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『艦娘たちのつぶやき 2隻目』(艦これSS)

艦これのSSを公開します。
『艦娘たちのつぶやき 2隻目』というお題です。

前回は軽空母たちが主役でしたが、今回は重巡洋艦の羽黒と鳥海のCPでお送りいたします。
今回は百合風味重視でw
この2隻は私が艦これを始めた頃にやってきた娘達なので、かなり思い入れあるんですよね。
長さは6KBくらいなので、すぐに読めると思います。


それでは、お楽しみくださいませっ!



 『艦娘たちのつぶやき 2隻目』



 夜戦は私達の十八番。

    ◇  ◆  ◇

 決して広いとは言えない室内は全ての明かりを消していて、さらにきっちりとカーテンで締め切られている。鎮守府のわずかな作業灯や満天の星の光も差し込むことは無い。ひょっとすると蛍の光だけでも室内がほのかに照らし出されるだろう。

 とはいえ、私はずっと重巡洋艦という名の艦娘として訓練され、何度も死線を潜り抜けてきた。中でも夜戦は私達の十八番。普通の人間なら足がすくむ暗闇でも、何一つ行動に不自由は感じない。壁のフックに無造作に引っ掛けてある、訓練時代に使っていた「はぐろ」と大書されたライフジャケットの文字も、まるで昼間のように読み上げることができる。もっともそれは、すぐ傍らで私の横顔を眺めている鳥海も似たようなものだろう。

 泥のような思考の底から、ふと懐かしい単語が浮かび上がる。

「……南1号作戦……」
「え……と、南西諸島の防衛戦闘、だったっけか」

 一瞬だけ怪訝な表情を浮かべた彼女の顔に、すぐさま理解の色が広がった。

「あの作戦の時って、大型戦闘艦は私とちーちゃんしかいなかったよね」
「あの頃のはーちゃんはとっても線が細くて、ちょっと頼りない感じだったけど、今は……ねえ」

 そう言って、彼女はうふふふと人の悪い笑みを浮かべる。ちなみにふたりきりのとき、私は鳥海のことを「ちーちゃん」と呼ぶ。同じように、彼女は私の事を「はーちゃん」と呼んでくれる。他の誰も知らない、秘密の呼び名だった。


「ちょっとちーちゃん、それってどういう意味?!」
「あっはっはっ、冗談だよ冗談。はーちゃんはますますスレンダーで可愛いよ?」
「そうやってすぐ誤魔化すんだから」

 頬を膨らませて抗議してみるが、彼女が意に介した様子はない。イジワル。

「あの頃は毎日のように出撃させられてたっけ」
「戦場とドッグを入ったりきたりで……」
「……私達ふたりで並んでドッグで寝泊りしてたようなモンだったよね」

 小さく笑いあう。大変だったけど、とても懐かしい日々だった。

 彼女は高雄型巡洋艦の4番艦、私は妙高型巡洋艦4番艦である。型こそ違うものの、同じ末っ娘同士、その上こちらの世界では貴重な大型戦闘艦ということもあり、私達はすぐに仲良くなった。もっとも彼女はあちらの世界で第8艦隊の旗艦として第一次ソロモン海戦で輝かしい戦果を上げた武勲艦、それにひきかえ私はろくに戦果らしい戦果もあげていない。

「もっとも今は戦艦や空母がたくさんいてくれるから、すっかり出番も少なくなって」
「でも最近、ちーちゃんは西方海域作戦に参加してたじゃない」
「そういうはーちゃんも、新しい装備を実験してるんだって」
「うーん、あんまり大声では言えないんだけど」
「そうだね、ごめん」

 いくらふたりきりとはいえ、軍機に触れるようなことはおいそれと口にできない。運がよくても懲罰モノ。最悪の場合は艦娘としての資格を失い、軍刑務所行きという可能性もありうる。深海棲艦の戦艦でさえ撃破できる重巡洋艦の艦娘といえども、装備を取り上げられてしまえば、普通の女の子とさして代わりは無い。逆らうどころか、口答えするヒマも与えられないだろう。

