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『桜便りに誘われて』(けいおんSS)

『けいおん!』のSSを公開します。

『桜便りに誘われて』というお題です。
視点でな内容です。

あらすじとしてはですね、

から伝説の桜の木の話を聞かされたは、
興味本位で木のある場所へと向かう。
ところが、そこで出会ったに思わぬ出来事が……。

って感じです。

なんか書き上げてから、

ここまで暴走させなくても普通に百合モノでまとめればよかったんじゃないか、

という気もしてきたんですが、
まあ夏だから脳みそ蕩けてるんですよ、きっとw

それとpixivの方にも小説とイラスト一点をアップしてみました。
小説は前にこちらで公開した『今できる、精いっぱいのことを』です。
イラストはそれの表紙ですね。

 pixivの私のページ



それでは、お楽しみくださいませっ!


『冷たい雨の放課後に』から)



  『桜便りに誘われて』




 ──ほんの少しだけ、不思議な話をしよう。

    ◇  ◆  ◇

 ちょっとばかり感動的だった三年生の始業式の余韻なんか、もうどこを探しても残っていない。

「今日のはちょーキツかったねー」
「久しぶりの体育だったから」
「それにしても、初日から体力テストはないよな」

 いつもの面子のやりとりを小耳にはさみながら、私も疲れ果てた身体を引きずるように自分の席へ向かう。とにかく一刻も早く椅子に座りこみ、自分の両足を休ませてやりたかった。

 ところがいざ自分の椅子を引いてみると、何か見慣れない小さなピンク色のものが張り付いている。なんだろう、これ。

「桜の……花びら?」

 この学校には『桜ヶ丘』という名にふさわしく、校内外のあちらこちらに桜が植えられている。おそらく、そのどれかから風に飛ばされてきたのだろう。窓際ではない私の席にまでやってくるのは、まあめずらしいとは思うけど、ありえないというほどではない、はずだ。

「どうしたの、

 よほど私が妙な顔をしていたのか、いぶかしげな表情でが話しかけてきた。彼女は二年に続いて今年も同じクラスになった、貴重な友だちの一人である。

「いや、大したことじゃないんだけど。ほら」

 私は花びらを摘み上げ、に見せてやる。

「へえ、桜か。きれいね。……あ、そういえば、はこの学校に伝わる桜の木の話って知ってる?」
「何だそれ、聞いたことないけど。まさか怖い話じゃないだろうな」
「残念ながらそっち方面じゃないから。なんでもこの学校の校庭の一番はしっこの大きな桜の木の下で告白すると、必ず想いが通じるんだって」
「……確かここは女子高のはずだけど。相手はオトコの先生ってことか?」

 今ひとつ話の意味が理解できないのだけれど。

「まあ、いろいろあるんでしょ。たとえ女の子同士でも。いえ、女の子同士だから、かな」
「そういうもんですかねぇ」
「それにほら、ひょっとしたらのお相手の子なんかも、意外にそういうこと考えてるかもよ」
「どうかなあ、はああ見えても……」

 ──────あ。

 気づいたときはもう遅かった。顔をうつむかせ、肩をわなわな震わせながら、必死には笑いをこらえている。目じりにうっすらと涙さえ浮かべて。

 あれは確か去年の冬。生徒会選挙の直前だったろうか。彼女がふらりと軽音部の部室をたずねて来たことがあったっけ。たまたま私との二人きりだったときに。それからというもの、たまにこうやってがらみでイジられるようになった気がする。

「いや、違うから。は私の後輩ってだけなんだから。ホントだぞ」
「はいはい。わかってるって。ふふ」

 ……き、聞いちゃいねー。

    ◇  ◆  ◇

「結局ここまで来てしまった」

 噂の伝説の桜の木とやらに歩み寄りながら、ついひとりごとを口走ってしまう。

 さきほどの体育の時間より、昼休みの今のほうがずいぶんと風が強い。油断してると髪やスカートが大惨事だ。もっともこの風のおかげで、五月晴れといっていい青空と強烈な太陽のもとでも、それほど暑さを感じないのは助かるが。

 そんなことを考えていると、桜の木の幹の向こう側に、人影らしいものがちらちらと動くのが見えた。

 小柄な制服姿。全体的にスレンダーなシルエット。すらりと伸びた手足。胸元の赤リボンは新二年生の証。そして何より黒くて長いツインテール。よもや、この私が見間違うはずがない。そう、中野。軽音部でたった一人の二年生にして、私の可愛い後輩だ。

