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『艦娘たちのつぶやき 3隻目』

艦隊これくしょん~艦これ~のSSをお送りいたします。

『艦娘たちのつぶやき 3隻目』というお題です。今回は1隻目で主役をつとめた瑞鳳さんが再登場し、新たに鎮守府に着任した新鋭空母大鳳さんと絡みます。

瑞鳳(クリックで拡大します)
28.jpg

大鳳(クリックで拡大します)
60.jpg

ちなみに大鳳のイラストを担当されたのは、あの島田フミカネ先生。ストパンなどで一部の方々にはおなじみですよね?

あらすじは、

2月3日は節分ということで、鎮守府でも『大人の節分』大会が開かれることになった。その席で用意されるお酒を選ぶ役目を押し付けられた瑞鳳大鳳だったが、お酒が進むにつれ……。

という微百合な展開です。

71.jpg


それでは、お楽しみくださいませ。

追伸
そろそろ「艦これSS」タグ、つくろうかな~?w


 『艦娘たちのつぶやき 3隻目』



 煉獄。

    ◇  ◆  ◇

「本日はよろしくお願いいたします、瑞鳳先輩」
「お願いだから、そんなにかしこまらないでよ、大鳳さん」

 きびきびとした口調で、私を先輩と呼んでくれる小柄な正規空母の艦娘、大鳳さんに対して、困惑するしかない私だった。塵ひとつない制服を、きちんと折り目正しく着こなしている。どこから見ても一分の隙もない、鎮守府の皆さんが活躍を確信している最新鋭装甲空母、それが彼女だった。

「でも、あちらの世界でも、こちらの世界でも、先輩には違いありませんし」
「そりゃあそうだけど、私なんかただの軽空母だよ。大鳳さんはりっぱな正規空母じゃん」

 あちらの世界でも、期待の新鋭装甲空母として第一機動艦隊にやってきた彼女はとても優雅で、その上とても強そうだった。翔鶴型よりさらに大きく、飛行甲板に重装甲を施した彼女を、航空攻撃でどうにかするのは不可能なように思われた。それがまさか……いやいや、昔話はよそう。

「ところで、今日の『利き酒大会』とは、どのような催しなのでしょうか」
「ああ、それはね──」

 小首を傾げながら、素朴な疑問を投げかけてくる。もっともだ。立場が逆なら、私も同じ質問を投げかけただろう。

 提督か誰か知らないけど『大人の節分』なんてクダラナイ催し物を企画した馬鹿がいるらしい。その出し物としてどんな料理やお酒を出せばいいものか。喧々諤々の末、料理は戦艦の方々、お酒は空母の方々で決める、という話になってしまった。

 でもって、それを聞いた軽空母の面々が、これはというお酒をガンルーム──とは名ばかりの広間──に持ち寄って利き酒大会を催すというのは、もう日が落ちると夜になるくらいの当然な流れなわけで。

「というわけだから、大鳳さんもこっちに座って、気楽にやってよ。先輩とかはなしの方向で」
「は、はあ」

 きっと加賀さんあたりが「暇な軽空母に任せておけば問題ない」などと主張し、他の正規空母たちも「そーだそーだ」と賛成してしまったのだろう。五航戦の瑞鶴さんと大鳳さんはそこまで酷くないかもしれないけど、いかんせんふたりだけでは大勢を覆すことはできなかった、きっとそんな感じ。でもって、まだ実戦は早いと判断された大鳳さんだけが、こうして酒宴──もとい、利き酒会に派遣されることになった。たぶん、そんなところに違いない。

「ねえー、お酒マダー(チンチン)」
「ちょっと隼鷹、行儀悪すぎっ」

 さっそく飛鷹さんと隼鷹さんが小競り合いを始めてる。飲み始める前からこの調子では先が思いやられる。「はいはい、まずは人肌に暖めてからね」などと笑顔で返す鳳翔さんの背中に後光が見えるようだ。

 というわけで、ここには利き酒なんていうのは建前で「飲めれば何でもいいや~」という軽空母達が雁首を並べている。頼みの綱は鳳翔さんくらいしかいない。きっと今日も、まともな会にはならないんだろうなあ──。

    ◇  ◆  ◇

 結局、私の予想は最悪の形で的中した。

 祥鳳姉さんはすでにお酒の海で早々と沈没。龍驤さんは「胸が無い」とひたすら泣きじゃくり。千歳さんと千代田さんは、なんか2人きりの世界へトリップし。隼鷹さんに至っては服を脱ぎ散らかして、相方の飛鷹さんに叱られてる。そんな煉獄の中を、鳳翔さんだけが「あらあら」などと呟きながら介抱に追われていた。

「ごめんね、こんな馬鹿騒ぎにつき合わせちゃって」
「いえ、全然へえきです、から。づいほ~さんこそ、大丈夫ですかぁ?」

 癒し系の声で、あまり大丈夫じゃない受け答えをしている大鳳さんだった。顔だけは私のほうを向いているが、目つきがとろ~んとして、せっかくの美少女も台無しである。

「でもヒドイんですよね~、他の正規空母の人たち。私には関係ないって、みんなすっぽかしちゃうんですもん」
「仕方が無いですよ、あの方々は。いつ実戦に狩り出されるか、しれたものじゃないですし」
「そりゃそうかもしんないですけど~」
「それに──」
「はい?」
「あ、いえ、なんでもないです」

