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『ペンタグラムな彼女・前編』(オリジナル百合SS)

オリジナルな百合SSを公開します。

まあ、通学電車で見かけるあの子が気になる……みたいな話です。
(実もフタもない)

ただし今回は前編だけ。主人公がペンタグラムな彼女に会うまで、ですね。
後半は、そうですね、ゴールデンウィークが終わるまでにはなんとか。

『ペンタグラムな彼女・前編』(オリジナル百合SS)

それでは、お楽しみくださいませっ!

あ、もちろんフィクションです。力の限りフィクションです。
もし貴女がこれと似たような話を見聞きしたことがあったとしても、
それとこれはまったくの無関係です。

そこのところ、よろしくお願いいたします。


 『ペンタグラムな彼女』



 ──今日も私はペンタグラムな彼女の背中を求めてひた走る。

    ◇  ◆  ◇

 ぐらりと足元が揺れる。わずかに遅れて冷たいステンレス製の電車のドアが開く。よどんだ空気といっしょに無数の乗客たちが吸い出されていく。その流れに乗って私も外へと飛び出す。身体のあちこちが何かにぶつかったりぶつけられたりする。でもよほど酷くなければ互いに文句を言いあうこともない。それが満員電車に乗るときのルールだから。

 ひんやりとした新鮮な外気を思い切り吸い込む。ちらりと右手に巻きつけた腕時計に目を落とす。もうすぐ七時四十三分。今日は混雑で電車が遅れたから、私に残された時間はほんの五分ほど。急がないと。もし彼女に会えなかったら次のチャンスは来週の月曜になってしまう。そう思うといても立ってもいられない。だから私は、多くの困難を前に心が折れそうになる自分に向かって、なけなしのエールを送る。

 ──負けるな芽衣。
 ──お前はやればできる子だ!

 ホームにあふれかえるたくさんの人たち。おそらく通勤や通学のためなのだろう。たとえば人生に疲れた感じのおじさんとか、ぱりっとした黒のスーツの女の人とか、それからいろんな学校の学生や女子高生とか。そんなまるきり統一性のない集団がたったひとつ持っている共通項。それは上り階段に向かうという意思だ。

 この駅で降りるにしても、他の電車に乗り換えるにしても、一度はこのホームから階段を上って駅舎までつながる連絡通路を歩かなくちゃならない。だから電車を降りた全員がこの上り階段に殺到するというわけ。ここを利用し始めてかれこれ一年になるけど、よくもまあ事故が起きないものだ、とヘンなところで感心してしまう。

 電車から降りて少しでもモタモタしていると、たちまち上り階段の手前に出現する人間の壁にさえぎられ、隣のホームに渡るまで何分も待たされることになる。それはとても困ることなので、私はできる限り急いで階段へと向かう。

 そこは電車を降りて階段を上る人たちと、反対のそのホームへと向かう人たちで大混雑になっている。とはいえ、誰が決めたか知らないが、いちおうこの階段は左側通行というルールらしい。高校に通い始めたころはそれが読めなくてずいぶん困ったが、今ではその流れにすっと入れるので、それほど苦労せずに上っていける。

 うす暗い連絡通路を通り抜けて隣のホームへとつながる下り階段へ。ここも無事ではすまない。こちらにも到着する電車から降りて、階段を上ってくる人たちの流れがあるからだ。もちろんそれにまともに逆らうなんてとても無理。だからそれに巻き込まれないように、私はできるだけ端っこに寄ってそろそろと階段を下っていく。

 ホームにたどり着くと、今度は目的地へ向かう電車への順番待ちの行列が幾重にも折り重なり、私の行く手をさえぎろうとする。次の駅の階段がちょうどこのあたりなので、どうしてもそれを目当てにする人が多いのだ。その中には私の通う見慣れた都立高校のブラウンのブレザーもちらほらと。さらには当然のように私の友だちなんかも混ざっていて、目ざとく私の姿を見つけ出す。

「芽衣、おっはー」
「今日もアレですか。精が出るねー」
「可愛いカノにもよろしくなっ」

 ひたすら約束の地を目指す私に向かって、彼女たちは好意的な笑顔で口々にあいさつしたり手を振ったりしてくれる。

「うーっす。また後で。それからカノって言うなっ」

 そんな感じで彼女たちに返事しながら、私はさらに進む。見棄ててごめん。貴女たちのことは決して忘れないよ。まだ死んでないけど。

 実はこのあたりが最大の難関だったりする。このホームの人の流れはあまりキチンとしたルールがないらしい。さきほど電車から降りた人たちや次の電車待ちの行列でごちゃごちゃとあふれ返っている。だけどルールがなければ傾向も対策もありゃしない。

 だからここから先はひたすら力技だ。どうしても人をかき分け、押し合いへし合いしながら進むことになる。いつものように学校指定のスクールバックを胸の前で抱えてガードしながら、私はその無数の人たちによって作り出されるカオスな空間へと挑む。ナメんな、現役女子高生ナメんなと心の中で叫びながら。

 このホームに発着する快速電車の先頭からかぞえて五両目くらい。そこには小さなキオスクがある。雑然と並べられた何種類ものお菓子たちの誘惑の声が聞こえてくる。その声を全てガン無視しながらパスすると、ようやく目的の行列が見えてくる。そして、

 ──いた。

 十何人かの行列、その最後尾に、ポツンとひとりの少女が立っているのが目に映った。

 ──よしっ、間に合った!

 心の中でこっそりガッツポーズ。

 身を包むのは、いまや絶滅寸前と噂される白いセーラー服。セーラーカラーと袖口、そしてプリーツスカートは抜けるようなブルー。スカーフは鮮やかな真紅。スクールバッグは可愛らしいピンク。そしてバッグにひとつだけぶら下がっているアクセは、小さな金属でできた五芒星──ペンタグラムのストラップ。

 特有の音を立てながら快速電車が滑り込んでくる。その風圧に揺れる、セミロングに切りそろえられた黒髪がキラキラと目にまぶしい。ひざ上十センチくらいのスカートからすらりと伸びる足に思わずため息が出そうになる。その姿を見るたびにいつも、夏の日の青空に浮かぶ白い雲と強烈な陽光を連想してしまう。

 それがひそかに畏敬の念をこめて”ペンタグラム”と呼ぶ少女の姿なのだった。

                                (後半につづく)
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おもに百合(GL・ガールズラブ)な小説と周辺情報を公開しています。最近はコミPo!でオリジナル百合4コマも。現在は「けいおん!」、「魔法少女まどか☆マギカ」とオリジナル。カプ傾向は澪梓、憂梓、恵和あたり。あと、ほむほむは百合。
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注:管理人の名称は「あっとあとみっく」が正式ですが、ごくまれに「藍」と名乗ることもあります。

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