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『暗闇の中の明かりのように』(けいおんSS)

けいおんのSSを公開します。

『暗闇の中の明かりのように』というお題です。
視点でな内容です。

なんか、2回連続で視点になっちゃいました。
他のメンバーにも活躍してもらうように考えないと、
「ひいきだっ!」という抗議が来そうです。
特に律あたりから(笑)。

「けいおん!!」#2「整頓!」で、軽音部のメンバーがホームセンターにやってきたときのシーンから、ふと妄想が広がってしまったので書いてみました。

内容的にはですねー、

初めてのホームセンターではしゃぐの後ろ姿に、は何を見たのか。

という感じですね。

短編というより超短編というか。
前後にヘンな寓話っぽいものがはいってるので、本編はほんの80行ほどしかないです。
おそらくここで公開してるSSのなかでも一番短いのではないかと。

それでは、お楽しみくださいませっ!

『桜便りに誘われて』から)



 『暗闇の中の明かりのように』



 仔猫が空を見上げると、黒々とした木々のすきまから、
 ぽっかりと青白く輝く満月が浮かんでいました。
 周りを見回しますが、うまいぐあいに誰もいないようです。

 それで仔猫は、思い切って月に話しかけてみることにしました。

「いつもひとりぼっちで、お月さまはさみしくないの?」

    ◇  ◆  ◇

 ──うーん。今のムギ先輩も、なーんか危ないなあ。

 そう思いながら私はそっと澪先輩の顔色をうかがった。

 先ほど道でもらったチラシに載っていた台をチェックするために、私たち軽音部の5人は近所のホームセンターに寄り道していた。でも、こういう場所で唯先輩や律先輩のテンションが上がるのはなんとなくわかるんだけど、まさかムギ先輩まで舞い上がるとは思わなかったよ。

 ──悪いけど、ムギの様子を見ててくれないか。私は唯と律だけで手一杯だから。
 ──了解です。まかせてください。

 そんな風にアイコンタクトだけで澪先輩とのやり取りを済ませると、私はふらふらと売り場の中へ歩いていくムギ先輩の後を追った。

「まあまあまあまあ。すごーい」

 両手を胸の前で合わせ、上ずった声でムギ先輩が感激している。

「見てっ。これ、壁にあいた穴をきれいに補修できるペンだって」
「はい」
「こっちは古雑誌を簡単にまとめるテープ」
「そんなにめずらしいですか」

 ヘンなの。お金持ちのお家のお嬢さまなんだし、それこそ簡単に買えそうなものばかり手に取って。そこまで嬉しいのかな。よくわかんないや。

「うーん……」

 でもムギ先輩の耳には、私の問いかけなんかまるっきり届いてないようだった。おもちゃ箱をひっくり返した幼稚園児みたく、手当たり次第に目に付いたものをチェックしていく。

「これで蛇口を磨くとピカピカに? 本当になるのかしら……」

 ──夢だったんだあ。

 不意にムギ先輩の言葉が脳裏によみがえる。

 ──こういうの、憧れてたの。

 ようやく理解し始める。ムギ先輩の考えていることを。私にとってはあたり前のことでも、きっとこの先輩にとっては何もかもが知らないこと、初めてのことばかりなんだ。

 それはあまりにも痛ましい光景だった。

 普通というあこがれ。
 普通でいたいという願い。
 普通でいられなかった哀しみ。

 住んでいる世界がまるで違うのだ、私や澪先輩とムギ先輩では。

 小さな子どもみたく、私の声も耳に入らないほどの先輩のはしゃぎように、底知れぬ暗闇を見てしまったような気がした。

 どういうわけか憂の顔が浮ぶ。

 あの子ならどうするだろう。
 きっと笑顔で全てを包み込んでしまうんだろう。
 だけど私にはとてもそんなマネ、できそうにない。

 でも何か、できることはないだろうか。この私にも。考えろ自分。

 ここはムギ先輩の知らない世界で、それこそ夢にまで見た憧れの場所なんだよね。でも逆に私にとっては自分の属する世界で、よく知っている場所だ。

 ……そっか。

 だったら。
 この世界の道案内なら、私にもできるかも。

 あわてて私はあたりを見回す。何かないだろうか。自分の先入観をとりあえず棚上げする。とにかく目に付くもの、めずらしいそうなもの、ムギ先輩の興味を引きそうなもの。

「あっ……ムギ先輩、こんなのありますよ」

 頑張ります、ムギ先輩。
 道案内しますから。
 この世界を。

 暗闇を照らし出す、ひとすじの明かりみたいに。

    ◇  ◆  ◇

 すると月は答えました。

「ええ、ちっとも。だって私はひとりじゃないもの」
「そうなの? でも仲間なんてどこにもいないと思うんだど」
「確かに私に同類はいないかもしれない。だけどね、この世の数え切れない命が、私を頼りにしていると知っているから」
「それはどこにいるの」
「もう一度、あたりをよく見てごらんなさい」

 仔猫はあらためて周りを見回しました。
 そしてようやく気づいたのです。

 誰もいないと思われた森の中にも、
 お月さまのことを頼りにしているたくさんの命が息づいていることに。

 そしてほかならぬ自分もまた、その命のひとつなのだということに。

 仔猫はとても温かな気持ちになりました。

「ありがとう、お月さま」

 月にお礼を言いながら仔猫は、いつかは自分もあのお月さまみたいになりたいなあ、と思ったのです。

 そう、誰かのために役に立てるようになりたい、と。

『曽我部先輩、最後の勝利』へつづく)
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おもに百合(GL・ガールズラブ)な小説と周辺情報を公開しています。最近はコミPo!でオリジナル百合4コマも。現在は「けいおん!」、「魔法少女まどか☆マギカ」とオリジナル。カプ傾向は澪梓、憂梓、恵和あたり。あと、ほむほむは百合。
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注:管理人の名称は「あっとあとみっく」が正式ですが、ごくまれに「藍」と名乗ることもあります。

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