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『戦艦榛名の生涯/3隻目』

みなさま、明けましておめでとうございます。
これからも例によって百合っぽい作品をぼちぼち公開していこうかと思っております。
本年もよろしくお願いいたします。

さて、今年初の更新ですが、艦これのSSを公開します。
『戦艦榛名の生涯/3隻目』というお題です。

艦これのSSはこちらの『戦艦榛名~』の他にもうひとつ
『艦娘たちのつぶやき』というのを書いてます。
『艦娘~』が基本的に1話完結、主人公も別々なのに対して、
『戦艦榛名~』の方は基本的に榛名さん視点で、ストーリーもひと続きとなってます。
今回のお話だけでもいちおう楽しめますが、もし気が向かれましたら7~8月に公開した2編
『戦艦榛名の生涯』
『戦艦榛名の生涯/12.7センチの願い』
も合わせてお読みいただければ、と思います。

今回のあらすじは、

 前回文月ちゃんと約束した榛名さんは、
 出撃を嘆願しに提督執務室を訪れるのだが、
 留守番をしていた秘書艦の鳥海と言い争いに……

という感じになっております。長さは7KBほどなので、すぐに読めると思います。
ただいつもより漢字大目になっておりますので、読みにくいと感じられたらごめんなさい。

それでは、お楽しみくださいませっ!



 『戦艦榛名の生涯/3隻目』



 第8艦隊の旗艦として第1次ソロモン海戦に参加し、大戦果をあげた武勲艦。

    ◇  ◆  ◇

 朝一番で鎮守府庁舎の一角にある、提督執務室に赴いた。分厚いドアをノックする。中から「どうぞ」という答えが返ってきた。女性の声だったが、しかし提督のものではない。おそらく秘書艦の誰かだろうと見当をつける。

「失礼します」

 執務室に提督の姿は無かった。青いノースリーブのセーラー服と白く短めのプリーツスカートを身にまとい、縁なし眼鏡をかけた黒のロングヘアの女性が椅子から立ち上がっている。重巡洋艦の艦娘(かんむす)、鳥海だった。

「こんな朝からめずらしいですね。提督はただいま会議中ですが、何の御用でしょうか、榛名さん」
「提督に意見具申があるのですが」
「それでしたら、まず秘書艦の私が承りましょう。提督への報告が必要だと判断した場合は取り次ぎます」

 秘書艦は鎮守府の雑務一般を取り仕切っている、実質的に提督の次席指揮官と呼ぶべき存在だということくらいは、こちらの世界の事情に疎い私でも承知していた。だが用件を口にしようとしたところで、もう一人の艦娘の存在に気づく。

 細身の身体にぴったりと張り付く菫色の制服を着込んだ、黒髪のショートカットの艦娘だった。妙高型の重巡洋艦だろうと見当をつけたが、とっさに名前が出てこない。私と眼が合うと彼女は、あたかも天敵に狙われた小動物のような態度で椅子から飛び上がり、おずおずと口を開いた。

「あ、あの、私は席を外したほうが……」
「ああ、そうね、羽黒。そうしてくれると助かる」
「すいません、鳥海さん。そ……それでは失礼しますね。どうぞごゆっくり、榛名さん」

 今にも消え入りそうな声で、私にペコペコと頭を下げながら、彼女は脱兎のごとく執務室を飛び出していった。なんだか間宮さんのアイスクリームを思わせる甘い香りを残して。

 それにしても、そこまで私は怖そうだっただろうか。ちょっと傷ついたかも。

「それでは、改めてお話を伺いましょう」

 つとめて柔和な表情を浮かべているが、眼鏡の奥の眼光は今にも私の身体を射抜くような鋭さを放っていた。さすがはあちらの世界で第8艦隊の旗艦として第1次ソロモン海戦──ガダルカナル島沖の米海軍への夜襲──に参加し、大戦果をあげた武勲艦だけのことはある。とはいえ無論、この程度で怯むわけにはいかない。

「話は簡単です。私を出撃させてください」
「提督から重巡以上の大型艦は出撃禁止との通達が出ています。承知していらっしゃるはずですよね」
「それでも出撃したいのです。軽巡や駆逐艦の艦娘があれだけ苦戦しているのに、戦艦の私が指をくわえて見ているなんて、とても我慢できません」
「その心情は痛いほど理解できます。私も出撃禁止の身ですから。ですが、命令は命令です」
「ですが!」
「そもそも無理なんです。現在の鎮守府には、戦艦や重巡のような大型艦を出撃させるような燃料や弾薬の余裕がありません」

 一瞬だけ鳥海は目を閉じ、軽く首を左右に振った。艶やかな黒髪がさらさらと揺れ、しばし彼女の仕草に見とれてしまいそうになる。艦娘だという事実さえ忘れかねない。

「駆逐艦数隻を輸送船団護衛に出すのだって、乏しい燃料をやり繰りしてようやくという状況です。『燃料の一滴は血の一滴』という言葉さえあるくらい。そして輸送船が外地から資源を持ち帰らなければ、この国は文字通り干上がってしまう」

