女の名前を思い出せなかった。この鎮守府だけで数十隻の艦娘が所属している。その全艦を一日やそこらで覚えろという方が無茶な話だった。

 私の当惑をなんとなく理解したのだろう。彼女の整った唇が再び動き出す。

「あたしね、文月(ふみづき)っていうの。睦月型駆逐艦の7番艦なのよ」
「そう。偉いわね、文月ちゃん。きちんと自分の武器のお手入れができて」
「えへへ」

 照れ臭そうな笑顔を浮かべる彼女の姿は本当に愛くるしく、だからこそ胸が締め付けられるように痛んだ。こんな少女まで戦いに駆り出されているという事実に。

「あたしは他に何もできないから、せめてお願いしてるの」
「お願いって、どんな事を?」
「一発でも多く敵に弾が当りますようにって。みんなを守れるように」

 溜息を押し留めるのにはかなりの精神力が必要だった。こんな少女までが全力を尽くしているというのに、この私と来たら。

 『フリート・イン・ビーイング』、いわゆる艦隊保全主義が現在の提督の方針だった。たった一隻の、虎の子とも言える戦艦を投入していたずらに戦力を消耗するより、いつでも出撃できると相手に思わせることで行動を制限する。決戦主義の対極にある作戦指導だった。このため私は事実上出撃を禁じられ、主に輸送船団を護衛するために駆逐艦や軽巡洋艦が出航していくのを、ただ黙って眺める他なかったのだ。

「文月ちゃんは本当に偉いわね」

 胸中の苦い思いを押し隠しながら軽く頭を撫でてやると

「あたし、榛名さまのこと、大好き」

 そう言って彼女は再び屈託のない笑顔で答えてくれる。

 ──12.7センチの願い、か。

 次の瞬間、胸の中の苦味が、口の中にまで大きく広がった。

    ◇  ◆  ◇

 文月が大破したのは、それから3日ほど後のことだった。入渠した彼女を見舞うと、すっかり包帯と絆創膏に覆われた痛々しいまでの姿ながら、それでも弱々しい微笑みで私を迎えてくれた。

「よく戦ったね。敵の襲撃部隊と輸送船団の間に割って入って、一歩も引かなかったって聞いたよ」
「そんなことないよ。戦ったのは護衛艦隊のみんなも同じだし……」

 どこかが痛むのだろう。苦しそうに表情を歪める。とっさに傷の無い頬に軽く掌で触れると、文月の眼が私の両の瞳をしっかりと捕らえた。もちろん視線を逸らす事などできやしない。

「ねえ、おねえちゃん……」
「え……?」

 おねえちゃん、というのは、どうやら私の事らしい。いつの間に彼女の中でそういう位置付けになっていたのだろうか。いやこの際、そんな些細な事実はどうでもいい。

「文月ね、お願いしたいコトがあるの」
「言ってごらん。どんな事でもかまわないから」
「あたしはしばらく戦えないから、だからその間、代わりにみんなを守ってほしいの」

 一瞬、頭の中が真っ白になった。

 ああもう、お前って奴は。こんな姿になっても他人の心配ができるんだな。偉いよ、本当に偉い。どれほど褒めても褒めすぎじゃない。そんな事、誰にも言わせないから。

「お願いしても……いいですか?」

 当然だ。否応などあるものか。何が『フリート・イン・ビーイング』だ、クソったれ。彼女の12.7センチの願いの前には、どんなご立派なお題目も色褪せるだろう。そうとも、もう誰にも文句は言わせない。私も共に戦列に参加するのだ。さもなきゃこの手で提督ごと鎮守府を吹き飛ばしてやる。

 秘かな決意を固めた私は彼女の可愛らしい頬を優しく撫でながら、短く、だが決して違える事が許されない誓約を口にした。

「後は任せて」

 (おしまい)
関連記事
スポンサーサイト

テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

コメントの投稿

非公開コメント

現在の位置
百合みっくす
 トップページ
  ├ 月別アーカイブ
  |  └ --年--月 --日 (--)
  ├ カテゴリー
  |  └ スポンサー広告
  └ スポンサーサイト
百合みっくす
 トップページ
  ├ 月別アーカイブ
  |  └ 2013年08月 04日 (日)
  ├ カテゴリー
  |  └ その他SS
  └ 『戦艦榛名の生涯/12.7センチの願い』(艦これSS)
by AlphaWolfy
新公式twitter
カテゴリ
タグcloud
プロフィール

あっとあとみっく

Author:あっとあとみっく
おもに百合(GL・ガールズラブ)な小説と周辺情報を公開しています。最近はコミPo!でオリジナル百合4コマも。現在は「けいおん!」、「魔法少女まどか☆マギカ」とオリジナル。カプ傾向は澪梓、憂梓、恵和あたり。あと、ほむほむは百合。
このブログはリンクフリーですが、相互リンクはお受けしておりません。ご了承くださいませ。
注:管理人の名称は「あっとあとみっく」が正式ですが、ごくまれに「藍」と名乗ることもあります。

最新記事
月別アーカイブ
Google フリー検索

Google

WWW検索 ブログ内検索

リンク
バナー
百合みっくす 明日は明日の風が吹く! ものとーんわーるど TRAFFIC JAM Girls Love Search 駄文同盟.com にほんブログ村 小説ブログ 百合小説へ つい・ゆり ~おかあさんにはナイショだよ~
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。