先輩?」

 私の気配に気づいたが、ぱあっと顔を輝かせる。だがその時。

 ──ごうっ。

「わっ」

 突然の強風に、自分の髪とスカートのすそを必死に両手で押さえる。桜の木から、あたりの地面から、数え切れないほどの桜の花びらたちが生き物のように宙を舞い上がり、たちまち私はそれに取り囲まれてしまう。まるで吹雪、いや雪崩、ううん、もっとすごい。もはや壁と呼びたいレベル。それこそ桜色の壁に閉じ込められたようだ。

 なんだろう、この得体の知れなさ。こんな光景見たことない。

 そうだ、梓は。あの子は無事か。

「梓っ!」
「……先輩っ!!」

 壁の向こう側、遥か彼方からかすかに返事が返ってくる。だけど壁のせいでまるっきり姿が見えない。

 ──なんだよこれ。

 足がすくみあがる。イヤな汗が吹き出す。怖ろしさのあまり、心臓が壊れそうなほどに暴れまわる。

 ──わけわかんないよ。

 私だけじゃどうにもならない。とっさに携帯を取り出して律をコールする。だがこんなときに限って繋がらない。操作を間違ったかと思い画面を見直すと、アンテナのアイコンが表示されていないことに気づいた。

「まさか、圏外だって!?」

 そんなバカな。ここ、学校の校庭だぞ。ありえない。だめだ。こうしちゃいられない。どうしよう。走って助けを呼ぶか。いや待て。

 ひどく胸騒ぎがする。今ここでは、とんでもなく異常なことが起きている。この場を離れちゃダメだ。

 それに急がないと、梓が。このままどこかへ連れて行かれそう。いなくなってしまうような気がする。イヤだ、そんなの。

 でもいったい、どうしたらいいんだ。何一つ思いつかない。真っ白だ。

「先輩……逃げ……」

 悲鳴のような梓の声が途切れがちに聞こえてくる。身体中のの血がたちまち沸きあがるのを感じる。バカ、他人の心配なんかしてる場合か。くそっ、それに引き換えこの私ときたら。情けなくて涙が出る。

 よし、決めた。

「待ってろ、今行くからなっ!!」

 怖れも迷いも何もかもかなぐり捨て、私は両手でガードを固めると、これでもかとばかりに気合をいれた。

「うおおおおぉぉぉぉおおおっっっ!!」

 その勢いで強引に壁に目がけて飛び込む。意外にあっさり入り込めたことにちょっと拍子抜け。だけど何も見えない。目の前も頭上も足元も、何もかもが桜色に染まっている。ごうごうという轟音で耳も役に立たない。全力で足を踏ん張り風に逆らう。さもないと進むどころか押し返されそうだ。

 花びらたちが顔に張り付てくる。息ができない。だけど無視。すべて無視。一歩。また一歩。カメの歩みみたくのろのろと。だけどひたすら前進。あきらめるわけにはいかない。この先に梓がいる。待ってるんだ。助けを。私の。

 それにしてもどこまで続いているのだろうか。しだいに息苦しさが増してきた。身体がしびれてくる。今にも足がもつれそう。だんだん目の前が暗くなってくる。意識が飛びそうだ。

 ──もう、ダメか。

 そう思ったとほぼ同時に、急に視界が開ける。でもそこで限界がきた。足に力が入らない。たまらず地面に両ひざをついてしまう。

「ぷはっ」
「大丈夫ですかっ、先輩!?」

 そう叫びながら駆け寄ってきた梓が、私に手を貸してくれる。

「へ、平気……だ」

 強がってはみたものの、息が苦しくて満足に声も出せない。口や鼻に張り付いた花びらをむしり取り、梓の肩を借りてようやく立ち上がると、ようやく辺りを見回す余裕ができてきた。

 私たちが立っているのは、ちょうど自分の部屋くらいの広さくらいの円筒型の空間、その端のあたりだった。もちろん周りはどこもかしくも桜色。ただ見上げると、そこだけにぽっかりと青い空が広がっている。まるで桜色のワナに落ちこんだ獲物のようだ