「夜戦で初めて電探戦艦とやり合ったときは肝が冷えたよ」
「沖ノ島だっけ? だからこそ、こちらも負けないように新装備を開発しないと、ね」

 さりげなくちーちゃんが話題を変えてくれた。私もできるだけ当たり障りの無い返事をする。

「昔とは変わっていくよね、何もかも」
「敵だってどんどん強力になっているしな」
「戦域だって信じられないくらい広がってる。私達が配属されたころなんか、本土防衛に汲々としてたのに」
「それが今や南方の敵本拠地に殴りこみ、だもんな」

 ちーちゃんがついこの間まで戦っていたのは、西方海域に展開していた敵東方艦隊の主力だった。大本営が大々的に発表していたから、それ自体は秘密でもなんでもない。それらを打ち破り、小破した傷がようやく癒えて戻ってきたのが今日の午後。内地で小型電探の実験部隊に参加していた私とは、久しぶりの再会だった。それもつかの間。今度は南方らしいという噂が艦娘たちの間でも流れている。もし鎮守府の中に敵のスパイがいたら、きっと筒抜けに違いない。

「ねえ、ホントに大丈夫なのかな。まるで敵に誘い込まれてるみたいで、なんだか怖い」
「きっと大丈夫だよ。人類はこんなことで負けたりしない。最後は必ず勝つ。そして……」
「……え、何?」

 何事も言いよどむ事のないちーちゃんが、めずらしく言葉を切って、そのままそっぽを向いてしまう。さすがにこの暗がりでは色までははっきりとはしないのだが、気のせいか、顔もほんのりと紅潮してる気がする。

「何でもない。何でもないよ」
「言いかけで止めるなんてズルイよ、ちーちゃん」
「だから、何でもないんだったら」
「いいもん。そういう態度を取る悪い娘は、くすぐりの刑に処します」

 氷のような宣告を聞いたちーちゃんの顔が引きつった。

「あ、ちょっと、こらやめろ。私そういうの弱いんだって知ってるだろっ!」
「忘れました~」
「ちょ、あはははは……やめ……はははははははっ!!」

 たちまちのうちにちーちゃんが悲鳴のような笑い声を上げ始める。彼女の弱点は長い付き合いで知り尽くしてる。どこをどうすればどんな反応を示すか、全てを。

 だがしばらくして私の手は、彼女の右腕の付け根あたりに吸い寄せられた。シミひとつないはずの彼女の柔肌に、線を引いたような痕が一筋。枕もとの鏡を手に取り、ちーちゃんにも見せてあげる。

「あらあ、こんな所に切り傷発見」
「別に平気だよ、このくらい。放って置いても2、3日で直る」
「ダメです。もしもバイ菌でも入ったら大変だもの」

 鏡を脇に寄せると、私は彼女の傷痕にそっと口をつけ、ゆっくりと這わせていく。

「あの……はーちゃん、いったい何を……?」
「傷が早く直るオマジナイです」
「はーちゃんはホント可愛いよね、マジで。誰にも渡したくない」
「私だって、ちーちゃんの事は誰にも渡さないんだから」

 どちらからともなく互いの背中に両手を回す。

 まだまだ戦争は続くのだろう。
 おそらくは人類か深海棲艦、そのどちらかが滅びるまで。

 ある日突然、私が沈むかもしれない。
 あるいは彼女がいなくなってしまうかもしれない。
 もし、ちーちゃんが帰ってこなかったら、その時は私も。
 想像するのもおぞましい恐怖を自らの胸の奥深くにしまい込む。

 大丈夫。

 夜戦は私達の十八番。

 私も彼女もそう簡単にやられはしない。

 ちーちゃんの柔らかな身体から人の温もりを感じる。
 今夜も私達は、2人きりで戦いに明け暮れるの。
 世界が壊れてしまう、その瞬間まで──。

 (おしまい)
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おもに百合(GL・ガールズラブ)な小説と周辺情報を公開しています。最近はコミPo!でオリジナル百合4コマも。現在は「けいおん!」、「魔法少女まどか☆マギカ」とオリジナル。カプ傾向は澪梓、憂梓、恵和あたり。あと、ほむほむは百合。
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注:管理人の名称は「あっとあとみっく」が正式ですが、ごくまれに「藍」と名乗ることもあります。

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