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『♀×♀の解法』(オリジナル百合SS)

本日は夏コミ2日目。記録的な暑さの中を参加された方々もそうでない方々も、残暑お見舞い申し上げます。

というわけで、オリジナルの百合SSを公開します。
『♀×♀の解法』というお題でし。先月ツイッターで「先生←生徒の片思い」というシチュで公開したものに、加筆修正したものです。ツイッターでいつもお題を提供していただく某さま、ありがとうございます(ぺこぺこ

最近ちょっと空き時間があると艦これ(『艦隊これくしょん』というゲームです(汗))妄想ばかり炸裂させ、大砲の咆哮と硝煙の香り漂う殺伐とした世界のことばっかし考えてます。でもさすがにそれオンリーというのも問題あるよなーというわけで、今回はごく普通の世界のお話です。

ちょっと苦戦したのは「片思いEnd」ということでしょうか。基本的に両想い甘々ハッピーエンドが好きな私としては、くっつかないで終わるお話というのはどうも消化不良感が否めなくて…。まあたまにはそういうのもいいかな、という感じで(笑)。ちなみに分量は5KBほどなので、それほど苦も無く読めると思います。


それでは、お楽しみくださいませっ!





 『♀×♀の解法』



 要は頭の中にモデルが作れるかどうか──。

    ◇  ◆  ◇

 最初の頃、金曜の6時間目は苦行だった。

 新学期のオリエンテーションで時間割を見たときは正直げんなりだったなあ。よりによって一番苦手な数学が一週間の締めくくりだなんて最悪だってね。別に私だけじゃなかったと思う。っていうか、なんで数学なんてものが世の中にあるのか理解できない。四則演算あたりならまだしも、二次方程式とか平方根とか、実際に生活で使う場面なんかお目にかかったことないし。絶対文科省あたりの数学嫌いな公務員の学生いじめだよ、なんて思ったことだって一度や二度じゃない。

 それがどうだ。

 今ではこの時間が楽しみで楽しみで仕方がない。我ながら笑い出したくなる。理由はとってもシンプル。私が数学の先生のことが大好きになってしまったから、ただそれだけ。人間ってつくづく現金な生き物だよね。いや、これは私だけかも知れないけどさ。

 私より背が少し低くて、それでいて黒のスーツで包まれた身体のラインが、しっかりと彼女が大人であることを物語っていた。セミロングにゆる目のウェーブのかかった栗色の髪の毛が、何かの拍子に揺れるたびに、しゃらら~んという効果音が聞こえそうな錯覚すら感じる。それでいてぱっちりとした目元と、やや舌っ足らずなソプラノが、どうかすると自分たち高校生より年下なのではと疑いたくなるほど可愛らしい。

 最初はただの好奇心だった。

 この先生のことがもう少しだけ知りたくて、普段なら近寄ろうとも思わない職員室のドアを叩き、どうしてもわからない方程式の解法を質問するという口実をでっちあげ、彼女の所に出かけたわけ。

 先生はとても喜んでくれた。数学の質問を、それもわざわざ放課後に訪問してまで浴びせる生徒の存在が、よほど嬉しかったらしい。これでもかこれでもか、とばかりに方程式の解法を懇切丁寧に説明してくれたのだ。この私ですら理解できるほどに。自分の十数年の人生を振り返ってみても、ここまで何かをていねいに教わった覚えはない。

 身体が震えるほど感動した。

 生まれて初めて数学を楽しいって思った。もちろん、問題が解けたから、というのもある。いくら机の前で教科書や参考書を読んでもさっぱりわからなかった事柄を、ものの三十分かそこらで理解させてしまった先生の力量と熱意も恐るべきものだ。だけどそれにもまして、自分にも数学が理解できる、問題が解ける、という事実に、全身が震えるほどの衝撃を受けてしまったのだった。

「要は頭の中にモデルが作れるかどうか、なのよねえ」

 にこやかに笑いながら先生はそんなことを言う。小説の文章を読んで情景や心情がありありと浮かぶように、数式やグラフから頭の中でどのようなモデルが構築されるのかを読み取るか。数学とはそういう学問なのだと初めて理解できたのだ。お題目でなく、体感的に。それまでのどんな先生の説明よりも、彼女のひと言がしっくりときたのだった。

 革命と呼んでもいい。

 あれほど英語以上に意味不明な暗号文にすぎなかった数式がすらすらと頭に入るようになり、公式が暗記できるようになり、文章が理解できるようになった。あれほど苦痛だった問題集が、今日はなんページやり遂げたかという道程になった。あれほど忌避していた授業さえ、楽しみでたまらなくなった。

 そしてもうひとつ。

 彼女がどうやって数学を学び、先生にまでなったのか。とっても興味が沸いてしまったのだ。というより、彼女自身の事が知りたくてたまらなくなった。思い返せば、私はあの頃すでに彼女の虜になっていたのだろう。どんな子ども時代をすごしたのか。どんな学校生活をすごしたのか。どうして数学を専攻したのか。どうして先生になったのか。好きな食べ物は?趣味は?本は?などなど。

 教壇に立つ姿に。
 職員室で資料を確認する横顔に。
 朝、小走りで校門を駆け抜けていく後姿に。

 頭の中が先生のことでいっぱいになってしまうのに、そう時間はかからなかった。

 痛くて。
 苦しくて。
 溢れ出しそうで。

 危うく口を滑らせそうになるのを懸命に我慢する。

 先生はもちろん女の人で。

 当然ながら私も女の子で。

 ♀×♀なんて式が成立する可能性なんて、常識的に考えれば万に一つもなくて。

 先生の受け売りによると、小学校しか出ていないアインシュタインは、実は方程式を解く天才だったそうだ。ノーベル賞を取った光量子仮説や、有名な相対性理論も、当時の物理学者たちが束になってかかっても解けない難解な方程式だとか。

 別にそこまで難しい式が解けるような才能とまでは言わない。せめて♀×♀の式が解ける方法さえわかればなあ。もう頭の中ではいくらでもモデル化できるんだから。

「はあ……」

 つい私の口から飛び出したため息を、先生が聞きつける。

「どうしたの? わからないところがあったら、いつでも質問していいのよ?」

 ああもう、めまいを覚えるほど可愛い。高鳴る胸の鼓動で頬まで熱くなる。幸いクラスの連中は急に当てられて慌てていると好意的に解釈してくれるけど、それもいつまで続くかはわからない。

 ノートの端に「♀×♀」と小さく落書きして、誰にも気づかれないようにそっと消す。こればっかりはさすがに聞けないよね。この式をどうやったら解けるんですか、なんてさ。

 やれやれ。ホント、罪作りな人ですよ、先生は──。

 (おしまい)
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おもに百合(GL・ガールズラブ)な小説と周辺情報を公開しています。最近はコミPo!でオリジナル百合4コマも。現在は「けいおん!」、「魔法少女まどか☆マギカ」とオリジナル。カプ傾向は澪梓、憂梓、恵和あたり。あと、ほむほむは百合。
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注:管理人の名称は「あっとあとみっく」が正式ですが、ごくまれに「藍」と名乗ることもあります。

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