 再び秘書艦としてのあるべき姿に立ち返った鳥海は、なおも冷たい口調で言葉を紡ぐ。

「しかし戦艦は駆逐艦の数倍の資源を消耗します。ですからもし榛名さんを出撃させたら、駆逐艦の分の燃料が無くなり、輸送船団は丸裸になってしまう。いくら戦艦でも、たった1隻で船団の全てを守ることはできない。精神論だけでは物理法則を曲げられないのです」
「それは、そうですが……」
「それでも出撃したい、とおっしゃいますか?」

 酷薄なまでの瞳が私の顔を見据える。残念ながら理屈では鳥海と真正面から争っても勝ち目は薄い。そもそも軍隊での命令は絶対。それを覆すにはよほどの理由がいる。

「……文月と約束したんです」
「はい?」
「大破した文月と約束したんです。私が彼女の代わりに、みんなを守るために戦うって。本当に、本当に方法はないんでしょうか?」
「やれやれ……」

 どさりと椅子に腰掛けながら、鳥海は深い深い溜息を吐く。説き伏せる側に助けを求めるなんて、という言葉が全身からにじみ出ているようだった。

「ひとつだけ、方法がないわけではありません」

 しばしの沈黙の後、鳥海は机の引き出しを開け、書類の束を取り出すと、私の目の前に放り出した。『り号作戦(草案)』と表紙に大書された表紙の角に『機密』の朱印が押されている。手に取っていいものか迷う。

「これは、なんですか?」
「深海棲艦に対する反攻作戦の草案です。現段階では私の私案にすぎませんけれど」

 私の顔を鳥海が見据える。まるで心の底まで見透かされそうだ。

「深海棲艦の動きは鎮守府の通信隊が通信傍受でかなり把握しています。有力な敵の兆候を掴んだら輸送船団を退避させ、港で息を潜めてやり過ごす。それがこれまでの戦術でした。我が方に敵艦隊を撃退するだけの戦力がありませんでしたから」

 ひじを机につき、両手を組んで顎を軽く乗せながら、鳥海はさらに先を続ける。

「ですが、榛名さんの出現で状況は激変しました。巡洋艦に匹敵する高速力と、敵戦艦と互角に殴りあえる戦闘力を持った貴女によって、別の可能性が急浮上したわけです」

 ふと、これまで無表情だった鳥海の顔に、わずかに笑みが浮かんだような気がした。

「榛名さん、戦力集中の原則はご存知ですよね」
「決定的地点に対して優勢な戦力を集中させる原則であり、あらゆる軍事行動における戦略的前線において攻撃のための戦力を集中させなければならない。確か、そんな内容だったかと」

 確か米国の戦略家の言葉だったはず。記憶の底を手繰りながら、乾き切った口でかろうじて返事する。

「もし敵出現の兆候を掴んだら、一時的に船団の運行を中断する。その代わりに大型戦闘艦を集中運用し、のこのこ現れた敵に痛撃を加え海上優勢を確保して、船団が安心して航行できるよう兵站線を確保。それによって資源を確保し、艦隊のより大きな自由度を獲得する。これが本作戦の要点です」
「しかし、どうして私にこんな機密を?」
「私は秘書艦ですからね。大抵のことは私の権限でなんとでもなります。という建前は置くとして──」

 その瞬間、鳥海の瞳が慈しみの光に包まれたのを私は見逃さなかった。さなぎから美しい蝶に生まれ変わるような感じで、秘書艦からただの女の子へと変貌する。

「──私はただ羽黒を守りたいのです。本来これは私と羽黒が主力になることを前提に立案した作戦でした。だからこそ提出を躊躇していたのです。ですが、榛名さんが先頭に立って戦ってくれれば、少なくとも彼女の危険は大幅に減ることになります。もちろん貴女さえ承諾していただければ、ですけど」

 夢を語る乙女の表情で鳥海は言い切った。なるほど、彼女にとって羽黒さんは、そこまで大切な人なのですね。

「先ほどの彼女の姿をご覧になっていかがでしたか。まるで菫(すみれ)か桔梗(ききょう)の花みたいでしょう。あの娘はずっと私の戦友ですが、本来の彼女は戦いにまるで向いていない。獲得した資源によって新たな艦娘が次々と建造され、彼女が前線に出る必要がなくなる日がやってくるのが、どれほど待ち遠しいことか」
「私は文月の代わりに出撃するために、貴女は想い人を戦場から遠ざけるために、なのですね、この作戦は」
「お互い損の無い取引、そうは思われませんか、榛名さん」

 そういうと鳥海、すなわち第8艦隊の旗艦として第1次ソロモン海戦に参加し、大戦果をあげた武勲艦の生まれ代わりは、心の底から満足そうな笑みを浮かべた。あたかも画期的な学説を学会で発表した学者みたいだと思う。

 もし許されるのなら、艦娘を生み出した誰かさんに聞いてみたいものだ。

 なぜ私達という兵器に、人の姿と心を与えたのか、と──。

 (おしまい)



あとがき

今回登場した鳥海と羽黒の後日談は
『艦娘たちのつぶやき 2隻目』
に書きました。今回の作品で「百合成分すくねー!」とお怒りの方は、
こちらで補充いただければと思いま~すw
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