「ケガ、ないか」
「とりあえず大丈夫です。でも怖い。いったいなんでしょうか、これ」
「きっとつむじ風か何かじゃないか。心配するな、私がついてる」
「はい。先輩さえいてくれたら安心です、とても」

 ぎゅっと梓の身体を抱きしめる。両肩が、いや身体中が小動物のように震えている。よほど心細かったのだろう。かわいそうに。

 こうして梓の所にたどり着いて安心したためか、今度は急にムカムカと怒りがこみ上げてきた。

「なんのつもりか知らないけど、梓を怖がらせるようなヤツは、この私が許さないからなっ」

 姿の見えない何者かに向かって叫ぶ。すると私の声が届いたのか、ぱたりと風がやんだ。

 それまで我が物顔で舞いおどっていた花びらたちが力を失い、はらはらと地面に落ちていく。しだいに桜色が薄れ、視界が開けていく。

「なんだったんでしょうか、今の」

 私たちは改めて辺りを見回す。すっかり見慣れた校庭の光景に戻っていた。変わったところは何も……いや、ひとつだけあった。何人かの生徒が遠巻きに私たちを見てる。こちらを指差したり両手で口を押さえて「きゃー」などと言っている。

 ようやく自分たちの状態に気づく。互いの両腕で、相手の身体をきつくきつく抱きしめ合っていることに。

「あ、いや、これはっ。違うんだ、その、」
「しししし、失礼しましたっ」

 あわてて腕をほどき、身体を離す。顔を紅く染めながら、照れくさそうに梓が笑う。

「さっきはありがとうございました」
「夢中だったんだ。なんだかあのまま、梓がどこかに連れて行かれそうな気がして」

 もう何の気配も感じられない。あれは、風のいたずら……だったのかな。

「ところで先輩、髪の毛がものすごいことになってます」
「え、そっか。さっき花びらの壁を無理やり突っ切ったから、だな」
「少しかがんでください。できるだけ取ってみます」

 そう言うと、梓は桜の花びらを一枚ずつていねいに取ってくれた。

「そういえば、どうして梓はここに来たんだ」
「純に……クラスメイトに聞いたんです。この桜の木の伝説のこと。それで」
「私もさっきに教えられたんだ。そもそも自分の椅子に座ろうとしたら、そこに桜の花びらが一枚だけ落ちていて……」
「え、それ、おんなじです。私の椅子にも花びらが落ちてて。それで桜の話になって……」

 沈黙があたりを支配した。はたしてそれは、ただの偶然なのだろうか。まさか。あまりに出来すぎてる。

「ひょっとしたら、あれはこの木からのメッセージだったのかもな。私たちを誘い出すための」
「そう……かも知れませんね」

 やれやれ。コイツにうまいこと乗せられたのだろうか。これならまだのイジりのほうが可愛げが……。

 ──まさか。
 ──そういうこと、なのか?

 あらためて梓の顔をまじまじと見つめる。

「あ……」

 耳まで紅く染た梓が、視線に耐え切れなくなったのか、ついっとそっぽをむいてしまう。その仕草がとても愛らしい。そう、愛らしいんだ。可愛らしい、じゃなくて。

 ──とくとくとくとくとくとくとくとく。

 さきほどとはまるで違う、胸の高鳴りを感じる。

 いや、これはそう、ときめき、だ。

 ようやく理解した。ああやってが私のことをからかう理由も。こうやって梓がそっぽを向いてしまう理由も。そしておそらく、私がここに誘われてきた理由も。周りにバレバレなのに、肝心の本人がまるでわかっちゃいなかった。



 ──本気で好きなんだ、梓のコト。



 なんだか誰かに見られているような気がして、私は空いっぱいに枝を広げる桜の大木を見上げる。不思議なことに、そこには何者かが柔らかに微笑んだような気配がただよっていた。

 それはとても優しげで、あたたかで、私のことをほっとさせてくれる。おそらくこの木は大昔から、こうやって人々を見守り続けてきたのだろう。喜びも悲しみも、全て。

「伝説の桜の木、か」

 そして時にはこうやってイタズラしていたのかもしれない。桜の花びらをメッセージ代わりにして。

 改めて感傷的な気分を味わいながら、私は足元から一枚だけ桜の花びらを摘みあげる。



 きっとあれは、初々しい春の香りただよう、私宛ての桜便り──。

『暗闇の中の明かりのように』へつづく)
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