 わずかに視線を逸らし、いずれは貴女もそうなるんだよ、という言葉をようやく飲み込んだ。せっかく仲良くなりかけてるのに、無粋なひと言で場の空気をぶち壊すのも気が引ける。

 ゴトッ。

 ちょっと考え事をしていた隙に、少々穏やかでない音が響いた。見ると、大鳳さんが幸せそうな寝息を立てて、カウンターに頭を預けている。どうやら夢の世界に旅立たれたようだった。

 ──装甲空母大鳳、呉沖合で轟沈す

 一瞬浮かんだ悪質な冗談を振り払いながら「大鳳さん、ちょっと起きてくださいよ」と揺り動かしてみるが、一向に目を覚ます気配はない。どうやら、いろんなお酒をちゃんぽんにしたのが、よっぽど効いたのか。

「あの、すいません。私、大鳳さんを部屋に連れて行きます」
「ごめんなさい。お願いするわ。こちらも他の方々の面倒だけで手一杯なの」

 仕方が無いので、孤軍奮闘している鳳翔さんに断りを入れ、私は大鳳さんの身体を抱き起こそうとした。しかし、である。

「わ、意外に重い……!」

 なんせ小柄とはいえ彼女は装甲空母である。飛行甲板に重装甲を張り巡らし、急降下爆撃で被害を与えることは不可能だと豪語されていた。しかし、あちらの世界では事実上最後の空母決戦となったマリアナ沖海戦に参加したものの、敵の潜水艦の魚雷一本であっけなく沈んでしまうなど、いったい誰が想像しただろう。かく言う私もあの戦いに参加し、海上でのた打ち回る彼女の姿を見ていたから、決して他人事とは思えない。

「よいしょっと!」

 だけど、たとえ彼女が最新鋭の装甲空母だとしても、今はただの介抱すべきひとりの艦娘にすぎない。ちょうどあの時のように。そしてこちらの世界の私には、差し伸べられる腕がある。

 絶対見捨てたりしないから。必ず部屋までつれて帰るから。だから安心して──。

    ◇  ◆  ◇

 一瞬だけ意識を取り戻した大鳳さんに自室の鍵を開けてもらい、ようやくベッドに転がり込むことができたのは、ガンルームを後にしてから30分ほど立った頃だった。

「……もっと……頑張りますから……ひとりぼっちは、いや……」

 もしかして夢の中でも戦っているのだろうか。そう思うと、ひどく胸が痛んだ。

「大鳳さんも大変そうだな」ついそんな独り言を呟いてしまう。

 正規空母の方々の厳しい訓練は何度か見かけたことがある。
 瑞鶴さんなんか文字通り血を吐いてたくらい。

 だけどそれは実戦で活躍、いや生き残るために必要なコトだから。
 大破して戻ってきた凄惨な姿に出くわした事だって一度や二度じゃない。
 それほどまでに深海棲艦たちの攻撃は苛烈で情け容赦というものを知らないから。

 あちらの世界で期待を裏切った負い目。
 他の正規空母たちの冷ややかな視線。
 厳しい訓練に明け暮れる日々。

 今にも手折られそうな華奢な少女が、それほどまでの重圧を背負うなんて。
 いったいこの世の誰が決めたのか。
 理不尽な怒りがこみ上げてくる。

 両手で彼女の頭を抱え、そっと抱き寄せる。
 安らかな眠りを妨げないように気遣いながら。

 現実は不条理で、醜くて、とても残酷だ。
 だったら、せめて今宵一夜だけでも、幸せな夢を。

 もし誰かの助けが欲しくなったら、いつでも呼んで。
 傍にいるくらいしか、私にはできないけど。
 貴女さえよければ、必ず駆けつけるから。

 おやすみ、大鳳さん。
 史上最強の孤独な装甲空母。
 でもこれからは、私だけは、貴女の味方だから。

 おやすみ、大鳳さん。
 史上最強の孤独な装甲空母。
 小さな頭のてっぺんに想いを重ねたライトキスをする。

 ほの甘い香りが立ち上ってきたような気がした。
 まるで2月の寒椿のよう。
 とても心地よい。
 最高の気分。

 すでに私は、もうひとつの煉獄に囚われつつあるのかもしれない──。

 (おしまい)
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おもに百合(GL・ガールズラブ)な小説と周辺情報を公開しています。最近はコミPo!でオリジナル百合4コマも。現在は「けいおん!」、「魔法少女まどか☆マギカ」とオリジナル。カプ傾向は澪梓、憂梓、恵和あたり。あと、ほむほむは百合。
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注:管理人の名称は「あっとあとみっく」が正式ですが、ごくまれに「藍」と名乗ることもあります。

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